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『岳飛伝』  作者: RiHakuun
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四十

紹興府の雍和殿前では、炸裂する花火が雲を照らし、まるで広場の上空に漂う朝霧まで追い払うかのようだった。方形の広場を囲むように、壁際には正装した内侍官と刀を携えた護衛兵が並び、広場の中央には円丘と、その周囲を巡る環状の祭壇が設けられていた。

銅鑼と太鼓が一斉に鳴り響き、九たび起こっては九たび止む。円丘の中央では、宋国皇帝・趙構が両膝をつき、中国の使者・蕭毅の足元に平伏していた。解放されたばかりの宋国使臣・王倫と魏良臣も、趙構とともに跪く。祭壇上の宋国の官員たちは、揃って立ち上がった。

蕭毅は副使の邢具瞻から巻物を受け取り、詔諭を読み上げた。趙構を「宋帝」に冊封する詔である。

趙構は両手で冊封書を捧げ持ち、頭上高く掲げた。

「臣、趙構、中国皇帝の詔命を謹んで拝聴し、恐懼に堪えず、また深く感激しております……臣、謹んで中国皇帝の命に従い、謹んで臣節を受け……江南を治め、もって君恩に報い……もしこの誓いに背くことあらば、明神の誅罰を甘んじて受け、命を落とし、氏を亡ぼし、その国家を滅ぼすも悔いません」

言い終えると、冊封文書を王倫に渡し、今度は王倫から誓表を受け取り、蕭毅へ差し出した。

冊封の儀式が終わると、蕭毅は、自分たち使節団は急いで中国へ戻らねばならないと言った。

趙構は何度も引き留め、夕食をともにしていくよう勧めたが、蕭毅は固く辞退した。

「お手数ですが、宋帝には我々を護衛して国境まで送り届けていただきたい」

蕭毅は言った。

「帰国の途中で、また乱を起こす紅軍に出くわすのではないかと心配でしてね――紅軍がいなくても、中宋両国の友好関係を陰謀によって破壊しようとする賊は、決して少なくありませんから」

趙構はしばらく黙り込んだ。王倫に声を掛けられてようやく我に返り、

「分かった。朕が一万の兵を選抜し、蕭相公を国境まで護送させよう」

と言った。

趙構は、儀式を見守っていた韓世忠、岳飛、張俊、劉琦を呼び、四人に兵を動かすための虎符を差し出すよう命じた。

四人の将軍は、呆然と顔を見合わせた。

「どうした? 嫌なのか?」

蕭毅が言った。

「皇上がお前たちの虎符を求めている。聞こえなかったのか? 念のため言っておくが、趙構は我が中国によって冊封された、正統なる明君だ。誰であれ、彼の面目を潰すことは、我が中国の面目を潰すことになるぞ」

「虎符は一時借りるだけだ。後でお前たちに返す」

趙構が言った。

韓世忠が懐から虎符を取り出し、趙構に渡した。張俊もそれに倣う。岳飛と劉琦は顔を見合わせた後、同時に虎符を差し出した。

趙構は四枚の虎符を秦桧に渡し、枢密院へ命令を下すよう指示した。韓家軍、張家軍、岳家軍からそれぞれ三千騎兵、劉琦の軍から一千騎兵を抽出し、中国使節団を国境まで護送させるのである。

蕭毅の使節団は紹興府を出て洪沢を経由し、何事もなく中国へ帰還した。

使節団を護送した一万の騎兵が紹興府へ戻るや否や、そのまま殿前軍に編入され、楊沂中の指揮下に置かれた。

趙構は臨安府へ行在を移し、韓世忠、張俊、岳飛の三人にも同行するよう命じた。三人に驚きの贈り物があるという。

臨安府へ北上する途中、三人の大将は、皇上がいったいどんな「驚き」を用意しているのか考えた。

岳飛は言った。

「もし皇上が突然手のひらを返し、禁軍に命じて我々を滅多斬りにさせたら、俺たちは手も足も出ないぞ」

韓世忠は言った。

「官家が俺たちを殺すつもりなら、とっくに殺している。わざわざ臨安へ呼びつける必要がどこにある?」

張俊は言った。

「俺はただ、驚きが恐ろしい驚きに変わらないか、それだけが心配だ」

臨安府に到着してみると、驚きは本当に驚きだった。

趙構は詔を下し、三人の将軍を昇進させたのである。

韓世忠と張俊は枢密使に、岳飛は枢密副使となった。

臨安城で最も豪華な「満月楼」の個室で、岳飛は韋小宝に胸の内を打ち明けた。

「これから俺が兵を動かしたければ、枢密院と官家の許可を取らなきゃならん――俺の虎符だって、官家はまだ返してくれない。それなのに、もっと腹が立つのは、俺を副使にしたことだ! 副使だぞ! 俺が韓世忠や張俊に劣るとでもいうのか? 今度、官家に直接問いただしてやる。でなきゃ、この胸のつかえは収まらん」

