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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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閑話 王族対抗歌合戦 42 女の矜持


お嫁に行かないと、価値がない。


シエルの言葉に、妹コンテは、ううっ、と呻いた。


「あら、お嫁に行く関係で、何かあるの?」

「コンテもお年頃ですものね、良き人がいたりする?」

「シエルはね、バーニーさムグググゥ。」「エクレお姉様ダメ!黙って!」


わちゃわちゃ。

恋話となれば一段ひそりと、頭寄せ合い盛り上がるってものである。そこは高貴なる淑女であろうが、牧場の牛飼い女であろうが、変わりない。

お兄ちゃんネクテールと、カルネ王太子は、お茶を飲みながら存在を無にしてただ、聞いている。


妹コンテは話をした。

恋人、プレリーのお母さんが、モデルばりに大きいコンテの事を、そろそろお嫁入りも具体的に、となってから「小さいお嫁さんがいい!」と言い出した事を。

そして恋人プレリーは、その事について動かずだと。


「何ていうか、ちょっとプレリーにもがっかりしちゃったんだべ。長年、信頼し合って気性も分かって付き合ってきたプレリーだのに、いざっていうと、こうなっちまうんだべか、って。ガーンって頭を殴られたような気持ちがして、何か私も何も言えずに黙って、王都に出てきちゃった。帰ったら、どういう事なのかはっきりさせないとな、って思うと、気が重くって………。」


「はっきり、させる、って?」

ラベイユ王弟妃が、はひゅ、と息を吸う。


妹コンテは、お茶をコクンと飲んで喉を湿らせ、ほっぺに手を当てて。

「私のこと、ちゃんと好きなのか。おばさんがああ言ってるけど、将来どうするつもりがあるのか。別れるのか。それとも、おばさんと話し合いをちゃんとして、結果としてダメなら婿にくるとか、未来を探って一緒にいてくれる気があるかどうか。すぐには決められなくても、今の気持ちは、とりあえずどっちに向かっているか、ですかね。」

建設的である。


「私かお母様か、どっちをとるの!今決めて!でも、ないのね。」

リアン王太子妃が、ふっ、とお茶を香って微笑する。

「貴女は優しい女の子ねえ、コンテ。」


ニフ、と笑って妹コンテは歯を見せる。

「おばさんとも、長い付き合いなんですだよ。悪い人じゃないんです。何でいきなりそんな事を言い出したのか、ずっと思ってたんだって言うけど、分からないけど、バチって切っちゃうのは、何だか私の今の気持ちでは、引っかかるです。プレリーも。気持ちをちゃんと、聞いてみなきゃ、私はこうしたい、プレリーは?って聞いてみなきゃ、今までの関係はしらっと切っちゃうほど軽くなくて、勝手だと思ったです。それくらいできないと。なんか結婚しても上手くいかないと思う。」


分かってくれない、って拗ねるのは少しで良くて。

これから先、一緒に暮らしていくなら、お互い気持ちに誠実でいないと、嘘や我慢では、苦しくなるから。

はっきりさせるのは、腹に力が必要な事だけれど。


「………勝手、かしら。」

ラベイユ王弟妃が、目を伏せて、ミルク大福をもちもちしながら手慰み。

「自分の気持ちを、我慢してずっと言わないのって、勝手と思う?コンテ。」


「思うです。まあ、全部言えば良いってもんでもねえですが。」


我慢してたら伝わらない。

伝わってないのに、急に、何で!?って怒ると、男の人はビビってしまう。


「時々、プレリーって、びっくりするほど分かってないな!って時があるですべ。私が、どうなの?って伝えて、聞かないと喋ってくれないし。向こうも、えーっ!?そうなの?って思ってるかもしれないです。でも、私はそうやってはっきりさせていきたい方だし、プレリーはそんな私を、多分、今まではちゃんと好きでいてくれたと思う。別に責めたりしなくて、普通に聞くんだけど、問い詰められるのは男の人はなんか、怖いらしいから。普通に、普通に何となく普段から、世間話的に聞くですよ。」


