表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これが私の本当の自分じゃない  作者: ミナミラスト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/7

第7章:着物のおばあちゃんにエクスカリバーを掴まれ、巨大鉛筆で脅される朝

俺はベッドから起き上がった。足がまだ震えていて、祖母に殴られた頰の痣がズキズキ痛んだ。急いで着替える。ゆったりしたジーンズにパーカー。学校の制服はまだ着る気になれなかった。


廊下に出た。


屋敷の廊下は一晩で伸びたみたいだった。階段に向かう一歩ごとに壁がガムのように伸び、知らない先祖の肖像画が俺を目で追い、隅の影がねじれる。


(気のせいだ。ただの気のせいだ。屋敷が伸びるわけない)


でも心臓は鳥かごの中で暴れるように肋骨を叩いていた。


階段に着いた。彫刻された木の手すりが、ステンドグラスの窓から差し込む薄い光に輝いている。下の玄関ホールはがらんと空っぽで、静かすぎた。


奇妙な予感が氷水のように体を駆け巡った。首の後ろの毛が逆立った。


(誰もいない……みんなどこに行った?)


慎重に進む。裸足だった——靴を履くのを忘れていた。できるだけ音を立てないように。大理石の床は冷たかった。柱も、植木鉢のシダも、閉じたドアも、俺が聞きたくない秘密を囁いている気がした。


すると、廊下の奥から声が聞こえた。


遠くて、くぐもっている。


キッチンからだった。


壁に背中を預け、息を殺して近づく。キッチンのドアが少し開いていて、暖かい光が廊下に漏れていた。


中を覗いた。


そこにいた——父さん、ミサキ、そして花子おばあちゃん。


ミサキはテーブルに突っ伏し、腕を組んで世界の重みを背負っているみたいだった。父さんは彼女の背中に手を置いて、慰めと諦めが入り混じった様子。花子おばあちゃんは向かいに座り、足を組んで黒い着物を完璧に着こなし、湯気の立つ湯飲みを持っていた。


空気が重い。張りつめていた。


「さあ、隠す必要はないわよ。分かっているでしょう?」花子おばあちゃんが言った。


声は甘いのに、毒を混ぜた蜂蜜みたいな危険さがあった。湯飲みから目を上げなかったが、唇の薄い笑みが俺の隠れ場所を一瞬で暴いた。


羞恥が首から顔に火のように広がった。


「は、はは……」俺はポケットに手を突っ込んで歩み出た。なるべく自然を装う。「何? 隠れてなんかいないよ。ただ……建築を鑑賞してただけ」


父さんが顔を上げた。笑顔は優しいが、目が……疲れきっていた。


「シエナ。帰ってきたばかりでこんな状況になってしまって……」


「どんな状況だよ?」俺は神経質に笑った。「どういう意味? お父さん? ははは……」


ミサキを見た。まだテーブルに顔をくっつけたまま。肩が少し震えている。泣いている? 寝ている? 分からない。


「些細なことは気にしないで」花子おばあちゃんが湯飲みをカチンと置いて遮った。「話したいことがあるでしょう? 私の可愛い……シ・エ・ナ?」


名前を一音ずつ区切って、味わうように言った。視線が冷たくなる。いや、冷たいというより氷河みたいだった。内側から凍らせる冷たさ。


「は、はは……」足にピリッと痛みが走った。


父さんか、自分の罪悪感か分からないが、とにかく反応した。


「な、何? おばあちゃん? 用事?」


沈黙。


花子おばあちゃんが目を細めた。


「おばあちゃん?」声に奇妙な響きがあった。怒りじゃない。驚き……そして何か別のもの。寂しさかもしれない。「変なこと言った? お父さん?」俺は父さんに助けを求める視線を送った。


父さんは顎を撫で、生え始めた髭を擦った。


「うーん……四年生以来、君がおばあちゃんって呼ぶのを聞いたことがないな」


花子おばあちゃんがゆっくり頷いた。表情がわずかに柔らかくなる。


「孫娘にそう呼ばれて、確かに嬉しいわ」俺を鋭く見つめながら言った。


「へ、へへ……」冷や汗と熱い汗が同時に噴き出した。


(何言ってるんだよ、ダニ! 考えろ!)