「権力が大きくなれば、責任も大きくなる。官家が兵権を取り上げたとき、責任だって一緒に下ろしてくれたんじゃないのか?」

韋小宝は岳飛の手から酒袋を取り上げた。

「鵬挙、俺の言うことを一つ聞け。早く臨安を離れろ。遠ければ遠いほどいい。今のお前なら、食うにも着るにも困らないだろ――将軍として稼いだ金だけで、何代も食っていけるんじゃないか? 広南西路にも家を買ったんだろ? だったら広南西路へ逃げて、しばらく風当たりを避けろ。『火色上騰すといえども数あり、急流に勇退する者、あに人なからんや』だ」

「小宝、お前、何をでたらめ言ってるんだ?」

岳飛は酒袋を奪い返し、「ごくごく」と黄酒を一袋丸ごと飲み干した。

「鵬挙、実を言うとな、俺がお前のために一卦占ってみたんだ。お前の大運はもう尽きている。いわゆる『時遷りて大運去り、龍虎の勢い休む』ってやつだ。自分のために、ちゃんと逃げ道を用意しておけ」

韋小宝は言った。

「絶対に好機を逃すなよ。後になって、『身後に余りあれば手を縮むるを忘れ、眼前に路なければ頭を回らす』なんて嘆くことになるぞ」

「小宝、今日はもう、その紫微斗数とやらの話はよせ。お前と俺は兄弟同然だ。さあ、俺と一緒に、とことん酔おう」

岳飛は店員を呼び、「女児紅」を二甕持ってこさせた。甕の口を抱えるようにして豪快に飲み始める。韋小宝が止めても、まったく聞く耳を持たなかった。

一刻ほど経つと、一滴も酒を口にしていない韋小宝は、岳飛が正体もなく酔いつぶれるのをただ見つめていた。

個室に一人の男が入ってきた。韋小宝には岳府の家僕だと分かった。

「岳相公、ようやく見つけました。皇上がお召しです」

家僕が言った。

岳飛は上半身を酒卓に伏せたまま、微動だにしない。

「何があった?」

韋小宝が家僕に尋ねる。

家僕は声を潜めた。

「皇上のご命令です。岳相公の官職を罷免するそうです」

韋小宝は慌てて宮中へ駆け込んだ。

そこで事情を知った。

この日の朝議で、殿中侍御史の羅汝楫が一通の白簡を提出し、岳飛を「軍糧を貪り取り、軍の統制を厳正に行っていない」と弾劾したのである。

岳飛は停職となり、事件は吏部に調査を命じられた。吏部は二十数名の官員を岳府へ派遣し、岳飛を事実上軟禁した。

張俊は韋小宝を慰めた。

「『軍糧を貪り取った』なんて、根も葉もない言いがかりだ。卵の中から骨を探すようなもんだ。銅銭一文を盗めば贪りだし、銀一千万両を盗んでも贪りだ――大宋の軍官で、自分は軍糧を一度もかすめ取ったことがないと言い切れる奴がいるか? 俺、張俊が真っ先に異議を唱えてやる」

秦桧も韋小宝を慰めた。

「岳飛の事件を吏部に任せたということは、事件の性質はそれほど重大ではない。岳飛は人臣の極みにまで昇った男だ。吏部の官員たちは誰も彼より官位が高くない。まともに調べられるはずがない。私の見るところ、お前の幼馴染に何も起こらんよ」

長年、官界の浮き沈みを見てきた秦桧の読みは、実に正確だった。

岳飛に対する調査が始まって十三日目、吏部尚書は一通の奏札を書いた。

岳飛の「軍糧を貪り取った」という件には確たる証拠がなく、事件を結審すべきだ――という内容だった。

韋小宝は大喜びで岳府へ祝いに駆けつけた。

ところが岳府の家僕は言った。

「韋相公、来られるのが少し遅かったようです。ついさっき、凶悪な面構えの官差どもが屋敷へ押し入り、何の説明もなく岳相公に枷をはめ、そのまま御史台配下の城北監所へ連れていきました」

韋小宝はあまりのことに顎が外れそうになった。

「いつの話だ?」

「たった今です」

韋小宝は岳府の隣にある車馬屋から汗血馬を一頭借り、城北監所へ駆けつけた。

だが、そこには岳飛の姿はなかった。

岳飛は監所へ入ったばかりで、まだ登録手続きすら終わっていない。そのところへ内侍官がやって来て皇帝の口諭を伝え、岳飛を大理寺へ移して審理を待たせることになったのだ。

