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『岳飛伝』  作者: RiHakuun
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二十三

岳飛――韋小宝にとって、つい先ごろ昇進したばかりの幼なじみ――は、馬を駆って鞭を振るい、岸辺の苦役人夫たちに山のように積もった泥を運ばせていた。

「もう火事が眉毛に燃え移るほど切羽詰まってるっていうのに」

韋小宝が言った。

「完顔宗弼の大軍が目の前まで迫ってるのに、お前らはここで溝掘りか?」

「小宝、戦というものは『天の時、地の利、人の和』を重んじるんだ。地の利を利用することを知らなきゃならない。利がなければ、自分たちで作り出せばいい」

「お前が何を言ってるのか、俺にはさっぱり分からん」

「杜充将軍が、実に深遠な問題を提起されたんだ。なぜ金軍はいつも冬になると南へ下ってくるのか?」

「なぜ?」

「答えは簡単だ。金人は生まれつき水を恐れるからだ。春と夏は河川が氾濫して、水勢も盛んになる。金人は河を渡れない。ところが冬になれば河が凍る。そうなると金人は何の遠慮もなく渡ってくる」

岳飛は意味ありげに声を潜めた。

「そこで杜将軍が妙案を思いついた。黄河を掘り破って、金軍を水攻めにするんだ」

韋小宝は、返す言葉もなかった。

水路は磁州から掘り始め、滑県まで伸ばすことになった。斥候の報告によれば、完顔宗弼率いる五万の金軍が、ちょうどその二地点の間に陣取っているという。

号令一声、磁州の三百人余りの苦役人夫が力を合わせて河堤を切り開いた。

黄河の水が掘り終えた水路へ流れ込んだ。

ところが滑県を流れたところで、思わぬことが起きた。

計画どおり東へ流れて海に入るどころか、逆に延津県西方の一帯にある悬河へと逆流し始めたのである。

悬河の堤防が決壊した。

黄河は流れを変え、泗水の水路を奪い取るようにして淮河へ流れ込んだ。

流路を変えた洪水は、猛烈な勢いで南へ押し寄せた。

わずか一日で、汴梁城は一面の大水に覆われた。

早くから異変を察知していた完顔宗弼の大軍は、無傷だった。

完顔宗弼は軍を率いて汴梁を迂回し、そのまま応天府へ向かって突進した。

趙構とその朝臣たちは風の便りを聞くや否や、荷物をまとめて逃げ出し、揚州へと走った。

「俺は金国へ行く」

韋小宝は岳飛に告げた。

「お前まで金国へ移住するのか?」

岳飛の不満は顔にそのまま出ていた。

「そうじゃない。金国の大名府へ人を探しに行くんだ」

韋小宝は説明した。

「俺の養父を探す。養父は趙佶や趙桓と一緒に金国の上京へ行ったんじゃない。大名府の完顔昌に留用されたんだ」

岳飛は道中くれぐれも気をつけるよう韋小宝に念を押した。

今は兵や盗賊があちこちで暴れ回っている。外を一人で歩いていれば、野原に死体を捨てられてもおかしくない。

「心配するな。俺は天命を受けた男だ。そう簡単には死なない」

「小宝、お前が言ったんじゃないか。天命を受けた男は俺だって」

「じゃあ、今から言い直す――俺たち二人とも天命を受けた男だ。それならいいだろう?」

韋小宝は岳飛を見つめた。

「鵬挙、お前にはお前の天命がある。俺には俺の天命がある。俺の天命は、お前に天命を受け入れさせることにある。少なくとも俺は、そう理解している」

「そうでなきゃ、俺がここに存在する意味は何なんだ? もし天の神様が俺をこの世に送り込んだのが、歴史を見届けるためじゃないとしたら――本物の、お前という男を見届けるためじゃないとしたら……」