「い、いや……」どもった。「ただ、気分転換したくなっただけだよ。いつものリズムに戻るためにさ」


(クソ。俺自身でも嘘くさすぎる)


父さんが不思議そうに俺を見た。花子おばあちゃんは、目が笑っていない笑みを浮かべた。


「まあ……変化は良いことね」


長い、長い沈黙。


「それにしても、浴室で何があったのか説明してくれない? 正確に何が起こったの?」


(直球だ……)


「えっと……」ミサキを見た。まだテーブルに顔を埋めたまま。「ミ、ミサキ、お父さんに何も言わなかったの?」


横目でメイドを見たが、彼女は無言。テーブルに置いた指が白くなるほど力を込めていた。


父さんがため息をついた。


「残念ながら、彼女は自分のミスをとても恥ずかしがって、話したがらなかったみたいだ」


「ミス?」


「そう。主のお嬢様が浴室で転んで……」首を振って困った顔。「ああいう転び方で亡くなった人もいるんだぞ? それにドアを壊して……もう過去のことだと思っていたのに」


(転んだって……そう言ったのか?)


「オズワルドを起こしてドアを交換させなきゃならなかった」父さんはもう一度ため息をついた。


オズワルド。執事だろう。朝の五時にドアを交換できる人。


「そ、そうだ!」俺は少し大声すぎた。「お父さんの言う通り! でも俺のせいだよ。俺が大げさにしすぎたんだ」


花子おばあちゃんが厳しく頷いた。


「確かに、大げさにするべきじゃなかったわね」


「静かに……」俺は思わず呟き、はっとした。(クソ、彼女がいるのを忘れてた!)


でも花子おばあちゃんは怒らなかった。むしろ笑みが広がった。


「それでも、このままにしておくわけにはいかないわ……そうでしょう、孫娘?」彼女は獲物を観察する捕食者のように首を傾げた。「問題の根源を断つべきだと思わない?」


(クソ。知ってる。全部知ってる!)


背中、脇、掌、全身が汗でびしょ濡れになった。


「い、いや、そんな必要ないよ」できるだけ強い声を出した。「このままで大丈夫だ」


「このままで大丈夫?」花子おばあちゃんは父さんに向き直り、突然……目に涙を浮かべた。


本物っぽかった。少なくとも完全に偽物には見えなかった。キッチンの光にキラキラ光る小さな真珠みたいだった。


「ほら、宏。孫娘が祖母の心配を理解してくれないのよ」胸に手を当てて言った。「長い間離れていたのに、もっと一緒に過ごしたいだけなのに……」


(この胸の重さは何だ……?)


「お、おばあちゃん……」


言葉が続かなかった。


父さんが前に出て花子おばあちゃんを強く抱きしめた。顔を肩に埋め、一瞬少年のように見えた。


「心配しないで、お母さん。分かってる」声が優しく温かかった。「それが望みなら、週末いっぱいシエナと一緒に過ごしてくれ」


花子おばあちゃんが泣いた。完璧に化粧した頰に本物の涙が伝った。


「ありがとう、息子。あなたは私の宝物。いつも優しいわ」


父さんが微笑んだ……そして、花子おばあちゃんの背後で素早く口の動きをした。


最初は意味が分からなかった。でもその表情にぞっとした。


(クソ。全部演技だった)


俺は手を上げた。昔のダニの癖。友達がポーカーで騙したり、PlayStationを壊したのを嘘ついた時の癖。


中指を立てた。


花子おばあちゃんがゆっくり振り向いた。俺が中指を立てているのを見た。


彼女の笑みがさらに暗くなった。


(ヤバい……完全に失敗した)


