三十
曹成が投降した。
彼とその匪軍は韓世忠の指揮下に編入され、神武左軍へ組み込まれることになった――秦桧の昔からの友人で、明州に家を買って定住している常姓の殿侍御史が、わざわざ臨安府から慈渓県までやって来て、秦桧にこの知らせを伝えたのである。
その頃、秦桧と韋小宝はそれぞれ竹籠を背負い、裸足に裸身で、でこぼこした干潟を歩きながら潮干狩りをしていた。
「今や、この国が頼みにできるのは、劉光世、韓世忠、張俊の三人の武将だけです」
常御史が言った。
「常相公、このワタリガニを三匹、持って帰って家で煮てください」
秦桧は言った。
「きっと蟹味噌がたっぷり詰まっていて、抜群にうまいですよ」
「秦相公、韓世忠が曹成を降伏させたことで、官家は大喜びですよ。韓世忠を殿中に召し、御筆を贈ったり、弓を下賜したりして、大いに褒めたそうです」
「朝からせっせと拾って、巻貝や牡蠣を少しばかり集めました。全部持って帰ってください」
秦桧は肩から竹籠を下ろし、常御史に差し出した。
そして振り返ると、小さな鉄鍬を手に、高低のある足取りで海へ向かって歩いていった。
泥のついた海産物が一杯入った籠を抱えた常御史は、その場に立ったまま、遠ざかっていく秦桧を見つめていた。
「曹成が匪賊となって乱を起こしていた場所は、劉光世の管轄じゃなかったんですか? だったら、劉光世の寧武軍に編入されるべきじゃないんですか?」
韋小宝が尋ねた。
「韋相公、あの連中の気性を知らないでしょう。匪賊というのは気分と意地で動き、好き勝手に振る舞うことに慣れている。もし朝廷が、連中の気に入らない人物を上官に任じたりしたら、とんでもない騒ぎになります。
劉光世は名門の出身、公卿の子です。曹成とはそりが合わないでしょう。
その点、韓世忠は違う。韓世忠は卑しい身分の出で、同じように草の根から成り上がった曹成と、どう付き合えばいいのかを知っている」
常御史は韋小宝を引き止め、声を低くした。
「それより、私はどうも最近、秦相公の様子がおかしいと思うんです」
韋小宝は言った。
「絶望したんですよ。秦相公は完全に絶望してるんです。あの一件からもう一年以上経ったとはいえ……考えてみてくださいよ。天下の頂点に立つ宰相だった人間が、一夜にして庶民に落とされたんですよ。あなたなら耐えられますか?」
「秦相公が生活で何か困っているなら、遠慮なく私に言ってください。朝廷には彼に同情して、力を貸したいと思っている人間が大勢います」
常御史を見送ると、韋小宝は秦桧のもとへ戻った。
養父は何度も腰を屈め、干潟に打ち上げられた魚や海老を拾っては、水の中へ戻している。
韋小宝には意味が分からず、その理由を尋ねた。
「太陽の下に長くさらされていたら、小魚は生きられなくなる。だから、ついでに命を一つ救ってやっているんだ――お前の籠に入っている海産物で、俺たち三人には十分だ」
秦桧は言った。
「人間、あまり欲張っちゃいかん」
「こんなにたくさん打ち上げられた小魚を、全部助けられるんですか? 『天地は仁ならず、万物を以て芻狗と為す』って言うでしょう。天の神様は、小魚や小海老が死のうが生きようが、気にしちゃいないですよ」
「小宝、李耳のこの二句を、お前は取り違えている。『不仁』というのは、『えこひいきしない』という意味だ」
秦桧は手のひらほどもある黄魚を一匹拾い上げた。
黄魚の全身は銀色に輝き、尾びれが絶えず揺れている。
「この魚は、自分の生死を気にしている」
そう言って秦桧は、何気なく魚を放り投げた。
黄魚は波間へ飛び込み、姿を消した。
韋小宝が尋ねた。
「『南は南へ、北は北へ』と一言言っただけで官家の逆鱗に触れて、官職を奪われて処分された。正直に言って、後悔したことはありますか?
