三十四
「そっと運べ、そっと!」
岳飛は腰に両手を当て、二人の裸身の大男に指図した。
「わざわざ大理国から買い入れた漢白玉だ。壊したら、お前たちには弁償できんぞ」
二人の大男は腰をかがめ、細長い玉石を持ち上げて、同じ材質の石の上に置いた。それから膝をつき、目測で水平を合わせていく……。
石段の先には、白玉で造られた墓がある。
ここは三方を山に囲まれ、果てしなく密林が続いていた。北西側は視界が開け、山麓の小さな町を一望できる。南東には廬山の主脈がはっきりと見えた。
牯嶺の山腹にしばらく立っているだけで、韋小宝は心が晴れやかになり、胸のつかえがすっかり消えていくのを感じた。
斜面に積もった腐葉土はきれいに掃き清められ、赤黒い山肌がむき出しになっている。まるで大きな傷跡のようだった。
百人余りの木工、左官、石工がその傷跡の上を行き来し、岳飛の母のために墓所、石像生、祠堂、儀門、東屋を造っている。何隊もの衛兵が周囲を巡回していた。
山腹では、四人の衛兵が一人の老人を取り囲み、双方が言い争っていた。
「何を騒いでいる?」
岳飛が尋ねた。
近隣の郷耆だと名乗る老人が尋ね返した。
「岳元帥、誰の墓を造っているんです? こんなところに墓を造ることを、朝廷はお許しになったんですか?」
「皇上がお許しになった」
岳飛が答えた。
「俺の母の墓だ。母は一生苦労ばかりして、何一つ楽をしていない。俺にできる親孝行は、死んでから尽くすことくらいだ」
「親孝行は結構なことです」
老人は言った。
「だが――お母上の墓、この場所はちょっとまずいんですよ」
「何がまずい? 風水師にも見てもらった。ここは『臥虎舐尾』。風水の吉地であり、龍興の地だ」
「そんなこと、誰だって知っていますよ! あの村が見えるでしょう? 李家渡といいます。李家渡の人がこれほど繁栄しているのも、この吉地のおかげなんです」
老人は地団駄を踏み、歯を食いしばって言った。
「ところが今度は、あんたがここに棺墓を造る。風水ではこれを『騎虎借運』というんです。借りる運はどこから来ると思います?
俺たち李家渡の町じゅうの人間からですよ!
一家が栄えれば、万戸が衰える。
将軍、将軍、道理をわきまえてくださいよ。
人間、道徳に背くことをしちゃいけないでしょう!
お母上の棺を置く場所なら、別のところを探してください」
「じゃあ、お前の棺を置く場所を俺が探してやろうか?」
岳飛は拳を振り上げた。
韋小宝が慌てて岳飛の腕をつかんだ。
「郷人相手に本気になるなよ」
そう言って岳飛を山の下へ引っ張っていく。
岳飛は振り返り、老人に怒鳴った。
「文句があるなら御状を出しに行け! ここは皇帝が俺、岳飛に下賜した土地だ!」
山麓には一つの池があった。
水面には蓮の葉が一面に浮かび、水面から伸びた蕾は今にも花開きそうだった。
「小宝、お前はどう思う? これだけ大がかりに工事をしていたら、母上を驚かせてしまわないだろうか?」
岳飛は、山腹で盛んに続けられている工事を指差して言った。
「死んだ後のことなんて、誰に分かる?」
韋小宝が答えた。
「数日したら、東林寺と西林寺の僧侶を呼んで、母上のために法事をしてもらうつもりだ」
「鵬挙、お前は本当に出世したな!
廬山の吉地に墓を造るなんて、帝王並みの待遇だ。
外で岳家軍の名を口にして、知らない奴なんているか?
俺は官家が何度も言っているのを聞いたぞ。
『天下の社稷は、韓家軍、張家軍、劉家軍、そして岳家軍が支えている』ってな」
「韓、張、劉、岳……俺の岳家軍は人数が一番少なく、実力も一番弱い」
「人数が少ないからといって、実力まで弱いとは限らない。
中国の軍隊だって人数はそれほど多くないのに、一人で百人を相手にするほど強くて、大宋軍を泣いて逃げ出させている。
ところで、鵬挙。一つ忠告しておきたい……忠告しておきたいんだが……」
「もったいぶるな。言いたいならさっさと言え」
「親友として言っておく。軍を増強して実力を高めるだけじゃなく、自分の評判にも気を配ったほうがいい」
韋小宝は言った。
「今のお前は朝廷の重臣だ。一挙手一投足を無数の目が見張っている。行動は慎重に、目立たないようにしたほうがいい。
朝廷の中には、お前を傲慢で横暴だと言う官員が少なくない。それに、民衆の岳家軍に対する印象もあまりよくない。
一つ小さな話をしてやろう。
江州へ来る前、俺は建康の街で朝飯を買った。すると店に、ある料理があった。
何という名前だったと思う?
『油炸飛』だ。
しかも、買う奴が結構いた。
建康の民が、お前をどれだけ憎んでいるか分かるだろう?