夕暮れには宮門が閉ざされた。あと一刻もすれば臨安城にも夜間外出禁止令が出る。韋小宝は捕まらないうちに慌てて家へ戻った。

その夜、一睡もできなかった。

翌朝、街の鶏が鳴くより早く、韋小宝は身支度を整えて皇門へ駆けつけ、その日の一番乗りで宮中へ入った。

岳飛が大理寺へ送られた理由は、謀反事件に巻き込まれたからだった。

「汚職など小事だ。謀反こそ大事だ」

韓世忠は韋小宝に言った。

「お前の幼馴染は、どうやら命が危ないぞ」

韋小宝は、腹の底から後悔しながら言った。

「韓相公、隠し立てはしません。俺は岳飛の運命を占ったことがある。あいつの命には、もともとこの一難が刻まれていたんです」

「そうなのか? 『すべては運命、少しも人の力にはならぬ』――古人の言葉は、まことに嘘ではないな」

韓世忠が言った。

だが韋小宝が口にしなかったことがある。

彼はすでに決意していた。

運命の神と戦い、天に逆らってでも命を変えてやる――自分、韋小宝の運命ではない。

岳飛の運命を。

どれほどの代償を払うことになろうとも。

運命の神との戦いは、決して容易ではなかった。

謀反事件の主な容疑者は、岳飛の息子・岳雲と、岳家軍副都統制・張憲だった。

張憲の配下に王俊という男がいた。彼は鎮江枢密行府に告発し、岳雲が張憲に岳飛直筆の密書を渡したと証言した。

その密書には、張憲に対して完顔宗弼が鄂州へ侵攻したと偽って報告し、朝廷を脅かして兵権を取り戻せ、と指示してあったという。

しかも王俊によれば、その密書はすでに張憲によって焼却されていた。

「まったくの濡れ衣じゃないか!」

韋小宝は秦桧に言った。

「一番重要な物証を出せないんだぞ。口先だけで人を陥れている!」

「物証は出せなくても、人証はいる」

秦桧が言った。

「行営後護軍十二名の将領のうち、九名――董先、庞栄、徐慶、李興、李道、傅選、姚政、王貴、王俊――が署名し、押印して、この件が事実だと証言している」

「きっと口裏を合わせたんだ」

韋小宝は言った。

「みんなで俺の幼馴染を陥れている! こんな話、どこにも道理がない!」

「小宝、お前がこの件をどう見るかは重要ではない。肝心なのは、官家がどう見るかだ」

秦桧は言った。

「そもそも、この事件の主な容疑者は岳雲と張憲で、岳飛は巻き込まれただけだった。最初、官家は岳飛まで追及するつもりはなかった。ところが、楊沂中が横から口を挟み、どうしても岳飛を拘束しろと言い出した。

『淮西の戦いでは、私の殿前軍三万の兄弟が完顔宗弼と死闘を繰り広げた。もし岳飛が兵を率いて救援に来ていたなら、三万の殿前禁軍が全滅することなどなかったはずです。岳飛が見殺しにして傍観していなければ、柘皋の戦いも、どうして初めは勝って後に敗れるようなことになりましょう』

――楊沂中はそう言った。

「官家はこう答えた。

『韓世忠だって、何日も遅れて兵を出したではないか? 本気で追及するなら、韓世忠だって牢に入れねばならんではないか。今となっては、諸将の兵権もすでに国に取り戻した。過ぎたことは過ぎたことにしよう。岳飛には岳飛なりの苦衷があった。朕には分かっている』

――官家がそこまで言ったというのに、楊沂中は引き下がらなかった。

『皇上が寛大なお方であること、臣には到底及びません。ただ……』

そう言って、楊沂中は言葉を濁した。いかにも思わせぶりな態度だった。

官家が『続けて申せ』と促す。

『皇上、覚えておられますか――』

『何をだ?』

『皇上、かつて兄君が北国へ連れ去られたとき、当時天下兵馬大元帥であった皇上に密書を送り、救援の兵を出してほしいと願われました。それなのに皇上は兵を動かさなかった。恐れながらお尋ねします――そのとき皇上には、どのような苦衷がおありだったのでしょう? そのとき、皇上は何を考え、何を思っておられたのでしょう?』

――小宝、お前はその場にいなかったから知らないだろう。あのときの官家の顔を見ていない。

私は見た。

官家の目に浮かんだ、あの殺意を。

私は、楊沂中もそこで口を閉ざすものと思っていた。

ところが、あいつはさらに言った。

『皇上、あのとき皇上が何を考えていたのか――淮西の戦いで、勝敗を傍観していた岳飛も、同じことを考えていたのではありませんか』

「そこで官家は、特別に詔獄を設け、岳飛を大理寺へ移すよう命じた」

「終わった……もう、全部終わりだ……」

韋小宝は声を上げて泣いた。

「運命の網が、こんなにも早く迫ってくるなんて……」

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