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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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閑話 王族対抗歌合戦 40 痛いの警報器


ウエハースをかじかじしている赤ちゃんラマンを抱えた助祭と、和やかに昔話などをして。

マージ王弟は、ホッと息を落とした。


子供たちがズボンにまとわりついている。その小さな手、温かさ。キャッと高い声、鮮やかな生の匂い。


マージ王弟の住む、静かな王弟離宮は、光も埃も匂いも沈んでいくような、しん、とした時間が長く流れていたけれど。

それを打ち破る今、この時、子供たちの発する陽のエネルギー。

異分子のマージ王弟を拒否しない、中に入れてくれる優しい明るさ。


引っ張られて、柔らかい手のひら、肌に触れて、ふわっと浮き立つ、こころ。こんなに人と近く、肌を触れさせ合う事は、相手が子供でもなければ、そうはない。

妻のラベイユとは、清い仲だから、余計に。

けれど、人肌とは、人との触れ合いは。ほっぺのさらさらした滑らかさ。ほわほわした髪の匂い。子供の高い体温。どしんとぶつかる勢い。こいこいと引く手。お菓子の甘さと相まって、なんとも、なんとも言えず。

自然に心の安心度を、ジワァと滲み出させ、一段上げるのだ。

それはこの世に生きる者ならではの、仕組みであろうか。竜樹であれば、人ってスキンシップで幸せだなと思う脳内物質が出るようになってるんですよ、優しく触れて、仲良くしなね、って神様に言われているみたいですね。と教えてくれるかもしれない。


子供のこと、出産のこと。

恐れてばかりいたけれど。マージ王弟のやったことは、妻のラベイユに、このふわふわ、浮き立つ時間を、幸福を、与えずに選択肢を殺し。じわじわと息苦しい真綿で、包んで呼吸を浅くさせたということ。


読む本を管理したのは、自分の思い通りに妻を握っていたかった、というよりは。

ビクビクと、そっちに行かないでと、お産や子供に関する記述がある本を、女性が働く要素を含む本を除いていた。

恐れていた。今も怖い。


子供たちの中にあって、生き生きと働く女性たち。侍女さんに、ラフィネ母さんや、エルフの女性たち。

ここからは、王弟離宮の何も生まない沈んだ時間にはない、生まれ育つものが沢山。

王弟として他の国とも交流があるから、そちらの女性たちは、そもそも、フードゥルと違うと、見て知ってもいた。テレビも見て、きっと、フードゥルはこのままの価値観で、いられないとも。


自覚はまだないけれど、見回して、ため息。


マージ王弟は、竜樹にコンプレックスがあった。妻を奪われてしまう危惧があった。馬鹿らしい疑念である。愚かだと分かっていた。

けれど。


(中身がからっぽな、顔だけ男……、だものな。私は。情けないし、ラベイユに窮屈な思いばかりさせて……。)


竜樹に、ガウ!したのは、精一杯の威嚇。だけど、するんといなされてしまった。同じ高さにさえ立ってくれない、本物の頼れる男、お父さん。


キャハハ!と笑う子供たちの声は、マージを陰で見下していた貴族の女たちとは違う。それでも、思い出せば重なって聞こえるようで、頭を振る。


(マージ王弟殿下、王位に興味がないみたい。やってられないわ。王妃になれるかもしれないから、婚約者になったのに。男として野心がないのは、なんていうか、ねえ。)

(仕方ないわよ、あの方、アジェンダ王様と比べたら、全く野生味がありませんもの。荒事は苦手だし、血なんてもってのほか、誰かが怪我をした時、貧血を起こされたそうよ。万事がその調子で、ナヨナヨしてるのよね。飼い慣らされた子羊のようなものよ。)


男らしい男がもてはやされるフードゥルにあって、しゅっとした細身の美男子マージは、女性たちに取り囲まれながら、男性にも女性にも、どこか馬鹿にされていた。男性優位社会というのは、男性からだけつくられるのではなく、女性側からも今までの仕組みに寄りかかりたい思惑と、偏見があるのである。やったことないことは、恐ろしいから。抵抗力と。今までのようにすれば、と惰性が働くのだ。