民衆は朝廷の苛酷な税や雑役まで、お前のせいにしている。お前たち軍閥が民の口から飯を奪っている、と言ってな。
鵬挙、お前は歴史に美名を残すべきだ。
後世まで悪名を残すのが、お前の運命じゃない」
「南蛮の連中が排他的なだけだ。好きなだけ罵らせておけばいい」
岳飛は言った。
「太学院のあの太学生どもと同じだ。朝廷が連中の思い通りにすれば罵る。思い通りにならなくても罵る。役立たずの読書人の集まりじゃないか。
民衆? 民衆ならなおさらだ。
太学生だって何年かは本を読んで、多少は道理を知っている。
だが、ただの民衆、無学な民衆に、国家の大事が分かるものか。
戦をするのに軍隊は要らないのか? 軍隊を養うのに飯は要らないのか?」
「言ってることは分かる。だが、結局、人の噂というのは恐ろしい。
鵬挙、戦場で首を飛ばし、血を流すことならお前の得意分野だ。俺には口出しできない。
だが――お前は人を血も流さず殺す、世論戦をやったことがあるか?」
「世論戦?」
「韓世忠を見てみろ。
韓世忠が自分をどう演出しているか、知っているか?
戦がない時、韓世忠はよく儒服を着て儒冠をかぶり、大声で『孟子』を朗誦する。
あれはどう見ても、人に見せるための芝居だ!
しかも、韓家軍に『仁者無敵』という軍号までつけた。
『仁者無敵』だって?
笑わせるよな!
一番多く戦って、一番多く人を殺しているのは、あの韓家軍だ」
韋小宝は言った。
「だが、ここで注意しろ。
俺のような事情を知っている人間からすれば、韓世忠は偽善者で滑稽な奴だ。
ところが、一般の民衆は韓世忠をどう見る?
『仁者無敵』という掛け声に、本当に騙されるかもしれない。
さらに言えば、皇上だって韓世忠の表面だけを見て騙される可能性がある。
世論戦、世論戦――これが世論戦ってやつだ。
お前もやらなきゃならない。
でなければ、必ず損をする」
「どうやる?」
岳飛が尋ねた。
「酒は香れども巷が深ければ知られず、ってやつだ。
お前も岳家軍に軍号をつけろ。
韓世忠が一つなら、こっちは二つだ。
『凍死しても家屋を壊さず、餓死しても略奪せず』――これはどうだ?
それから、『山を揺るがすのは易いが、岳家軍を揺るがすのは難しい』も悪くない。
ただ、自画自賛が過ぎるから軍号には向かない。
これは全軍のビジョンにしておけ。岳家軍がそこへ向かって努力しているという意味でな。
それから、お前自身の人物像も作らないといけない」
韋小宝が言った。
「人物像を作る一番いい方法は、物語を広めることだ。
岳飛、お前、何人か人を使って噂を流せ。
子供の頃、お前の母親がお前の背中に『精忠報国』の四文字を刺青した――そう言わせるんだ」
「それはちょっとまずくないか?」
岳飛は白玉の墓と、すでに基礎工事を終えた岳母祠堂を遠く眺めた。
「母上は字が読めない。まして刺青などできるはずがない」
「お前の母親はもう死んでる。証人はもういない」
韋小宝は言った。
「一、二百年も経てば、お前の母親のことを誰が覚えている?
後世の歴史家がどんな連中か知ってるか?
ただ飯を食っているだけのろくでなしどもだ。
後世の話だけじゃない。今、一番流行っている本が何か知ってるか?
話本の『靖康稗史』だ。
――実際にはただのエロ本だ。
金の太祖が金兵を率いて汴梁城に入り、焼き、殺し、略奪し、十数万人の宋人を殺し、城内の女を片っ端から犯した、八十歳の老婆も七、八歳の少女も容赦しなかった――そんな話を書いてある。
靖康元年からまだ何年しか経っていない?
俺みたいな当事者がまだ生きてるんだぞ。
それなのに、あいつらは平気でそんなデタラメを書く。
デタラメを書くのはいい。
だが、本当に信じる奴までいる。
あと十年もすれば、学のないろくでなしの史官が、こういうエロ小説を本当に起きた歴史として書くかもしれないぞ」
「話がそれた、話がそれた。
岳飛、朝廷の文官たちはお前への印象がよくない。
だから連中を味方につけろ。近づいて、親しくしておけ」
韋小宝は岳飛に一枚の笺紙を渡した。
「ここに一首、詩がある。暗記しろ。そして、自分で作ったと言えばいい」
「『満江紅』?」
岳飛は小声で詩全体を読み終えると、言った。
「賀蘭山は黄河の北、中国の領内にある……黄河の南にいる劉豫ですら、俺はまだ打ち破れない……」
岳飛は首を横に振った。
「『靖康の恥』というのもおかしい。
民衆が『靖康の恥』と言うなら理解できる。
だが、俺は朝廷の官員だ。『靖康の乱』を『靖康の恥』なんて呼んだら、官家に直接引き裂かれるぞ。
『壮志饑餐胡虜肉、笑談渇飲匈奴血』の二句は悪くない。俺は実際に金兵の血を飲み、金兵の肉を食ったことがある。
全体としては、まあ普通の詩だな。
小宝、お前は誰に捉刀させて、この偽作を作らせた?」
「宣伝なんだから、そんなに真面目に考えるなよ。
民衆に詩の出来なんて分かるもんか?」
韋小宝は言った。
「後世のろくでなしの史官に、それが本当にお前の詩かどうかなんて分かるものか?
