剣と魔法と迷宮と
最近あっついのなんの
ギルドを後にまた再び商業区へ戻っていく。
相変わらず町は賑やかで人だかりができているが、ほとんどのプレイヤーは郊外や迷宮に向かったようだ。
日はまだ登り切っていないが、迷宮から帰るころには夜になってしまいそうだ。
「井崎さん。何かおすすめの店でもあるんですか?」
「残念、俺は迷宮とかのレベルデザインはしたが、町は食事とかの一部を除いて別の人が関わっている」
とは言っても、初期資金で買える武器なんてたかが知れているから、もし俺がスゴ腕の鍛冶職人なんかの居場所を知っていたとしても、オーダーメイドどころか常駐してある武器ですら買えないだろう。
「井崎さん、あそこで武器屋防具を売ってるみたいですよ?」
「いや、そこはやめておこう。結構な人がいるし、高値に釣り上げられたら困るからな」
ぶらぶら商業区を歩いて他の武器や防具を売ってる場所を探す。
露店は基本的に食品やアクセサリーなどの小物を沢山売って儲けを出す場所で、そもそも嵩張る剣や盾。今は必要ないが、鎧なんかを売りに出す商人は少ない。
他の人と違いを出そうとしてる見習い商人か、見習いの鍛冶職人たちがほとんどだろう。闇市に行けばこれより安い値段で追いはぎした武具を入手できるはずだが、はじめのころから衛兵に目をつけられて良いことなんてない。
「あそこがよさそうだな」
屋根に見立てて貼られている焦げ緑の厚手の布には黒い煤が付いていて、鍛冶職人だと言うことがわかる。見習い商人が見聞きした商品なんかよりは十分信頼できる商品を取り扱っていることだろう。
店に近づくと店主の青年が大きく息を吸った。
「いらっしゃい!どうぞ見ていってくれ!」
「メイスや杖まで売ってるのは少し変わってますね。だいたい剣や槍、弓とかを売ってるところがほとんどだったんですが…」
「店主、これは自分で打った商品なのか?」
さっと商品を見渡すと、全ての商品には刃こぼれがなく、刀身が曲がった物がない。
【武器鑑定】や【見聞き】のスキル持ちではないから剣としての出来はどうかは何回も使ってみないとわからないが、雑な仕事をする職人でないことは分かる。
「ああ、まだまだ見習いだが、見習いなりに自慢の作品たちだ!」
鑑定系スキル持ちでもなく、戦ったこともない俺が選ぶ剣よりも、彼が選ぶ武器のほうが断然良いに決まってる。
「なら、俺に合った武器と奈緒にはメイスを見繕ってくれ」
「井崎さん、私は杖の方がいいです。メイスは魔法補正が低いじゃないですか」
「そうか、なら杖を頼んだ」
そう言うと青年は首を傾げた。
「墓荒らし達は強い武器が欲しいのではないのか?」
なるほど、普通はそうか。
この世界をただのゲームだとなめてるプレイヤーはただただ攻撃力の数値だけ見て武器を選ぶから、今日で何回取引したかは知らないが彼はそう認識するほど取引をしたということだろう。
見るに、樽に寄せ集めてある武器入れにある商品が減っているので、あれはきっと切れるがワケありの商品なんだろう。
考えなしに強い武器をくれと言っていたらあの中の商品を売られていたかもしれない。
「取り扱いづらい武器は困るな」
そう言うと店主は笑った。後ろのワケありの樽から一つの武器を取り出す。
それは、槍に斧の両刃を取り付け、柄の根元から刀身が生えてるなんとも言えないものだった。
「強い武器が欲しいと言ったら、お前にはこれが似合うと思ったのだが、残念だ!ははは!」
「…その武器をどう使えっていうんだ」
振り回したら自分の脚か腕が切れそうだ。
僕が考えた最強の武器!を感じる、使えたら確かに強いだろう。使えたら。
「多彩な武器の才能を感じたからな。それに、火力は私の作品たちの中でイチバンだぞ!…だが、そうだな。ほれ」
そう言うと店主が装飾のない整った剣と、粗末な杖をカウンターに置く。
これといった特別さを感じないが、ただどちらも何回も練習して、練習して、作り上げた感じがする。
「剣は万能だからな。使って合わなければこいつを持ってくれば槍やハンマーなんかに変えてやろう!お嬢ちゃんは杖でよかったよな?二つで1000Gでいいぞ」
金を500Gづつ支払い、それぞれ武器をセットし店を後にする。
購入して見れるようになったが、悪い剣ではないようだ
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鉄の剣
耐久値 : 100/100 (+20)
攻撃力 : 5 (+1)
- 追加オプション -
- 見習い鍛冶職人の作品
+ 整っている
+ 制作者から購入につき鑑定済み
Tips : 追加オプションの()効果は左に適応済みです
また、オプションはマイナス効果とプラス効果があります。
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「そろそろ時間なので迷宮に行かないと間に合わなくなりますよ?」
そう言えばそうだった。
「迷宮までどのくらいかかりそうか分かるか?」
「マップ見る限り、商業区の坂を上って、すぐみたいですね。付いてきてください」
奈緒が指で空中をなぞるようにマップを見る。視界の端に表示された経路を辿ると、思っていたよりも近い。町を見渡せる山の頂上付近は削られたなだらかな道が続く。
迷宮は近くに行くほど存在感を増し、天に超えようと挑戦した神話は作り話ではないとわかるほどの高さだ。
「グランさんたちも来てるみたいですね」
迷宮前広場で様々な荷物を担いでいるからすぐわかった。
「待たせたか?」
「いや、ちょうどいいタイミングだ。準備はできてるか?」
「もちろん」
グランが少し怪訝な顔をしたが、すぐに何でもないそぶりにもどる。
四人揃ったところで、グランが迷宮の入り口を指し示す。ジッグラドの割れ目、入り口となる場所からはひんやりとした空気が広場まで流れてくる。
装備を確認していると、後ろからフィルが小さな声で話しかけてきた。
「……あの、井崎さんの剣」
「ん?」
「さっき買ってたの、見てました。鍛冶屋さんに任せて選んでもらってましたよね」
「ああ」
「……賢いと思って」
それだけ言うと、またグランの陰に入ってしまった。
グランが苦笑いしながら小声で言う。
「こいつ、気になったことは言わずにいられない性分なんだ。悪く思わないでくれ」
「別に悪くない」
重い荷物を何でもないかのように持ち上げてグランは迷宮の入口まで向かいながら依頼用紙を取り出す。
「今回の依頼は、1層の揺り籠の森の定期探索だ。ようは異常がないか確認するだけだ。簡単だろ?」
「定期探索なら俺たちでも十分だな」
「ああ、新人向けの依頼にしては報酬も悪くない」
そう言いながら依頼用紙を懐に戻すと、グランがふと足を止めて、こちらの腰元
――タグの位置に目を落とした。
「……あれ?」
「どうした?」
「いや、お前ら銅のタグ、つけてないよな?」
その一言で、フィルまでこちらを見てくる。
「まさかとは思ったが……新入りか?」
普段の軽い調子とは違う、少し強張った声だった。
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