優しく対応するから、一見モテモテで、少女のように美しい夢を見る、または遊び相手にはいいけれど。現実を見た時、兄王アジェンダを細やかにサポートできれば満足のマージ王弟は、野心と虚栄心たっぷりの、嫁ぎ先で自分の全てが決まる、と思っている女性たちには、どこか物足りなかったのである。


王位を狙うのはやり過ぎでも、もう少し自分の立場を大きくするために狡く働けよ、という評価。


王位を狙う野心がない、と陰口を叩いた、ラベイユの前の婚約者とは。それを偶然聞いたすぐ後に、婚約を円満に解消した。アジェンダ兄王に全てを伝えて。元婚約者も、マージを知れば知るほど物足りなく思っていたから、王弟というそれなりの地位に拘らなかった。

その後、もっとガツガツとした野心たっぷりな貴族男性に鞍替えしている。子供も産まれて、何だかんだありながらも。肘を周りの貴族家にぶつけ、また押しやられながら、強い気持ちでそこそこ上手くやっているようだ。


そこにあるのは、痛がりのマージ王弟には恐くて掴むに怯える、ゴワッとした幸せだ。


このまま、ああいう女性を娶れば、実家ともども勝手に動いて、マージ王弟に王位を狙わせて、お国が揺れる事すらある。

その後は、自分たちに都合の良い政治をして。


マージ王弟は王位を目指す資質も胆力もなかったが、王族として国を支え、自分を捧げて大事にする心はちゃんとあったので。

その後ずっと長い事、女性を恐れて、独身でいた。


そんな男と見比べたら、本物の頼れる男らしい男ってやつが現れたら、しかもフードゥルの王弟なんて屁でもない、高い位のギフトの御方様だなんて。


ラベイユは、今までのような、男に寄りかかって、もっともっとと動かすような、ある意味たくましい女性とは違って。王太子カルネに振られて、でも文句も言わず、じっと耐えている、純情な乙女であった。いつも悲しそうなのが、とても気になって……。

逃したくない妻。大事にしたかった。でも彼女も、知ってしまった。

マージの男としての低い価値と、そんな男の元にいないで、他を選ぶもっと良い選択肢を。


ふー、と2つ目の息を吐いた拍子に、グイッと手が引かれる。

俯く暇を与えない。

ジェムが見上げている。

心配そうな瞳で。


「マージでんか。なやみがあんのか?オレ、聞いてやろうか?話せばスッキリすることも、あんぜ。」


マージ王弟は、眉を下げて、情けなくタハッと笑った。

子供にさえ憐れまれる。

だけど、このジェム少年は、やっぱり竜樹とーさの息子なのだ。


「大人って、なやんでばっかだよ。あれがどうしよう、それどうしよう、って、先のこと、先のやなことばっか。オレたち、街に親なし家なしで暮らしてたから、知ってるんだ。今日ごはんが食べられて、生きてる、ってすごいことなんだって。明日がどうなるか、なんて、先のことは考えられない。ごはんがなくて、うえじにするかっていうとき、なやんでるヒマなんてないんだぜ。必死に今日、かせぐことをやるしか。」


少年の空色の瞳は、マージ王弟の、グジュグジュした悩みを真っ二つにする。ヒリついた生死をかけた生活の記憶の中で。

「それでも未来の方向をみないと、人は良く生きられないんだって。竜樹とーさが言ってた。朝、昼、夜ってごはんを食べられるようになって、オレ、ゆっくり考えられるようになった。思うんだ。未来のやなことは、未来のいいことと、抱き合わせだな、って。面倒なことは、面白いこと。何にもなくてつまんないことは、のんびり休める、ってこと。今やってることが、だんだん未来になる。でも、毎日そんなに上手くはいかねーよ。大人も。子供も。そうじゃん?」