「私も、我が君カルネ様と話を良くするわ。話をしてみないと、してみても、全部の気持ちは分からないけど。一緒に過ごす時間が少ないからこそ、テレビ電話なんかで、話す時間が楽しいの。」


そうして夫婦は、隣り合って立って、男女と別の視点でもって、目指す未来に向けて前を向いて、混じり合う交点を何度も重ね、進んでゆくのだ。絡み合う。どちらかが下を向けば、掬い上げるように持ち上げて、かと思えば手を繋いで引っ張り。

べつべつのものだから、交じり合える。理想の形のようには、なかなか、いかないけれど。普段の生活もあって、自分の望む事もしながら、ぽろりぽろりと産みこぼしながら、光の軌跡を残しながら、前に。


「一歩下がっていた今までの女性たちだって、きっと、どこかでそういうものだったと、やり方は違っても。私も、そう思うわよ。」


「とにかく分かったわ!コンテは、プレリーにギャフンと言わせるべきよ!」

シエル王女が、フンス!と鼻息荒くする。

「だって面白くないじゃない!全部お膳立てして、こっちが聞いてやらないと喋ってくれないなんて!バーニーさんなら、きっともっとスマートにいっぱい気を遣ってくれるわ!」

「あらバーニーさんてどなた?」

藪蛇である。


とにかくそんなこんなで、妹コンテはアナウンサーになる事になった。

何で、と思うが、プレリーをギョッとさせる作戦である。

「うかうかしてると、大事な女が手を離れていっちゃうんだぞ!って思わせるのよ!」

何でも実現バーニー君への恋心を隠したいシエルは、必死でわちゃちゃと喋る。


それを分かっているんだか、リアン王太子妃も、くすくすしながら。

「私も、コンテはアナウンサーに向いていると思うわ。ちょっと訛っているけど、それも可愛くて、どことなく親しみがあるの。会話していて、頭も良さそうだと思ったし、テレビで貴女が喋ったら、きっと皆が話を聞いてくれるわ。ところでバーニーさんとはどんな方なの?シエル殿下。」

「うっ。」


バーニーさんは〜。

パシフィストの魔法院の所属で〜。

何でも実現バーニー君って呼ばれて、偉い人や、最近では竜樹に重宝に使われて、仕事をバンバンこなす有能な人で。休みには新聞寮によくダラダラしに来て、子供たちと仲良く何だかんだして遊んで。


「魔法院の。何か役職はいただいてるの?貴族の方?」

「あ、そういうのはもらってないんですって。役職があると、動きが固定されちゃうから、せいぜい魔法院長官補佐くらいの感じらしいです。平民の、商家のご出身よ。面白いお仕事が大好きなんだけど、いつも竜樹にぶつくさ言ってんのよ。面白いけど、面白いけど、また大きな仕事ですかあ!とか叫んで。なんかじゃれあってるのが男の子同士!って感じで、可愛いな〜って思っちゃうの。」


ぽぽっ、となって指先合わせてツンツンモジモジ、段々語っているシエルに、女子たちはニコニコである。

ふぅ〜ん。

「私に見合う高貴な方にお嫁入りするわ!なんてツンツン言っていた、シエル殿下がねえ。何だか、何だか〜。」

「な、何よう!リアンお姉様、何をおっしゃりたいのよ!?」


「分かりますだ。男って、父ちゃんでさえ、男同士で喋ってるとキャキャってして、何か子供みたいなんだ。プレリーもそういうとこある。……あぁ、私やっぱり、プレリーの事が、ちゃんと好きです。色々ないいとこ、今度の事で帳消しにならないくらいに、沢山知ってて、思ってるんだ。………だから気が重いんだあ〜。」


はっきりさせるのが。


ミルク大福をもちもちして、指先がついにはべっとりしてしまったラベイユ王弟妃が。コクン、と喉を鳴らす。


「私も。」


「私も。マージ様に、もういらない、って言われるの、怖いわ。私が好きなものを、食卓でも、お庭のお花でも、何でも、何が好き?何が?って聞いてくれるの。そりゃ、ダメって制限もあるのだけど、実家にいた時みたいに、お母様やお父様みたいに、お前にはこれがいいだろう、って押し付けないのよ。」


