第6章:お風呂でエクスカリバーがバレて、着物のおばあちゃんに詰め寄られる朝
俺たちは浴室に着いた。
ドアは少し開いていた。ミサキが肩で押し開け、中に入る。浴室用塩と濡れた大理石の匂いが一気に鼻を突いた。巨大な白い浴槽——青銅のライオンの爪足——が空のまま置かれていた。棚の上に並ぶエッセンシャルオイルの瓶が、天窓から差し込む薄い光にきらめいていた。
ミサキは浴槽の前で俺を解放した。
「脱いでください」
俺は瞬きした。
「は?」
「脱いでください、シエナお嬢様」彼女の声に反論の余地はなかった。「お湯はもう張ってあります。お嬢様だけがいないだけです」
浴槽を見ると、確かに湯気が立ち上り始めていた。俺は覚えていない。(いつ……?)
「ミサキ……ちょっと……出てってくれないか?」
「出て行け?」ここ数分で初めて、彼女の目に人間らしい感情が戻った。片眉を上げて困惑した表情になる。「シエナお嬢様、私たち女の子同士ですよ。問題ないじゃないですか」
「い……いや、恥ずかしいんだよ」俺は胸の前で腕を組んでどもった。
(クソ、こんなに恥ずかしいなんて!)
ミサキは小さくため息をついた。表情が少し柔らかくなる。何かを思い出したような顔だった。
「心配しないで。小さい頃は何度も一緒にシャワーに入ったじゃないですか。さあ、脱いで」
彼女の声は実用的で、ほとんど事務的だった。でも指先がわずかに震えていた。
(一緒にシャワー? ああ……本物のシエナの記憶か。俺にはない記憶だ)
「なあ……」俺はなんとか緊張をほぐそうと口を開いた。「たまにはロシア式も悪くないかもな……」
「シエナお嬢様」彼女が両肩を掴み、目を合わせてきた。
指が鎖骨に強く食い込む。
「ちょ、落ち着け、ミサキ。これはエスカレートしなくても——」
彼女がキレた。
俺のパジャマ——高級シルク、おそらくフランス製——が綺麗に裂ける音がした。冷たい浴室の空気が素肌に触れる。
残ったのは、ただの地味なボクサーパンツだけ。
数秒の完全な沈黙。ミサキの視線が俺の体に釘付けになっていた。俺も彼女の目を見つめながら待っていた……何を待っているのか自分でも分からなかった。
「全部終わりだ」シエナが囁いたような声が聞こえた気がした。
世界がスローモーションになった。湯気が濃くなり、照明がちらついた(気のせいかもしれない)。一瞬、俺のものではない記憶のような光景が閃いた——薄暗い部屋、曇った窓、隅で泣いている誰かのシルエット。
そして——
「キャァァァッ!」
ミサキの悲鳴が甲高く響き渡り、棚の瓶がビリビリ震えた。彼女は後ろに飛び退き、自分の足に躓いて尻餅をついた。スカートがめくれ上がり、白いストッキングが露わになる。頰は真っ赤だった。
「は?」俺は何が起きたか分からなかった。
「お嬢様!」彼女は両手で目を覆いながら叫んだ。「隠してください!」
俺は唇を結んだ。何をすればいいのか分からない。女同士なのに、なんで叫ぶんだ? 彼女にも胸がある。俺にも胸がある。何が問題だ?
一歩近づいた。
「キャァァァッ!」今度はさらに甲高い悲鳴。「お願いですから、それ近づけないで!」
視線を下に落とした。
あ。
(そうか……)
俺のエクスカリバーは、転生しても消えていなかった。
地味な青いボクサーパンツの下に、はっきりとした膨らみ。女であるはずの体にあってはならないもの。シエナとしてあってはならないもの。
でもあった。
(ドラゴン。俺のエクスカリバー。転生しても生き残っていた。どうして? なぜ?)