目をパチンとさせて、すー、吐息を吐いて。マージ王弟は、ジェムの隣にしゃがんだ。目を合わせれば、真剣な。

ジェムは、その子供の手で、王弟の紫銀の美しい髪を、恐れもなくペタリと何なく触って。優しく頭をなで、なで、した。小っちゃい子組を撫でる時みたいに。お兄ちゃんだもの。


「おちこんで、やっちゃったな、っておもって。それが今日じゃん。なやみは、チャンスじゃん。じゃあ、どうすんの、って。マージでんかは、なやみを、どうしたいわけ?大人って、どうにもならないことを、ぐずぐず言ってる時あっけど。今、どう思ってて、どうしたいの?」


何かさ、マージでんか、街で、首吊って死んじゃった兄ちゃんみたいな顔してっからさ。ほっとけねーよ。


世の中を知っている大人びたジェム少年の、また子供らしからぬ言葉は。大人なのに痛みでどこか退行しているマージ王弟に、真実、ひどく刺さった。






「そっか。おくさんに、そういうわけで、ひどくしちゃったんだな。」

「うん。そうなんだ。自由を制限して。その、働かないで、何もしないで、子供産まないで、って。」

白い結婚、とは何かマージ王弟は言わなかったが、大人びているジェムは分かるのである。あれだ、やったよね、どうやったら子供が生まれるかってテレビの番組で。男女の子作りが何か、ゴニョをゴニョしてゴニョするのだ。


敷物に三角座りして、子供まみれになりながら、マージ王弟はしょんぼりである。

「嫌われちゃうと思う。まだ、お慕いしている、って言ってくれてたけど、それでも我慢できないほど辛かったから、えっと、親戚の前で、どんなふうにされてるか言ったんだと思うし。」


「ふーん。」

ジェムは、隣にぽちょんと、やっぱり膝を揃えて座って、ふぬふぬと話を聞いてやっている。

女の子たちは、お菓子を持ってきては、キャッ、ひえ、子供は産みたいよ、などと挟みつつ、モグモグ食べて耳を澄ましている。


「おれさー、その逆を知ってるからさ。とにかく子供産め!って無理強いして女の方が身体がつらくて、こわして、けっきょくりこんするやつ。子供育てればまだいいけど、色々あくどいのもいるかんな、そーゆーやつって。働けよ!って自分は働かないでおくさんに無理させるやつ。わりとおくさんは、みすてなかったりする。勝手にしろ、ってかまわないヤローとか。まあこれはハキョクするときがおおいけど。マージでんかって、そんなにひどいことしたかなあ?まあ、竜樹とーさみたいに、ちゃんとした大人みたいじゃなかったけど、まだ、やりようあるだろ。」


なんと。ジェム基準では、それほどひどいことになっていないマージ王弟である。


「ジェムは男だから、そんなふうにおもんだよ。わたしだったら、あれ読んじゃダメとか、はたらいたらダメとか、何かきめられたくないじゃん。なにさまー、ってかんじ。わたしお針子になりたいし。」

「自由にしたいよねー。子供を産むのも、はたらくのも、こっちにもやりたいかんじの、かんがえがあるじゃん。」

うんうん、そうそう。

女子たち、厳しい。


「うっ。そうだよね……。」

しゅーん、と頭を膝に埋める。

ぽすぽす、その頭をまたなでて、ジェムは続ける。

「ごめんなさいしなよ。それで、やっぱり別れたくない、ってゆーんだよ。ちゃんとこっちからも、大好きだから、やっちゃったって、でもまちがってたから、なおす、って言いなよ。」


ごめんなさい、は基本である。


「謝って許してくれるかどうか。それに、まだ、その、出産まわりに私が耐えられるか分からないし、実際、怖くて。自分の身近な女性が働くのも、やっぱり抵抗感があって……。」