「お嬢様! もう6時5分です!」ミサキがバネのように飛び起きた。


テーブルの角で頰に跡がついていたが、緑色の瞳に新しい力が宿っていた。俺を見た。一瞬だけ。でもその一瞬で、俺たちは同じ側だと分かった。


父さんが素早く懐中時計を確認した。


「じゃあシエナ、着替えて。学校まであと55分だ」


「はい!」テーブルを思いっきり叩いて湯飲みがガタガタ鳴った。「行く!」


俺はロケットみたいにキッチンから飛び出した。裸足で玄関ホールの大理石を叩き、階段を二段飛ばしで上がり、手すりを掴んで転ばないようにした。


部屋に着いて息を切らしながらドアを閉めた——オズワルドが新しく取り付けたドア。


木に背中を預け、荒く息を吐いた。心臓がこめかみで鳴っていた。


「よし……」俺は囁いた。「よし。ただ着替えて、学校に行けば大丈夫だ」


パーカーを脱ぎ、白い学校シャツを着る。プリーツスカートを腰まで引き上げた。指が震えてボタンがかけられない。


コンコン。


「はい?」振り返らずに答えた。まだボタンに集中していた。「ミサキか? 全部混乱してるよな……謝らないと……」


半分着替えたまま——スカートは履いたがシャツは開いて白いブラが丸見え、下のボタンはまだ外れたまま——ドアを開けた。


「まあ、私の可愛い孫娘。待っていたのを知らなかったの?」


花子おばあちゃん


俺は後ずさった。


驚きを隠せなかった。口が開いたまま、目が大きく見開かれ、二歩後ろに下がって自分の足に躓いた。


花子おばあちゃんが部屋に入ってきた。後ろ手でドアを閉め、鍵がカチッと鳴った。死刑宣告みたいだった。


「さて……」血を凍らせるほど甘い声で言った。「長い間離れていた孫娘が、やっと家に帰ってきたわね」


ゆっくり俺に近づいてくる。下駄がカーペットの上を音もなく進む。黒い着物が光を吸い込むようだった。


「記憶通りの姿ね」すぐ目の前で止まった。


ジャスミンと白檀の香りが俺を包む。暗い瞳が頭のてっぺんから爪先まで俺を舐め回すように見つめた。


「でも話し方が違うわ。そして……」


手が下に動いた。


素早く、正確に。


エクスカリバーを掴んだ。


服の上からじゃない。直接。スカートの下、パンツの下の膨らみを指が包み込んだ。布地越しに彼女の手の熱が伝わってきた。


「……これ」


(クソ。クソクソクソ。ここに来てまだ二日も経ってないのに)


「お、おばあちゃん」俺はどもりながら優しく手を押し返そうとした。「何の話か分からないよ……少しプライバシーをくれないか?」


手を押した。押したつもりだった。


動かなかった。


レンガの壁を押すような感じ。山を押すような感じ。花子おばあちゃんはそのまま動かず、濁った笑みを浮かべて鉄のような握力を保っていた。


「話す気がないみたいね?」彼女は言った。


俺を押し倒した。


ベッドに仰向けに倒れた。マットレスが衝撃を吸収したが、プライドは粉々に砕けた。花子おばあちゃんが俺を見下ろし、片手を腰に、もう片方の手は……まだそのまま。


「じゃあ……」下唇を噛んだ。「自分で全部調べさせてもらうしかないわね」


(クソ……先祖よ、友達よ、すまん。でもお前たちができなかったことを、俺は無理やり達成させられる)


