街を歩こう。
う、うおおお!
初期地点の一つ。
ここアルグハイムは険しい山々の中に建てられ、主に飛空艇を用いて取引する商人達と、偉大な王の墓、ジッグラトに眠る財宝を手に一攫千金を夢見る墓荒らし達によって支えられた商業都市国家だ。
墓荒らし、冒険者、傭兵。各所によって呼び名が異なるものの、序盤プレイヤーの殆どは身分を証明出来ないため自由市民になれず、これ等の組織に属し、ある程度の信頼を得なければならない。
彼らは主に魔法系、武道系、兵法系、司祭系に分けられており、自分のステータスとAIが見た目から選ぶランダム強制選択スキル2~3つと、一つ選べる自分の個性スキル。チュートリアルなどで今後得られる称号や対人関係などでどう生きるかをある程度道しるべが示されているが、基本的には自由度が高く、チュートリアルクリア後に商人になるなど好きなように生きれるようになっている。
そのまま冒険者として強くなるには、魔法と司祭を合わせて賢者、などの例外はあるものの呼吸や瞬きなど些細なことを含めた全てにおいて経験値が得られる関係で、魔法使い、魔術師、赤魔道士、紅魔術師のように何かに特化すればするほど早く強くなるという風にシステムが設定してある。だが俺は…
「ちょっと変化球でも試してみるか?」
順番が周り、司祭npcから祝福を受けると、体が淡くぼんやり光り選択した職業に応じた追加ポイントが反映され、視界の端にギルドまで行くように案内する通知が映る。
「井崎さん。何にしたんですか?」
俺は今野に向けて自分のステータスウィンドウを共有した。
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名前 : Izaki
職業 : 武芸者
- 基礎 -
hp 130/130
mp 100/100
攻撃力: 14
防御力: 12
瞬発力: 13
魔法力: 10
神聖力: 10
自由ステータス : 7
- その他 -
自然回復 : 0.5/m
- スキル -
北地方言語理解(初期)0/5000
初級投石術(個性) 0/1000
山岳歩行術(個性) 0/1000
武具の才能(選択) 0/2500
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兵法系を選択したため攻撃力等の前線で必要なステータスが初期から底上げされている。
武具の才能は、武芸者に必要な武器の熟練度の習得速度を上げてくれるスキルだ。
基礎職である武芸者は初級職の剣士や槍士などになるために必要な職業で、武道系の体を武器にして戦う職業とは違い、何か道具を介して相手と戦う。
また、ある程度リーチがあるため初心者向けに用意したルートの一つであるため逆にいくらでも応用が利くようになっている。
「兵法系にしたんですね。口ではああいってましたけど、パーティを組むって話。まんざらでもないんじゃないですか~?」
「うるさい。この職は中近距離で応用が利くから選んだんだ。…今野は宣言通り司祭系にしたんだよな?」
そう聞くと、今野は得意げにステータスウィンドウをこちらに開いてみせた。
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名前 : Nao
職業 : 修道者
- 基礎 -
hp 100/100
mp 130/130
攻撃力: 10
防御力: 11
瞬発力: 12
魔法力: 11
神聖力: 13
自由ステータス : 7
- その他 -
自然回復 : 0.5/m
闇耐性 : 2
- スキル -
北地方言語理解(初期)0/5000
初級速読術(個性) 0/1000
北地方薬草学(個性) 0/1000
ルーン派修道(選択) 0/2500
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「お前が後方支援とはな……普段の言動を見てると前線で殴り合ってそうなのに」
「失礼ですね。私、ちゃんと役割分担できる女なんです。戦況によって立ち位置が変わるヒーラーに必要な能力だと思いません?」
そう言いながら、今野は誇らしげに胸を張った。
「まぁ、それなら助かるな。ルーン派だからそのうち魔術に関しても何か恩恵が得られると思うし…俺一人で突っ込んで死んだら目も当てられん。」
「あ、やっぱり一緒に行動する気あるんですね?」
「……成り行きだ」
今野がにやにやしながらこちらを見てくる。何か言い返したい気もしたが、面倒なので無視することにした。
職業選択を終えたプレイヤーたちは、それぞれ淡い光のエフェクトを纏ったまま、次々と広場を後にしていく。視界の端に浮かぶ通知も、依然として「ギルドへ向かってください」と点滅していた。
「ギルドってどこにあるんだろう?レベルデザインは別の奴が担当してたから場所がいまいちでな…」
「あ、マップ見れば出てますよ。ほら、ここ」
今野が自分のマップを開いて見せてくる。
円形の都市の中商業区の奥に「冒険者ギルド」のマークが小さく光っていた。
「ここから結構距離あるな。歩いて行くしかないかぁ」
ギルドに行くまでの道のりで商業区を通るため、世界観やこの世界にわくわくしてもらうためにわざわざ長い道のりを設けたが、もう少し短くしてもよかったかもしれない。
ただ、町から町まで歩きで三日や一週間程度かかるという場合もあるので初めからならすために設けた距離としては十分か。
「飛空艇の発着場もあるみたいですけど、あれは商人系のNPC専用ですもんね」
「ああ、初期設定の時点ではプレイヤーは使えないようにしてあるな。後々の交通網として開放する予定だが……」
「井崎さん、この世界のことになると饒舌になりますね」
「うるさい。さっさと行くぞ」
広場を出ると、石造りの坂道が続いていた。山肌に沿って建てられた都市だけあって、道はそのまま斜面に張り付くように曲がりくねっている。両脇にはさまざまな商人NPCたちの屋台が並び、まだチュートリアル中の新規プレイヤーたちが、興味本位で品物を眺めながらうろついていた。
「賑わってますね」
「これでも序盤の序盤だ。ここから先、もっと人が散らばっていく」
階段を一段登るごとに、ジッグラトの全貌が視界に入り込んでくる。麓から見上げた時とは違い、坂道の途中からは塔の継ぎ目や、表面に刻まれた紋様まで見えるようになっていた。露店や、少し路地を見ると生活感のある住宅街が顔を覗かせる。
「たった数十人が作った世界とは思えませんね」
「お前も含めスタッフはみんな優秀だからな。ネットでも大企業のタイトルたちに引けを取らないどころか、それ以上に反響してたから…本当に夢見心地だ。」
そんな話をしながら歩いていると、坂道の先に石造りのアーチが見えてきた。アーチの向こうには、剣と盾、そして杖を模した看板が掲げられている。
「馬鹿でもわかる看板を掲げて…あれがギルドか」
夏休み期間ということで、ストックが続く限り毎日9:00、15:00、21:00に投稿します。
無くなり次第毎日投稿に切り替えでさ。