ミサキは床に座ったまま目を覆い、意味不明のうめき声を上げていた。俺は半裸のまま、胸を晒し、ボクサーパンツの布地を押し上げる半勃起状態で立っていた。
「近づかないでください……」彼女の声が震えていた。
俺は笑った。
(よし、よし……)
体内で何かがスイッチオンになった。暗い何か。長年眠っていた何か。男としての自信か、それともこれまでの屈辱の積み重ねの反動か。
俺は彼女の上に身を乗り出した。胸が彼女の制服に触れる。彼女は感電したように悲鳴を上げた。
「ほら、ミサキ」俺は自分でも驚くほど色っぽい声を出した。「そんなに大したことじゃないだろ」
「大したことじゃないって何なんですか!?」彼女は足をバタバタさせて叫んだ。
でも俺がさらにからかう前に、ドアのところに影が落ちた。
「この騒ぎは何?」
低い、女性的な声。わずかに聞き覚えのないアクセント。
俺たちは凍りついた。
入り口に立っていたのは、腕を組んで完璧に整えられた眉を片方上げた、威厳たっぷりの女性だった。
見た目は明らかにアジア系。艶やかな黒髪を高いポニーテールにまとめ、一本の乱れもない。切れ長の濃い茶色の瞳が魂を射抜くようだった。高めの頰骨、薄い唇に控えめな赤い口紅。黒い絹の着物に金色の鶴の刺繍、腰を締めるのは真紅の帯。
若くもない、老いてもいない。「MILF」という言葉が陳腐に感じるほどの女性だった。
その存在感だけで浴室全体を支配していた。
「あ……」俺はなんとか声を出した。
ミサキはまだ床に座ったまま、制服が乱れ、白いストッキングが埃まみれで、頰を真っ赤にしていた。
俺は彼女の前に半裸で立ち、青いボクサーパンツに浮き出た膨らみを隠しきれずにいた。
そしてドアの女性は、面白がるような、厳しいような、悪意のある楽しさを含んだ目で俺たちを見ていた。
「説明があるんだ」俺は両手を挙げて平和のポーズを取った。
女性は俺を上から下までじっくりと眺めた。胸、ボクサーパンツ、膨らみ、床のミサキ、そして廊下の奥の俺の部屋のドア(まだ開いたまま、中央に穴が空いている)へと視線を移した。
「なるほど」彼女は不穏な笑みを浮かべて言った。「シエナ」
「は、はい……」俺はごくりと唾を飲み込んだ。「で、あなたは……?」
女性は一歩踏み出した。履いている下駄が大理石の床にカツカツと音を立て、着物が擦れる音がした。
「孫娘、私を覚えていないのか?」
血が凍った。
「孫娘?」
「私は花子だ。お前の祖母だよ。お前の父の母だ。そして一つ聞きたいことがある、シエナ」
「な、何を……?」
彼女の視線がゆっくりと俺の目から下がり、ボクサーパンツに止まった。そして再び顔を上げた。
「私の孫娘に、一体何が起こったんだ?」
世界が止まった。
ミサキは床で顔を覆ったまま意味不明のうめき声を上げていた。
俺はただ口を開けることしかできなかった。
そして——
全てが真っ暗になった。
それが拳だったのか、羞恥による気絶だったのか、それとも祖母の一撃によるものだったのかは分からない。最後に覚えているのは、彼女の顔が近づいてきて、唇が「面白い……」と呟いたこと、そして何もなくなったことだけだった。
目が覚めた時、俺は自分のベッドにいて、新しいガウンを着せられ、額にメモが貼りつけられていた。
メモには優雅で少し震えた字でこう書かれていた。
「シエナ。起きたら朝食に来なさい。おばあちゃんと大事な話がある。——父」
その下に、少し震えた小さな字で:
「シエナ、本当にごめんなさい。ドアを壊したり、パジャマを破いたり……その他も。嫌わないでください。——ミサキ」
そして一番下に、赤いインクで大文字で:
「今すぐ降りてきなさい。——花子おばあちゃん」
俺はため息をつき、メモをベッドカバーに落とした。
「これ……」天井を見上げて呟いた。「これは異世界転生じゃない。ホラーとコメディとエッチが混ざった昼ドラだ」
スマホが震えた。
送信者:Unknown
「残り6日。男の子にキスするか、下着を盗むか。ちなみに……おばあちゃんはTバックだぞ。信頼できる情報筋から聞いた。頑張れ」
画面をオフにして目を閉じた。
「おばあちゃんがTバック……?」俺は小さく呟いた。「この宇宙は俺を嫌ってる」
外では、屋敷の庭に太陽が昇り始めていた。そして家の中のどこかで、アジア系の祖母が、俺が答えられない質問を用意して待っていた。
「地獄の始まりだな」