俺は知っています。あなたの本心は悪くなかった。天下を安定させ、民が軍閥に苦しめられないようにするためだった。
でも、考えたことはありますか?
民というのは、あなたに救われるのを待っている小魚とは限らない。凍えて動けなくなった毒蛇かもしれない。
蛇を温めてやったら、逆に噛みつかれることだってある」
秦桧は微笑んだが、何も答えなかった。
ただひたすら魚や海老を拾い上げては、海へ投げ戻していた。
臨安府から一家で慈渓県へ移り住むことを決めたのは、秦桧だった。
韋小宝も王媽媽も異論はなかった。
王媽媽は、臨安府城東区にある、五間の部屋に二間の脇部屋までついた大きな屋敷を手放すのが惜しかった。
その屋敷は、当時宰相だった秦桧が、戸部の下部機関である臨安府楼店務に申請して借りた公営住宅だった。
家賃は月二百枚の銅銭。
相場よりはるかに安かった。
秦桧が趙構に罷免された翌日、楼店務の監官が家まで来て、立ち退きを迫った。
秦桧は一か月だけ猶予をくれ、新しい借り手を探すまで待ってほしいと頼んだ。
だが監官は一歩も譲らなかった。
「今すぐ出ていけ。さもなければ役所に報告して牢へぶち込むぞ」
と、ものすごい剣幕で秦桧を脅した。
王媽媽は脇部屋に隠れて涙を拭った。
「虎の威を借る狐ね。あなたがもう二度と官職に戻れないと分かっているから、あんなふうにいじめるんだわ」
秦桧は監官をかばった。
「彼も規則に従っているだけだ」
秦桧一家三人は、家具を満載した牛車に乗り、臨安府を離れた。
御者の老人は秦桧が前の宰相だと知ると、どうしても車代を半額しか受け取らないと言った。
「暇ができたら、また臨安へ遊びに来てくださいよ」
老人は言った。
「生きているうちは、もう来ることもないでしょう」
秦桧は答えた。
「臨安、臨安……いっそのこと『永安』と改名したほうがいいんじゃないですかね」
引っ越し費用は韋小宝が負担した。
彼は劉光世から贈られた黄金を両替商へ持ち込み、為替手形と細かい銀に換え、すべて身につけて保管した。
その金を頼りに、三人は慈渓県で三部屋の小さな家を借りた。
半年あまり暮らした頃、食いつぶしていくことを心配した王媽媽は、昔やっていた養蚕と機織りの仕事を再開した。
糸車も韋小宝が金を出して買ったものだ。
秦桧は私塾の先生になり、子供たちに教えて暮らした。暇なときには、自分で描いた書画を売って家計の足しにした。
三人はまた、家の前の土地を開墾して小さな菜園を作り、里芋や季節の野菜、果物を植えた。
時には秦桧が韋小宝を誘い、老いた養父と若い養子の二人で海へ出て、海の幸を拾って食卓を賑わせた。
「科挙を受ける前は、試験勉強に追われ、学問を身につけることに励んだ。及第した後は、官職に追われ、国を治めることに励んだ。心身ともに疲れ果てても、衣食には困らなかった。
だが、こうして自分で畑を耕すようになって初めて、物資を得ることの難しさが分かった」
秦桧は言った。
秦桧が罷免されて三年目、晩春のある日。
韋小宝は自家製の里芋を一袋抱えて菜市場へ行き、露店の場所を一つ確保した。
さて売ろうとしたところ、隣でぼさぼさの髪に薄汚れた服を着た大叔父ほどの男に、どこか見覚えがあることに気づいた。
「叔父さん!」
韋小宝が男に声をかけた。
「韋小宝?」
王継先が言った。
「よく来たな、いい甥っ子よ。何年ぶりだ? それなのに、顔が少しも変わっていないじゃないか! そうか! お前は官職に就いて、何不自由なく暮らしているから、老けにくいんだな――小宝、叔父さんに少し金を貸してくれ。来年返すから」
韋小宝は言った。