心のわだかまり。

理屈としては理解できても、心は上手く沿わない。ああ、そうなんだ、と落ちるには、何かが必要なのだ。


「そのさー。エマ王妃さま?なんかマージでんかは痛いの恐がってるけど、きっと、やりきったとおもうよ。」


パチン、と瞬いて膝から少しだけ顔を離す。

「やりきった?」


ジェムは、うん、と頷く。

「子供をのこして死んじゃったのは、すっごくやだったと思うけどさ。ラフィネかーさとかもそうだよ。働いてると、1日終わって、やったね!やりきった!って思うんだって。働くの楽しかったから、続けたんじゃね?オレも、働くの、大変だけど楽しいよ。子供も産めて、幸せだったんじゃね?幸せだから、また産みたかったんじゃね?やることは、やりきって、途中のことがあっても、その人の逃げられない死んだの前にやることは、やりきった。ちゃんと幸せだったんじゃね?」


ワイのワイの。

女の子たちがそれにツッコむ。

「えーしにたくない。」

「でも、なんにもできないまま、死んじゃうひともいるもんねえ。」

「働くのたのしいの、わかるー。」

「いのち、つながったじゃんね。」

「子供いるのにしんじゃって、かわいそうだよ。」


まあ、色々あるけどさ。

ほんとのとこも分かんないけど。

ジェムは引き続き、彼が見てきた世の中からの自論を述べる。


「大体、アジェンダ王さま?が休め、って言ったら、休んだんだろ?ラフィネかーさもそうだよ。何だかんだ、竜樹とーさが言うと休む。お茶とか用意してくれっし、とーさはそういうの上手いし、かーさの手伝いもできるし。ちゃんと夫婦やってるかーさと、とーさって、ちょっと他のやつじゃ入れねーくらい、信頼し合ってんだよ。マージでんかは弟じゃん。下のもんに頼れねー。でも、夫は違うじゃん。ラフィネかーさは、竜樹とーさといると、ふにゃっとしてる。安心してんだ。それって、マージでんかがダメなんじゃなくて、アジェンダ王さまだから良いんだ。そっちが特別なんだ。それで、竜樹とーさもそうだけどさ。」


妻が、思いっきり働いてるから。

やりたいことを、ちゃんとみながら、やってごらん、したんじゃね?


「やりたいこと、止めないで、だけど、時々、休んでねって言う。マージでんかが騒いだから、アジェンダ王さまもエマ王妃さまの具合に気づいたかもしんないし、べつにマージでんかはダメじゃなくね?」


パッ、と上げた顔は目の鱗が落ちた顔。

「まあ、あれだよ。竜樹とーさもラフィネかーさと。まだ白い結婚だけどな!早く子供つくればいいのに!」


っていうか婚姻もしていない。

かーさと、とーさと、呼び合って、一緒に暮らして、子供達を育てて。お父さんお母さんとしては順調に深まっているけれど。大人の恋愛の方は、一応両者なんとなく、ダヨネと思っていつつ、まだ進行中なのである。ジリジリ。


「えっ!?はああぁぁあ!?」


「知らなかったの?マージでんか。まあ、おれらがいたら、かーさととーさでゴニョゴニョはしづらいじゃん。しかたねー。約束して、ホテルレヴェに行くって言ってたけど、なかなか2人とも、ヒマじゃねんだよな。」

「バーニーくんとかに協力してもらった方がいんじゃない?」

「マルサでんかとか!」

「侍女さんじじゅーさんたちにも!」


くすくす、ひそひそする子供たちに、はあああぁ!?とまた叫ぶマージ王弟なのであった。




ふ、とそんなこんな騒いでいると。

マージ王弟たちみたいに、敷物に三角座りして、膝に顔を伏せている女の子がいる。

「? あの子……、さっきから、ずっとふうふうしてないか?お腹も押さえてるし。」

「あー、クーランだよ。あっ、マージでんか!」


具合が悪い女性は放って置けない。

それがまだ、少女であっても、いや、だからこそ、心配である。

タッ、と立って、止めるジェムの声を後に、サッサっと側による。


クーラン。

王都教会孤児院の13歳、花街で、もう少しでお目見えさせられそうだった、けれど今は竜樹とーさのもとふくふくと。苦海を目の当たりに、シビアな目も持ちながら、本当に好きな人と結婚できるかも、と夢をもつ少女である。