私、マージ様といると、どこか。


「期待してしまうの。もっと、もっと、って。我儘になったと、思うの、私。でも、欲しいの、彼の赤ちゃんが、竜樹様の言った未来が。着せ替え人形の事業で私が働く事も、何か、きっと、今の、突破口になると………。」


エマ王妃について傷を負うマージは、どこかしら痛い顔で血を流している。

夫婦として暮らすラベイユは、その事を、ひしひしと言葉の端から、行動の端っこから、感じていた。

停滞、傷をそっとしておくのも時間薬、癒しであるが、きっと大胆に動く時期にきているのだ。それは、マージも。ラベイユも、どちらもだ。


怖いけれど。

怖いけれど。

はっきりさせるのは。


「だったらきっと、私たち、ずっともっと、楽しくやらなくちゃ!」

リアン王太子妃がくすくす笑っている。

「着せ替え人形の事業も、女性アナウンサーとしてパッと立つのも、眉間に皺を寄せてムムムって顔じゃ上手くいかないわ!男性たちに、何て魅力的な女性なんだろう!ってイキイキしてるとこを、見せてやらなくちゃ!そうして、敵じゃないって、隣に立つんだって、認め合って暮らしてゆくのよ。」


「そうね、魅力的なら、あっちから離さないと思うわよ。」

エクレ王女も、自分の人生に思う所があるようで、笑っている。

「シエルもハッキリさせたらどう?バーニーさんに、告白、しちゃいなさいよう。」


「ええっ………!?そんな、だって。だってええぇ〜!」


指先ホチホチ。

「バーニーさんは、何だか子供っぽい女性より、大人な女性の方がお好きみたいだし。侍女さんでも、お仕事のできる方と仲良しなのよ。わ、私なんて、まだまだ何にも出来なくて……、女性として見られてないって、やっぱり、分かるわ。とっても仕事のできる素敵な彼に見合わない……。」


それでも。

「好きって気持ちを、まっすぐ言うか言わないかは、女の矜持に引っ掛かりますべな。」

妹コンテは、どこか覚悟の決まった顔だ。


その先に行けないから。

転んでも、落ち込んでも。


キラキラと粒を産みながら、うねりながら進む、光のように。





「………ところでバーニー君なら私は、体裁さえ整えれば、シエルの嫁入り先として充分と思うのだが。実力のある男だし、パシフィストとも縁を繋げられるし。」

カルネ王太子が、ぼそっと言った。


(しかし、バーニー君の方が、シエルをもらったら、きっとめちゃくちゃ大変なんじゃないかな。やっぱりまだ、シエルは女性として成長中で、恋に恋してる感じもあるし。彼は大人で、仕事が大好きで面白くって、今は恋愛に気が向いていないしなあ。恋愛の練習なら良いけれど、あんな妹でも一国の王女に対し、不埒な所まで許す訳にはいかないし。)


妹シエルの気持ちなど重々承知で、既にバーニー君への身辺調査は済みのお兄ちゃん、カルネである。抜かりない。

でも、告白するって勇気の必要な事だから。

シエルも思いを告げて、また一段、女性として人として、成長するのかもしれない。


キャワキャワと告白で盛り上がり顔を真っ赤にさせている妹シエルに、お兄ちゃんが玉砕応援気味に思っているのは置いておこう。


兄ネクテールも、ナリはでっかいが可愛い妹コンテが何故かアナウンサーになること。

そして、恋人のプレリーをすごく好きな事に、ムヌヌヌヌ、何故だ、しかし、仕方ない……。と複雑な気持ちを隠せず、お口を尖らせているのであった。





職場に今年もツバメが来ました。

去年の巣に出たり入ったりしている。

キュートな鳥に癒されつつ、更新がんばります。

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