韋小宝は岳飛の手を握った。

温かく、ざらついていて、力強い。

農民の手。

生きている人間の手。

この世で、いったい誰が岳飛のこの手に触れたことがあるのだろう。

誰が、岳飛の手首に脈打つ鼓動を感じたことがあるのだろう。

金国へ向かう前に、韋小宝は一度汴梁へ戻った。

城外、瓊林苑のそばでは、老若男女がさまざまな道具を手にして、皇室の林に生える白樺の樹皮を剥ぎ取っていた。

「爺さん、木って皮を剥いだら、死んじまうんじゃないのか?」

韋小宝は、ぼろぼろの服を着た老人に声をかけた。

「お前さん、金国から来た若造か?」

老人は言った。

「人間だって、食うものがなきゃ死ぬだろう?」

洪水が引いた後の汴梁城は、至るところが泥沼と化していた。

街路の路面、通り沿いの店の壁際――まるで光沢のある厚い漆を一面に塗りたくったようだった。

まだ片づけられていない泥の中には、そこかしこに死体が転がっている。

猫の死体、犬の死体、羊の死体、馬の死体……。

そして何より多いのが、人の死体だった。

府衙も皇宮も、朱塗りの門を固く閉ざしている。

韋小宝がどれだけ門環を叩いても、いつまで経っても誰も出てこなかった。

城西一帯は地勢が高く、被害はそれほどひどくなかった。

それでも王継先夫妻の薬舗は、難を逃れることができなかった。

軒下に掲げていた金文字の看板はどこかへ消え、板戸は歪み、何枚も欠けている。

店内には河泥が残り、耐えがたい悪臭を放っていた。

七星斗柜は丸ごとひっくり返り、水に浸かった薬材が床一面に散乱している。

叔父の王継先と叔母は、薬柜の裏板に黙って腰を下ろしていた。

二人とも、憂いに満ちた顔をしている。

「もう生きていけん。本当に、生きていけん」

叔父の王継先が言った。

「天の神様が、俺を殺そうとしているんだ」

「本当に天の神様がお前を死なせたいなら、そんな愚痴を言う機会までくれるか?」

韋小宝は言った。

「叔父さん、大難を逃れたんだから、きっと後には福がある――」

「小宝、もう嫌味を言わないでおくれ」

叔母の頬を涙が伝っていた。

「この店は、叔父さんと私が一生かけて貯めた貯金で開いたんだ。一生の苦労の結晶だったんだよ! それが大水一発で、全部なくなっちまった」

「小宝、お前、知ってるかい? 私と叔父さんが毎月、望火楼の『潜火隊』にいくら火災予防費を払ってたと思う? 一月に三百二十文だよ。それなのに、火事は防げず、今度は大洪水だ」

叔母は自嘲するように笑った。

「前の日には、望火楼がどうして一晩で誰もいなくなったのか不思議に思ったんだ。まさか潜火隊はとっくに洪水の知らせを掴んでいたとはね。哀れなのは、何も知らずにいた私たち庶民さ……。私と叔父さんが薬柜の上に這い上がっていなかったら……」

「今さらそんなことを言っても、どうにもならん……」

王継先がぼそりと言った。

「叔父さん、一緒に片づけましょう」

韋小宝は言った。

「また一からやり直せばいい。勝敗を見るに、人生は豪快なものですよ」

「一からやり直せだと? この馬鹿野郎、破産したこともない奴は気楽に言いやがって……」

王継先は言葉に詰まり、声にはすすり泣きが混じっていた。

「薬舗の商売は完全に終わった……薬材を誰が買ってくれる……そもそも売る薬もない。全部、洪水に流されちまった……天の神様、天の神様よ……俺に息子一人も授けなかっただけじゃ飽き足らず……あんまりじゃないか……」