秦桧が趙構に官職を奪われたとき、自分も巻き添えになって罷免されたのだと。
「叔父さん、俺だって今は惨めな暮らしなんですよ。余分な金なんて一文もない」
そして韋小宝は、叔母が死んだことも伝えた。
王継先は、
「ああ……時の運だ。命の定めだ」
と嘆いた。
そして続けた。
汴梁で別れてから、彼は斉と宋の両国を行き来して薬材を売買していたが、いつも兵や匪賊に道を襲われ、商売は儲けより損のほうが多かった。
近頃は体力も衰え、長旅には耐えられなくなった。
そこで各地を転々とし、露店を出して先祖伝来の「黒虎丹」を売り、どうにか食いつないでいるという。
「小宝、お前の幼馴染――岳飛のこと、覚えているか? 子供の頃、何度かうちへ来たことがあるだろう」
王継先は言った。
「今じゃ五品官になったんだぞ! 二万人を率いているんだ! 二万人の兵士が一日に食う飯の量を考えてみろ。大餅や米をどれだけ食う? そこにある利権が……」
「俺はもう一年か二年、あいつとは連絡を取っていない」
韋小宝は言った。
「叔父さん、どうして急に岳飛の話を?」
「俺は何度もあいつを見かけたぞ!」
王継先は言った。
「しょっちゅう兵を率いて斉国の国境を攻めている。随州、鄧州、郢州、襄陽……」
「襄陽は宋国の領土じゃなかったか?」
韋小宝が訂正した。
「とにかく、俺はその辺の人っ子一人いない土地で、何度もあいつを見たんだ」
「人っ子一人いない土地?」
「そうだ。あのいくつかの城は、今日は劉豫が占領し、明日は岳飛が占領する。二つの軍が行ったり来たりして戦っていれば、長いこと経てば人のいない土地になるだろう?」
「じゃあ、そんな無人の土地を、岳飛はどうして攻めるんだ?」
「お前、馬鹿だな!」
王継先は韋小宝の腕を小突いた。
「無人の土地を占領するのがどれだけ簡単だと思う? 最後に皇帝へ戦功を報告して褒美をねだれば、金も食糧も手に入るんだ」
「岳飛が戦功を水増しして報告しているとでも言いたいのか? あいつはそんな人間じゃない!」
韋小宝はきっぱりと言った。
「それに、随州と鄧州は確か斉国の領土だろう? 劉豫は兵を置いて守らないのか?」
「劉豫の腰抜け野郎が! 皇帝だからって、何が皇帝だ? 宋国と中国の間に挟まれて、両方から痛めつけられている。
あいつの治める中原の人間なんて、もっと哀れだ。飢えと寒さに苦しみ、住むところを失って、みんな中国へ逃げている」
「なのに叔父さんは宋国へ逃げてきた」
韋小宝は言った。
「叔父さん、どうして中国へ逃げなかったんだ?」
「はあ……」
王継先は露店からひょうたん型の瓢箪を一つ取り上げ、手のひらに小豆ほどの大きさの黒い丸薬を三粒転がした。
「この黒虎丹の秘伝処方は、俺の曾祖父から代々俺に伝わってきたものだ。その中に一種類、宋国でしか採れない薬草がある――春砂仁だ。
今は宋と斉の戦が絶えず、交易も滞っている。北の市場では春砂仁がほとんど手に入らない。
本物の黒虎丹を作ろうと思ったら、宋国に住み着くしかないだろう。どうしようもないじゃないか!」
「叔父さん、なるほど。本当に昔の処方どおりに丹薬を作っていたんだな」
王継先は瓢箪を地面に叩きつけた。
「何を言ってるんだ! 先祖から伝わった処方を、俺が勝手に変えられるわけがないだろう!」
韋小宝は愛想笑いを浮かべた。
「叔父さん、怒らないでくれ。小宝が悪かった。まさか叔父さんがこんなに正直な人だったとは――少なくとも、丹薬作りについては実に正直で、真面目なんだな」
「そう言われると、余計に腹が立つ! 俺は苦労して丹薬を作って、一度も混ぜ物なんかしたことがない。一粒の原価は二文だ。それを一粒十文で売っているのに、それでも高いと言いやがる」
