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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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閑話 王族対抗歌合戦 41 王弟のいないフードゥル王宮では


食料品店マルマッジに勤めている、アナウンサーに推挙されたフロマージュ・ネクテール兄は、どうしてこんな事に、その2な事態になっていた。


招待状をもらって、王宮で、アナウンサーの資質を確かめられるのは、理解している。

カルネ王太子の名前でよばれたが、まあ実際は担当者でそこそこのお偉いさんが面接するんだろうなあ、と思っていたけれども。そこにカルネ王太子ご自身がいらっしゃるのは、(あっ、本当にこの事業に力を入れてらっしゃるんだ)と納得がいく。


だが、だが、である。

牛車に同乗して、別件、実家の巻角牛の納入の実務話を、その担当者としに王宮にきたフロマージュ・コンテ妹が。

(ついでに恋人プレリーとのモヤモヤを、お兄ちゃんであるネクテールを訪ねて王都で遊びパーっとしようと家族も背中を押して)


何でカルネ王太子殿下とネクテール兄ちゃんの横で、リアン王太子妃様と、ラベイユ王弟妃様と、それからエクレ、シエル王女様たちと歓談をしてるわけなのか。王族ずらり、兄はヒヤヒヤ、焦りに冷や汗たらりである。



「あー、そうなの。巻角牛も双子っているのねえ。」

リアン王太子妃が、へえ〜とお菓子をパクリ。お菓子はもちもちの生クリームミルク大福である。一口サイズが可愛い。


「いますよー。不思議な事に、雄と雌の双子の時には、ほとんど雌は妊娠できない牛になってしまうんです。仕組みは分からないけど、雄がちょっと入っちまってなるんだべか。」

「「「えぇぇえええ!!」」」

高貴なる女性たちが4人とも、めちゃんこビックリしている。指に摘んだ大福が、飲もうとしたお茶のカップが、空中で止まっている。


「不思議ねえ。」

「知らなかったわ〜。」

「双子の雄はどうなの?その、妊娠させられる機能があるの?」


「雄はまったく普通なんだです。雄も混ざるかと思いきや、なんでかなぁ。神様は不思議なことをされます。」

コンテ妹は、ドレス姿の4人の前、ニコニコ話。物おじしない妹である。

さっきは「皆様方には比べものにならないけども、王都にくるから張り切ってめかし込んできて、良かったべな〜!」なんて笑って、微笑ましいって感じでご婦人方を笑かして、なんか馴染んでいるのだ。


巻角牛はどこから産まれるの?頭?足?

とか、話は弾んでいる。

高貴なお方が、巻角牛の出産に興味を持つとは思わなかった。


「すまないね、ネクテール。妻たちは、巻角牛について知りたくてね。各国の特徴を出した、ソルセルリー大陸皆での着せ替え人形の事業があるのだけど。フードゥルでは男人形を巻角牛飼いにしたらどうか、いかにもフードゥルらしくて、楽しく遊んでもらえるんじゃないか、って女性たちが盛り上がっているんだよ。」


カルネ王太子が、フフフ、と笑って妻たちの方をお茶飲み飲み、眺めている。


「ああ、それでウチの妹に、急遽話を聞きたいとおっしゃったんですね。」

ネクテール兄は、やっと納得がいった。

妹コンテは、確かに兄ネクテールより、ずっと長く牛飼いであるから、詳しく教えてくれる。


「ああ。妻たちが喜ぶかと思ってよばせてもらったよ。私も知らない事が沢山あって、とても興味深いよ。」



まず王宮に着いて、カルネ王太子と、他の面接官のお偉いさんたちと、アナウンサーについてネクテール兄は緊張しながら話をした。

そもそも話をするのが好きなネクテールは、段々と緊張も解けて、食材についての話や(だってフンフンと身を入れて聞いてくれるのだ。話す方だって気持ちが入ってしまう)勤めている食料品店マルマッジでのお客さんとの面白い触れ合い(悪口や個人が分かるような事はけっして言わない)、話は広がって。


そうして、そんな話や知識を知っているアナウンサーがテレビで活躍する事は、きっとフードゥルの国民のためになる、人が美味しく楽しく食事をして、日々を漫然とではなく喜びと感謝をもって豊かに生きられる助けになるから、と。

めちゃくちゃ口説かれて、ネクテール兄は胸が熱くもなっている。


その流れで、口が柔らかくなったところ、今日は牛飼いの妹と来たんです。なんて、ちょっと余分な話をしたら、カルネ王太子が食いついたのだ。


そこから、あれよあれよ。

ネクテール兄は、ほぼアナウンサーとしての資質も期待大と認められ、大勢の偉い人たちの面接から場所変え誘われ。道中廊下はカルネ王太子がウキウキしながら先を歩き、面接場所よりこじんまりしたこの部屋に連れてこられ、妹が、あれぇ?って顔で呼ばれて。

王族たちと、近い距離で歓談。


めちゃ恐れ多い。


「巻角牛は、前足から産まれてくるんだぁ。前足の次は頭で、角は子牛にはほとんどまだないから、引っかからないですよ。後ろ足から産まれるのは逆子で、そりゃそりゃ、大変なんだです。モタモタしてたら、子牛は死んじゃうし。皆で子牛の足に綱をつけて、両足をよーいっと引っ張るんだあ。」

「まあぁ!大変なお仕事ねえ。」


「コンテは牧場で、男の人と変わらないお仕事をしているの?」

シエル王女が、びっくりため息を吐いて落ち着いてから聞く。


「はい、私はこの通り、頑丈な身体をしてますんで、他の男兄弟たちと大体同じ、力仕事もするし、分担しあってやってますよ。ウチの父は女だからって下に見ないけど、その代わりに、仕事はちゃんと求められます。」


「そうなの。……それって、辛くはない?」

ラベイユ王弟妃が、そっと聞く。

「フードゥルでは、女性は一歩下がって、ってするでしょう?仕事をさせてもらえない代わりに、男性にはない弱さがあるのを、守ってもらえないと、困らない?」


う〜ん。

コンテ妹は、ネクテール兄をチラッと見る。

「私は小っちゃい時から、男兄弟の中で育ったから、慣れているけど……。それに、兄ちゃんや弟たち、何だかんだ優しいし。確かに、男とは違うんだなぁ、と思うことはありますねー。男に守ってもらう、か。う〜ん、お互い様っていうか。一歩下がらないとやる事やってくれない、ってケチくさいな〜、って。」


牧場では、男女の差は、単にどの仕事ができるかの差でしかない。女性であっても身体が動けば使われるし、無理なようなら食事づくりなどのサポート側にまわる。男性でも腰をいわして力仕事ができなかったりもあるし。


父は、女だからって、男だからって、2つに分けるだけじゃ足りないだろう、と言った。


巻角牛もそうだけれど、食べるのに美味しい肉牛、牛車を牽くのに頑丈で見目よく忍耐強い、従順な牛、お乳を搾るのに向いている牛。

その中でも、幾つにも個性があって、他牛を追って特に攻撃的な奴もいれば。

おっとり性格が良いやつもいる。

雄も雌も、どれも可愛い牛である。


「どっちにしろ、違うからって敵にしちまうと、厄介だぜ、って。」

「まあ。」

「うんうん、お嫁に行かなきゃ女は価値がない、みたいじゃないんだなあ。竜樹もそんなふうだわよねー。」




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