韋小宝は懐から、手持ちのわずかな銀四両を取り出した。

その半分を叔父の前に差し出す。

「叔父さん、これを持って、叔母さんと一緒に逃げてください」

「木は植え替えれば枯れるが、人間は場所を変えれば生きられる。天の神様だって、目の見えない雀まで飢え死にさせることはない」

「どこへ逃げるんだ?」

「北へ。金国へ逃げてもいい。いっそ高麗まで行ってもいい。南へ行くなら――今、そこを『宋国』と呼んでいいのかは分からないけど。趙構は今や逃亡の身で、消息もない」

韋小宝は少し間を置いた。

「西へ行ってもいいし、東へ行ってもいい」

「よし! 叔父さん、南へ逃げましょう」

王継先は銀二両を受け取り、腰の銭袋へ押し込んだ。

「今すぐ出る。もう汴梁には一刻たりともいられん。ここは悲しみの地だ」

「私、二日も何も食べてないよ」

叔母が突然言った。

「朝、蓮の実の汁を飲んだだろう」

王継先が言った。

「本当は売るために作ったものだったんだ」

「腹の足しにならない。米が食べたい」

「何を馬鹿なことを言ってるんだ?」

「叔母さん、汴梁の穀倉も水に浸かってる。今のこの町じゃ、乾いた米一粒だって見つからないかもしれないぞ」

「そんなこと知るもんか。私は米が食べたい」

「気でも狂ったのか、この女! こんな時に米が食いたいだと」

韋小宝がさらに何か言おうとした、そのときだった。

叔母は衣の裾をまくり上げ、身をかがめて青い刺繍入りの靴を脱いだ。

そして、それを門の外へ放り投げた。

「王継先、私のこの金蓮、きれいだろう? 娘だった頃は、十里四方みんながきれいだと言ってくれたんだよ」

叔母は上体を後ろへ反らし、両手を薬柜について身体を支えながら、両足をぶらぶらと揺らした。

韋小宝は叔母の足を見つめた。

親指は先が尖り、根元が太く、皮をかぶった亀頭のようだった。

根元から折り曲げられた八本の指は、足の裏にぴったりと貼りついている。

足の裏の肌は黒ずんでいるのに、足の甲は赤く艶めいていた。

まるで飴色に煮込んだ豚足のようだ。

「王継先、結婚した頃、お前は仲人に言っただろう。俺はこの金蓮に惚れたんだ、って……」

叔母が言った。

「そんな話を今さらするなよ!」

王継先が言った。

「何年前の話だと思ってるんだ!」

「この金蓮を見てごらん。遠くまで歩いていけそうに見えるかい?」

叔母は口を大きく開けて笑った。白い歯が二列、むき出しになる。

「洪水がなかったとしても、私一人じゃ城の外へ出るのだって一苦労だよ」

「じゃあ、どうしろっていうんだ? ここで死ぬのを待つわけにもいかんだろう……死んだっていいさ。来世では、少しは楽な暮らしができるかもしれん」

叔母は裸足で地面に降りると、よろめきながら門口まで歩いていった。

そして隣の質屋の青煉瓦の外壁に、頭を思い切りぶつけた。

三度。

叔母は河泥の中に崩れ落ちた。

額から、顔から、暗赤色の血が流れ出した。

我に返った韋小宝は店の外へ飛び出し、叔母のそばに跪いた。

「叔母さん……叔母さん……」

叔母は呼びかけに応えなかった。

最初、韋小宝は死んだのかと思った。

だが、しばらくすると、叔母はゆっくりと目を開けた。

「小宝、叔父さんは?」

薬舗の中には、誰もいなかった。

王継先は、いつの間にか姿を消していた。

「さっきまでいたのに、もういなくなってる」

叔母の目はうつろだった。

身体はまるで骨が抜けたように力がない。

韋小宝は叔母を薬舗の中へ引きずり込み、湿った木の寝台に寝かせた。

そして床に散らばった薬材の中から、淮山、蓮の実、葛根を拾い集め、きれいに洗って、柔らかな粥に煮た。

だが叔母は粥を食べようとせず、口を開くことさえ拒んだ。

丸二日、叔母は水一滴、米一粒も口にしなかった。

韋小宝には分かっていた。

叔母は、叔父が戻ってくるのを待っているのだ。

彼は外へ出て、近所の通りを一通り探したが、王継先は見つからなかった。

これ以上叔母を刺激するのが怖くて、韋小宝は「米を買いに行ってくる」と嘘をついた。

三日目の夕方。

眠っていた叔母が、突然はっと目を覚ました。

目を大きく見開き、何か言おうと口を開いた。

だが、何も声にはならなかった。

そしてゆっくりと瞼を閉じた。

二度と目を開けることはなかった。

韋小宝は人夫を雇い、叔母の遺体を城北、趙氏の皇陵そばの荒れ地へ運んだ。

人夫たちとともに、六尺ほどの深さの墓穴を掘った。

遺体を埋葬した後、韋小宝は汴梁城中を歩き回り、片足の不自由な石工を一人探し出した。

そして石板の墓碑を彫ってもらった。

叔母の葬儀を終えると、韋小宝の手元にはほとんど金が残っていなかった。

彼は人の家の泥や汚物を片づけて生計を立てた。

一日に稼げるのは、だいたい五十文。

時には人の病気も診た。

彼のところへ診察に来るのは、ほとんどが貧しい人々だった。

診察料として出せるのは、せいぜい二、三文という者ばかりだ。

郭薬師が五千の金兵を率いて城内へ入ってきたとき、韋小宝はすでに三日続けて仕事にありつけていなかった。

銭袋は空っぽ。

腹は背中とくっつきそうなほど空腹だった。

「ようやく王師様のお出ましか!」

韋小宝は郭薬師をつかまえた。

逃げられてはたまらない。

「郭将軍、金国では何という官職をもらったんです? 汴梁留守ですか?」

「韋先生、何を馬鹿なことを言っている?」

郭薬師は言った。

「呉乞買が私を上京へ呼び戻した。汴梁を通りかかっただけだ。汴梁は金国の領土じゃない。私がここで何の官になるというんだ?」

「ここ数日、俺がどれだけ惨めな暮らしをしていたか、将軍には分からないでしょう……」

韋小宝は言った。

「こんなに広い汴梁城なのに、宋廷の役人が一人も見つからない。衙役も一人もいない。夜になると盗賊が跋扈して、安心して眠ることもできない。郭将軍、ここがかつて天子のお膝元だったなんて、想像できますか?」

「天子だと? 天子ならとっくに逃げたさ。趙構のあの野郎、黄河を掘り破って自国の民を水で殺しやがった」

郭薬師は吐き捨てるように言った。

「呉乞買は悪くない男だ。だが、宋人の皇帝になろうとはしない」

「黄河を掘ったのは趙構の命令じゃありません。杜充とその部下がやったんです」

「どっちだって同じだ」

韋小宝は郭薬師について北へ向かった。

二人は金国大名府の大名県で別れた。

別れ際、韋小宝は郭薬師から銀五十両を贈られた。

もし大勢の人が見ていなかったら、韋小宝は本気で郭薬師の前にひれ伏して、頭を三度地面に打ちつけたいほどだった。

郭薬師の紹介を受け、韋小宝は大名県城外に駐屯していた金国の右副元帥・完顔昌と、その軍中で仕えていた秦桧を訪ねた。

韋小宝は完顔昌に、旅の途中で見聞きしたことを一つ一つ話した。

中でも、汴梁の民衆がどれほど悲惨な目に遭っているかを詳しく語った。

「大金が応天府まで進めば……遅かれ早かれ、必ず乱が起こる……やはり、国を治める皇帝が必要だ」

完顔昌は韋小宝を見つめながら、考え込むように言った。

「では、いったい誰を皇帝にする?」

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