王継先は通りすがりの男を呼び止めた。
「黒虎丹! まさに宝だ! 腎を補い陽を壮んにする妙薬だぞ! さあ見ていってくれ! 黒虎で壮陽、効果は途切れなし! 一日一粒、黒虎丹! 金槍は倒れず、女も大喜び!」
通行人は疫病神でも見るように、王継先を避けて通った。
「見ただろう? 商売なんて難しいものだ! 世の中の風俗は廃れ、人々は見る目がなくなった。今の連中は品物の価値が分からん!」
韋小宝は王継先を家へ招き、一緒に食事をしようと言った。
王継先は喜んで承知した。
道すがら、韋小宝は王継先がどこに住んでいるのか尋ねた。
王継先は気まずそうに笑った。
「天を屋根とし、地を敷物としている。南蛮の地で一つだけ気に入っていることがある――冬に外で寝ても凍え死なないことだ」
「小宝、叔父さん、お前の家に住ませてもらえないか?」
王継先が尋ねた。
韋小宝は内心で悲鳴を上げた。
そのときになって初めて、叔父と不用意に再会してしまったことを後悔した。
幼い頃、王継先の家にしばらく住んでいた日々が、まざまざと蘇る。
――とりわけ、まだ幼くて体も弱かった自分を、王継先が殴りつけたときの、あの容赦のなさだけは、はっきりと覚えていた。
王継先と韋小宝は同じ部屋で暮らすことになった。
韋小宝は二か月近く苦しみに耐えた末、ようやく王継先に家を出て別に住んでほしいと言った。
王継先は驚いたような、無実を訴えるような顔をしたものの、甥の決定に従わざるを得なかった。
秦桧の家の青煉瓦の壁に寄り添うように、彼は鶏小屋のように低い茅葺き小屋を建て、そこを寝起きの場所にした。
王継先は、韋小宝とのつながりを頼りに宮中へ入り、官職を一つ手に入れようと考えた。
韋小宝は率直に言った。
「俺が知っている人間の中で、一番偉い官は秦桧だ」
王継先は言った。
「秦桧はもう一生、芽が出ない。でも俺たちは違う。小宝、お前はまだ若い。俺だってまだ若い。あいつと一緒に食って寝て、死ぬまで何もせず暮らすわけにはいかんだろう?」
王継先に何度もせがまれ、韋小宝は厚かましさを承知で臨安府へ赴き、人脈を頼って話をつけた。
慈渓県へ戻ると、王継先に言った。
「脈があるぞ」
甥が、皇帝趙構に直接会える機会を取りつけたと聞くと、王継先はかえって怖じ気づいた。
「いきなり話が大きくなりすぎじゃないか?」
「小宝、皇帝を前にしたら、俺は足が震えて、何もしゃべれなくなるぞ」
韋小宝は彼を脅した。
「皇帝との約束をすっぽかしたら、首を斬られるぞ」
王継先は宮中へ入り、皇帝に拝謁することになった。
同行する韋小宝は、何度も何度も念を押した。
「趙構は房事がうまくいかない。このことは天が知り、地が知り、お前と俺だけが知っている。絶対に言いふらすな。宮中のそこらの人間にも、口を滑らせるなよ」
趙構の寝宮で召見を待っている間、韋小宝は王継先に、もう一度口上を練習させた。
叔父の王継先は、どもりながらあの黒虎丹の売り文句を口にした。
韋小宝は手の甲で額の冷や汗を拭った。
「危うく大変なことになるところだった! 叔父さん、官家の前では、絶対に『金槍倒れず』なんて言うなよ」
「じゃあ、何と言えばいい?」
「一字だけ変えるんだ――『銀槍倒れず』。くれぐれも忘れるな」
趙構は、王継先が「壮陽滋陰に効く」と宣伝する黒虎丹を、一か月にわたって飲み続けた。
その効果がどうだったのか、韋小宝には知る由もなかった。
二か月後。
叔父のもとへ内侍省から公文書が届いた。
詔を奉じ、翰林医官局を管轄せよ――と。