仏典だって偽造する奴がいるんだ。
『老子化胡経』だの『首楞厳経』だの、どれだけ愚かな人々を騙してきたと思う?
俺たちが一首、偽の詩を作ったくらいで何が悪い?
鵬挙、お前は――やっぱり正直すぎるよ」
気温は日に日に上がっていった。
岳飛の母の墓地と、その周辺の祠堂、牌坊、東屋はすべて完成し、牯嶺東谷に建てられた豪華な別荘も、まもなく棟上げを迎えようとしていた。
五老峰で避暑していた岳飛のもとへ、金字牌の急脚逓で御筆の手詔が届き、建康へ赴いて会議に出席するよう命じられた。
武将の韓世忠、張俊、劉光世はすでに建康に到着しており、岳飛が最後の参加者だった。
噂によれば、趙構は風邪をこじらせて集英殿で静養しており、この半月ほど姿を見せていない――会議は右相の張浚が代わりに主宰していた。
張浚は四人の将軍に茶を勧めた。
彼らが茶碗を置くのも待たず、口を開いた。
「劉光世将軍。去年九月、劉豫が十万の郷兵を率いて淮西を攻めた。
お前は城を捨てて逃げた。戦わずに逃げた。
俺はお前を無実の罪で責めているか?」
「張宰相、物を言う前に少し頭を使ったらどうです?」
劉光世は唇を尖らせ、青い茶葉を一枚吐き出した。
「劉豫は十万の大軍を率いて攻めてきた。
俺の淮西軍は何人いたと思う?
たった五万だ。
ここにいる将軍の皆さん、こんな状況ならどうします?
五万で十万を相手にして、逃げない?
死にに行けっていうのか!」
韓世忠が言った。
「兵法に、『少なければこれを逃がし、及ばなければこれを避ける』とある」
劉光世は片手で卓を叩いた。
「張浚、お前が俺を戦わずに逃げたと言う。それは認める。
だが、俺が言いたいのは別のことだ。
お前が他所から呼び寄せた援軍は、劉豫と戦いに行ったのか?
岳飛。
荊湖南路は俺の防区に隣接している。
お前は岳飛を淮西へ派遣したか?
あいつは行ったのか?
劉豫は淮西に二か月もいた。
岳飛、お前が岳州から淮西まで歩いて行ったとしても、二か月はかからないだろう?
張宰相、俺が知らないと思うなよ。
岳飛はお前の腹心の大将だ。
だからお前はわざとあいつを庇って、全部の泥を俺一人にかぶせようとしているんだ!」
「劉光世!」
張浚は拳を握り、卓を激しく叩いた。
「今議論しているのはお前の問題だ。そこらじゅうに汚水をまき散らすな!
劉光世、お前が酒色に溺れ、国事を顧みないことは、すでに悪名高く知れ渡っている!
朝廷では、お前に『休戦将軍』というあだ名までつけている。
お前の劉家軍を『休戦軍』と呼んでいるのも知らないのか?
朝廷の面子を、お前はすっかり潰してしまったんだ!」
「『休戦軍』の何が悪い?
俺は、なかなかいい名前だと思うぞ。
それに、朝廷の面子を潰しているのは俺一人か?
ここにいる皆さん、いったいどの戦いで朝廷の面子を立てたんだ?
言ってみろよ」
劉光世は言った。
「今日の会議には、右護軍の呉玠将軍だけが来ていない。
前護軍、後護軍、中護軍、左護軍――その指揮官はみんな揃っている。
なのに張宰相、お前はどうして俺だけを責める?
どうして俺だけを狙い撃ちする?
これは党派を組んで異分子を排除してるってことだぞ、分かってるのか?!」
劉光世の顔は真っ赤になり、胸が激しく上下していた。
「俺が、お前を狙っていると思うのか?」
張浚は言った。
「はっきり言ってやる。
皇上がお前を気に入らないんだ!
皇上がお前を狙っている!」
「皇上……皇上……」
劉光世の目に、一瞬、困惑とためらいが浮かんだ。
「その通りだ」
張浚は顎を上げた。
「皇上のお考えは――お前の官職を罷免し、兵権を取り上げることだ」
「分かった。いいだろう」
劉光世は腰帯から銅色の虎符を外すと、無造作に卓上へ放り投げ、立ち上がった。
虎符は滑って、向かい側に座っていた張俊の前まで転がった。
張俊は顔を上げ、宰相の張浚を見た。
「行営左護軍将軍の座は、やりたい奴が勝手にやればいい」
劉光世は議事堂の入口へ二、三歩歩いたところで振り返り、張浚に言った。
「ついでに、俺の節度使の肩書きまで取り上げたらどうだ?」
張浚は一言も答えなかった。
ただ、顔に硬い笑みを浮かべていた。