花子おばあちゃんは着物の袖に手を入れ、小さな鉛筆を取り出した。


小指サイズの黄色い鉛筆。尖らせてある。


「え……?」


鉛筆が変化した。


魔法じゃなく、物を前後に動かして錯覚を作るような感じ。でも錯覚じゃない。鉛筆が長く、太く、鋭くなった。


三秒後には25センチの長さ、10センチの太さの黄色い木の杭になっていた。


「冷や汗が……」俺は頭の方に後ずさりながら囁いた。「何を……何をする気だ?」


花子おばあちゃんの表情が変わった。


もう優しい祖母じゃない。キッチンで泣いていた女優でもない。別の何かだった。


怒り。でも抑えられた、冷たい、外科手術のような怒り。


腕を上げた。巨大な鉛筆がランプの光にきらめいた。


「なんでもないわ、シエナ……少し血を調べたいだけよ」


「何を調べるんだよ!?」


「飛べ!」


彼女がベッドに向かって飛びかかった。


本能で反応した。両側の枕を掴んで顔に投げつけた。


鉛筆が枕を切り裂いた。


羽、布、糸。全てが爆発したように飛び散り、八月の雪のように白い羽が舞った。


花子おばあちゃんが俺を捕まえた。


片手で喉を、もう片手で腕を。鉄のような握力。喉をちょうど怖がらせる程度に締め、殺すほどじゃない。


「この狂った婆さん!」俺は叫んだ。「何やってんだよ!? お父さんが許さないぞ!」


「ははは……」低い、喉の奥から出るような、ほとんど男性的な笑い声。「本当に父さんが知ると思うの?」


「ミサ——」


「叫べば腕を折るわよ」手首を強く握りしめた。


骨が少し軋む音がした。痛みが白い閃光になった。


(クソ……神様……ミサキ……お父さん……)


目を閉じた。


(これで終わりだ)


コンコン。


二人ともドアの方を向いた。


「まあ……それまでか」俺はヒステリックに笑った。泣き笑いみたいだった。「ははは……」


「ええ」花子おばあちゃんが落ち着いて頷いた。「残念だけど、それまでね」


手が動いた。素早く。鉛筆の先か、手の端か——腕に一直線に走った。


皮膚が裂けた。


血がにじみ出た。


「うああああっ!」


痛かった。神よ、痛かった。普通のナイフの傷じゃない。何か別のものだった。焼けるような、脈打つような、脳まで響く激痛だった。


ドアが爆発した。


破片、木、蝶番。全部が内側に吹き飛んだ。


そして入り口に、拳をまだ伸ばしたまま、嵐の中の灯台のように緑色の瞳を燃やしたミサキが立っていた。


「お嬢様に何をしているんですか!?」


声は叫びじゃなかった。咆哮だった。壁を震わせ、絵画を傾け、そして初めて——花子おばあちゃんのまばたきを誘った咆哮。


美しいピンク髪が目に見えない風に揺れた。緑色の瞳が火花を散らした。制服は完璧なのに、その構えは戦士のものだった。


(ミサキ……)


目から涙が溢れた。


(英雄だ……)


「ミサキ……」俺は嗚咽した。


花子おばあちゃんが俺を解放した。何事もなかったようにベッドから離れ、着物を整えて鉛筆を袖にしまった。


「つまらないわね……」失望したため息をついた。「土曜日に続きを聞かせてあげるわ、シエナ。ははは」


ミサキの肩を軽く擦りながら通り過ぎた。


「警告しておくわ」ミサキは彼女から目を離さずに言った。「あなたが誰であれ……お嬢様を傷つけるようなことは絶対に許しません。分かりましたか、花子?」


花子おばあちゃんは廊下で止まり、ゆっくり振り向いた。


笑みが濁っていた。自信が気持ち悪かった。


「まあ……」彼女は言った。「まだそれを『お嬢様』と呼んでいるなんて驚きね」


彼女は去った。下駄の音が廊下に遠ざかり、消えた。


ミサキが部屋に入ってきた。


「お嬢様、大丈夫ですか?」


手を差し伸べた。


俺はそれを取った。指が温かかった。しっかりしていた。震えていなかった。


「ありがとう……」涙が止まらなかった。「ありがとう、ミサキ……」


全力で彼女を抱きしめた。


彼女も抱き返してくれた。背中に腕を回し、頰を肩に預け、新鮮な花の香りが毛布のように俺を包んだ。


「怖がらないで」彼女は囁いた。「私がいる限り、誰もお嬢様を傷つけさせません」


目を閉じた。


(もしかして……もしかしたら、これも悪くないのかもしれない)


外では太陽が完全に昇っていた。屋敷の庭が黄金色の光に輝いていた。


そして家のどこかで、巨大な鉛筆を持った狂った祖母が、次の攻撃をすでに計画していた。


「残り六日……」俺はミサキの肩に顔を埋めて呟いた。


「え?」


「なんでもない。ただ……いてくれてありがとう」


彼女は抱擁をさらに強くした。


そして一瞬、世界の痛みが止まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