恋メール
実験的話です。あくまでもオマケ。
甘いです。
差出人:夏生君
件名:パネェ(゜Д゜)
20**.04.12 18:55
ちょ。訓練、想像以上に半端ない(*´Д`*)
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差出人:ちとせ
件名:お疲れ様です
20**.04.12 20:38
ゆっくり休んでください
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差出人:夏生君
件名:俺、細マッチョ!(添付画像有)
20**.05.22 20:55
風呂上がりの俺、格好よくない?
あ、写真撮ってくれたのは同期の奴だから安心して。ちとせに会う頃には、俺、腹筋割れてるかも。o(*^▽^*)o
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差出人:ちとせ
件名:別にどうでもいいんだけど
20**.05.22 23:12
今日は飲み会でした。サチさんに夏生君の写真見られた。最悪。もう、ああいう写真、送らないで!
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差出人:夏生君
件名:昨日、夜中に電話くれた?
20**.06.08 06:15
本文なし
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差出人:ちとせ
件名:間違えて押しただけ。
20**.06.08 06:55
夜中にごめん。気にしないで。
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差出人:夏生君
件名:お盆もちょっと無理かも
20**.07.31 21:50
会えないからって浮気すんなよ。
ちとせ、好きだ
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差出人:ちとせ
件名:無題
20**.08.01 05:30
おはよう。今日も頑張って。
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差出人:夏生君
件名:残暑、きつい(添付画像有)
20**.09.05 21:05
すげー真っ黒になった。ちとせは今、どんな感じ? 何でもいいから写メ送ってよ。
マジで。
お願い。
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差出人:夏生君
件名:Re:写真
20**.09.05 21:50
ちょ、左手だけって……!。゜(゜´Д`゜)゜。
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差出人:ちとせ
件名:Re:今日、残業?
20**.10.28 17:58
違うけど、何かあるの?
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差出人:夏生君
件名:いま
20**.10.28 18:00
ちとせの家の前
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「何で、いるかなぁ」
呆れたような、間延びした声が夏生の耳に響いた。ドアの前でうつらうつらしていた夏生は顔をあげて、こちらを困ったような呆れたような、何とも言い難い顔で見下ろすちとせを確認する。
(やっぱ、いいな)
随分長い間会っていなかった気もするし、ついこの前会った気もする。
だけど、流れた時間は確かで、夏生は職務という言葉の意味を知り、高校生の頃とは明らかに違った、と自分でも自覚していた。
それでも、変わらないものが目の前にある。
立ち上がり尻をほおろぐと、ちとせを見下ろす。高校生の時より随分小さく感じるのは、自分の身体の造りが変わってきたからだろう。
「ムサッ!」
「ちょっ! そこは惚れ直すとこだろ?」
眉間に皺を寄せるちとせを構わず抱き締めれば、ちとせは「図体ばかりでかくなって」と夏生の胸を押す。
久しぶりの感触に、夏生はそんなちとせの体を逃さないように強く抱き締めると、
「取りあえず中、入れば?」
と諦め半分にぼやくちとせの声が返ってきた。
「そうしたいのはやまやまなんだけど、もう帰らないと駄目なんだわ」
「は?」
ちとせが困惑を表情に浮かべる。
「明日から配属先決まって、今日はその準備日。母さんに用意頼んで、こっちに飛んできた。だから、もう帰んないとなんない」
「……そう」
ちとせが目を伏せる。その顔色に、少しばかり寂しげな色を見つけて、夏生は胸の内ごちる。
(あー、抱きたい)
その小さな手で自分の頭をかき抱いて欲しい。
欲求不満は、この半年のハードな寮生活では訓練に昇華されていったが、会えば直ぐに思い出すのだからたまらない。
耐えきれず、俯くちとせの顎に手を添えて上向かせる。
「夏生くん?」
戸惑いの色を浮かべた顔を覆うように、自分の顔を重ねる。
一番先に接触したのは互いの鼻。かするように触れて、それを合図に噛みつくようにちとせの口を塞いだ。
バンバンと、強く胸を叩かれたが、それは最初だけで、こじ開けた唇の中を舌で這えば、ちとせはこちらを睨みつけるような顔をしてから、首に手を回してきた。
トン、と背中をドアに押しつけられた。
ちとせがその小さい体からは想像つかないほどの激しさで、夏生の舌に自分のそれを絡めてくる。
(相変わらずキス、うめぇ)
16のあの当時、夏生を驚かせたちとせのキスは健在で、いったいどんな男が彼女をこんな化け物に育てたのか嫉妬する。
30まで童貞だった隼生ではないだろうが、彼はちとせのキスに嫉妬しなかったのだろうか。
随分長い間、キスをしていた気がしたが、終わってしまえば、あっという間で、夏生は名残惜しくちとせと視線を絡める。
こちらを見上げるちとせは、自嘲めいた笑みを浮かべると、
「次来たら、夏生君のこと食べるから」
と言った。
「え?」
(今、なんと?)
唖然としてちとせを見ると、ちとせはふう、と溜め息を吐く。
「消防士さんなら合コンしたらモテモテでしょ? こんなオバサン捕まえないで、早く地元に帰んなさい」
「違う! その前の科白!」
(俺のこと、食べるって言わなかったか?!)
それは、今のキスを考えればそういう意味で、ゴクリと生唾を飲み込めば、ちとせは冷ややかな目で夏生を見上げる。だけど、その瞳の奥には僅かな、今まで見たことのないちとせの色があった。
「次来たら、食べる」
何をなんてそんな野暮聞かない。ただ、嬉しくてもう一度顔を近づけたら、顎をグイッとおしやられた。
「の、望むところなんだけど!」
顎を押されながらもそうわめけば、ちとせはクスリと小さく笑ってから、
「来なくていい」
と冷たく夏生を突き放し、そのままドアの鍵を開ける。そして、夏生の脇をすり抜けて、スルリと部屋の中に入ると、振り返って夏生に言う。
「良かったね、消防士、なれて」
ふんわりと、嬉しそうに微笑まれて、くそ、と思った。
(そういう笑顔残して、どうやって、余所見しろってのさ)
「必ず、来るから」
「期待してない」
「じゃ、また」
「……ん」
最後は手を振るだけだったちとせが、断ち切るようにドアを閉める。
見送ってくれてもいいのに、とも思ったが、見送れなかったのかもしれない。
夏生はニヤつきそうになる顔を必死に堪えながら、駅へと向かう。
そして携帯を取り出し、ちとせにメールを打ち始めた。
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差出人:夏生君
件名:今日、
20**.4.12 05:25
生理?
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差出人:ちとせ
件名:朝一から、何聞いてくんの、変態
20**.4.12 06:00
違うけど、頭大丈夫?
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差出人:夏生君
件名:良かった
20**.4.12 06:05
確認する前に始発、乗ったから。
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「ちとせ、ただいま。食べられに来たよ」
以上、番外編でした。
ご覧くださり、ありがとうございました。