クリーム色のウェーブ髪がサラリ、顎の長さでくるりん、と膝に埋めた顔を覆っている。


「君、その、クーラン?大丈夫かい?お腹が痛いの?」

膝をついて、そっと、少女の背中から少し浮かせた手。撫でるのは、お年頃的に危ぶまれる。少女であっても女性である。勝手に触れない。


ちょっと顔を上げたクーランは、どこからどう見ても痛みに苦しんで、小さく丸まって、うぅ、と呻いた。

顔色も悪い。

「あの、大丈夫、です。病気じゃないから。」

ギュリ、と歯を噛み軋ませる。


「お腹が痛いんだろう。病気じゃない、って分からないじゃないか、待って、今、人を呼ぶから……。」

はわ、はわ、と焦る。

「お腹を壊したのかい?お菓子を食べすぎたんでもないだろうけど、何か合わないものが……。」


「病気ジャナイッ!もおぉ〜、ほっといて!」


ビッ!と言われて、囲うように触れないでいた手を振り払われて。

ガーン!なマージ王弟と、呻くクーランに、ジェムはやる男である。タタタと竜樹とーさを引っ張って連れてきた。


「どうした、クーラン。とーさに言ってみな。それともあれか、ラフィネかーさの方がいい感じの事かな?」

クーランの側にそっと屈んで、竜樹が言う。

ふにゅう〜、と真っ青な顔のクーランは、涙をつるして膝を抱えていた腕を解いた。竜樹に抱きつく。泣きつく。


「竜樹とーさ、お腹、いたいよ〜ッ。生理痛なの、病気じゃないのに、どうにもできないのに、今日、なんか、ひどくて………。」

うっ、えっ、えっ、うっ。


せいりつう。


マージ王弟が、ホワ!?としている。竜樹は落ち着き払っている。

クーランの背中をとんとんしながら。

「そっか、そっか。可哀想に、痛かったねえ。生理痛は病気じゃないって言うけど、身体が辛いんだから、痛いよって言っていいんだよ。痛いのが酷いときは、それ用のお薬も良いのがあるから、医務室のおじいちゃん先生に診てもらって、お薬もらおうね。」


あっためるのも良いんだよ、と竜樹はマントのポケットから、保温性の高い石を温めてつくられたカイロを取り出す。お腹に抱かせてやる。

廃鉱山から採られた、価値はないが長く温度を保つ石の使い道として、お試し中の品なのだ。

「これは小っちゃいから、湯たんぽもいれてもらおうね。薬飲んで、湯たんぽ抱いて、少し寝ときな。クーラン、とーさが連れてっちゃろうか。」


フニィ〜、だけれども、クーランはふにふにと弱々しく頭を振った。

「いいよ、とーさは試食のお仕事中でしょ。お薬あるんだ、よかった、良かったよう。花街のお薬は高くって、高級花のお姉さんしか飲めなかったから、さぁ。ごめんね、竜樹とーさ、お薬代かせぐから……。」


「お代の事は心配しないで。エルフの皆がいいお薬くれたから、安くできるようにつくってるとこでさ。よく効くよって広まれば、皆が協力してくれるでしょ。クーランは、お薬飲んで健康になれば、とーさの仕事の助けになるよ。」


うん、腰も痛い。

痛いよう、と泣くクーランの腰を摩ってやりながら。竜樹はジェムたちが連れてきた、お助け女性エルフに事情を説明して、医務室のおじいちゃん先生のとこへ少女を送り出した。


ポツン、と立ったマージ王弟に。

ポンポン、宥める子供の手。


「マージでんかは、けいほうき、ってやつみてーだな。痛い人とか、弱ってる人がほっとけないんだね。」


けいほうき、って竜樹とーさがこないだつくったやつ。燃えたり、壊れたり、ドロボーが入っり、とにかく危ない時にジリリリン、って鳴るんだよ。


ジェム少年は、全く的確にブッ刺す男である。



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