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『岳飛伝』  作者: RiHakuun
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11/44

十

道を一つ曲がると、突然、視界が大きく開けた。威風堂々たる汴京の城楼が、目の前に姿を現した。

皓々たる月が天上に浮かび、清らかな月光が、地上のあらゆるものに淡い影を落としている。

韋小宝は、ふっと気力が蘇るのを感じた。

一か月近くに及んだ、揺られ続けの旅も、ようやく終わろうとしている。

「義父さん、この数日、楽しかったですか?」

韋小宝が、驢馬の背に乗った王継先に尋ねた。

「楽しかったとも! まさか燕山府が汴京よりも栄えているとは思わなかった。それに、金国の芝居一座は、こっちより歌がうまい」

疲れのにじんだ王継先の声には、それでも興奮が混じっていた。

「小宝、聞いた話だが、燕山府の民の間では『中秋節』を祝う習わしがあるそうじゃないか。祭りの日には、どの家もみな街へ出て遊び、月を拝み、家族そろって飯を食う。それに、『月餅』という菓子まで食べるそうだ……義父さんも中秋節を祝ってみたいものだ」

「中秋節は高麗人や金国人の祭りですよ。義父さんは宋国人なのに、外国の祭りなんか祝ってどうするんです?」

韋小宝は言った。

「俺も最近になって知ったんですが、中秋を祝う風習は高麗国から金国へ伝わったものらしいんですよ――まったく、聞いただけで胸が悪くなる」

「祭りを祝うのに、金国だの宋国だの、そんな区別があるものか?」

王継先は言った。

「ほら、この月を見てみろ。高麗や金国だけを照らして、我が大宋を照らさないとでもいうのか? 俺は、大宋だって『中秋節』を祝うべきだと思うぞ――惜しいことに、燕山府にもう少し長く滞在できなかった。遠出というのは、そう簡単にできるものじゃないからな……人々がどうやって中秋節を祝うのか、この目で見てみたかった」

「急いで帰ってきたのは、秦桧に付き添って制科を受けるためですよ」

韋小宝が言った。

「小宝、なんて言い方をするんだ?!」

王継先が指を突きつけた。

一瞬、韋小宝は相手がまた平手打ちを飛ばしてくるのではないかと思った。

何年か前には、王継先から何度もそうされたものだ。

韋小宝は思わず首をすくめた。

しかし王継先は、ゆっくりと腕を下ろした。

「秦桧はお前の実の父親じゃない。だが、それでもお前を義理の息子として認めているんだ。息子が親父の名前を呼び捨てにするものじゃない」

そう言った王継先の声は、突然、明るくなった。

「秦桧はもう科挙に合格して官職を得て、朝廷から禄をもらっているんじゃないのか? それなのに、どうしてまた試験を受けるんだ?」

「制科は、朝廷が特別な人材を選抜するための試験です。鴻辞科とか、孝廉方正科とかがあって――」

韋小宝は王継先を見下ろすように眺めた。

「義父さんだって受けられますよ。医科を受ければいい」

王継先は顔を背けると、驢馬の耳元へ向かって、宙を二度、鞭で打った。

「俺は常科にすら受からんのに、制科なんて受けられるか。制科のほうが常科より難しいんだろ?」

「ずっと難しいですよ。制科の第一名と第二名は、制度上、該当者なしという扱いです。第三名については……宋国が建国されて以来、制科で第三名になった者は二人しかいません」

韋小宝は言った。

「そのうち一人は、あいつの弟の孫で、俺は去年、義父さんの家で一度会ったことがあります」

「誰だ?」

「蘇なんとかっていう……名前は忘れました。祖父の蘇轍が有名で、『六国論』を書いた人です。官職もかなり高くて、宰相まで務めています」

「なるほどな!」

王継先は感心した。

「秦桧が付き合っているのは、そういう身分の人間なんだな!――小宝、お前の義母さんの親戚にも、宰相を務めた人間がいるんだぞ。知ってるか?――なるほど、秦桧が出世したがるわけだ。あいつが受けたのは孝廉科だろ? 太学の学正で、生徒も教師も管理しているんだから――」

「詞学兼茂科です」

二人は城門へやって来た。

守備兵はちょうど門を閉めかけていたが、王継先が、

「お役人さん、ちょっと待ってくれ! 俺たちは城内へ入りたいんだ!」

と叫ぶと、二枚の城門の隙間から顔を出した。

「酉の刻はもう過ぎた。俺は勤務終了だ」

兵士は手を差し出した。

「通関文牒を出してくれ」

「通関文牒? 城を出たときには、そんなもの要求されなかったぞ!」

「たった今、上から通達が来たんだ。金国皇帝が病死して、国境が騒がしくなっている。通関文牒がなければ入城させるな、とのことだ。明日また来たらどうだ?」

兵士は背を向けて立ち去ろうとした。

「こんな夜中にこんな荒れ地で、俺と甥っ子にどこで寝ろっていうんだ? お役人さん、そこを何とか頼むよ」

「お前らのために融通を利かせろって? じゃあ、俺のためには誰が融通を利かせてくれるんだ?」

兵士は門の内側へ体を押し込むと、ゆっくりと門を閉め始めた。

韋小宝は手を伸ばし、門の隙間に差し込んだ。

「お役人さん、これなら役に立つんじゃないですか?」

そう言って手のひらを開き、そこに乗せた銅製の魚符を見せた。

兵士は壁に掛けられた松明の明かりを借りて、魚符をじっくりと確認した。

「お前、朝廷の人間だったのか? だったら最初からそう言えよ!」

兵士は韋小宝を城内へ通した。

「うわあっ!」

王継先が突然、大声を上げ、韋小宝の背中へ飛びついた。

「どうした?」

兵士は城門をしっかり閉めた。

「蛇に噛まれたんじゃないか……」

王継先はズボンの裾をまくり上げた。

かかとには、まだ血がにじんでいる赤い斑点が半円状に残っている。

「お役人さん、門を開けてくれ。どんな蛇に噛まれたのか見せてもらえれば、症状に合った薬を使える」

「冗談じゃない! その蛇に俺まで噛まれたらどうするんだ?」

兵士は言った。

「薬屋へ行って、蛇の傷に効く薬でも買って塗れ」

「こんな夜中に薬屋なんか、とっくに閉まってる! 俺自身が薬屋をやってるんだぞ」

王継先は悲鳴を上げた。

「蛇に噛まれて、すぐ治療しなかったら死ぬぞ!」

兵士は言った。

「だったら、お前らを中へ入れるんじゃなかったな」

「俺に蛇の咬み傷を治す秘伝があります」

韋小宝が言った。

「ただ……ただ……」

「こんなときに何をもごもごしてるんだ! 韋小宝、お前は義父さんが目の前で死ぬのを見たいのか?」

「医書に書いてあるんです。男の陰毛には蛇の咬み傷を治す効果があるって。義父さん、試してみたら? 口に何本か陰毛を含んでおけばいい」

「陰毛?」

兵士が聞き返した。

「つまり、ちんこの毛です」

韋小宝は平然と答えた。

「どの医書にそんなことが書いてあるんだ?」

王継先が尋ねた。

「甥っ子の言うことを信じてみろ。死んだ馬でも生きた馬と思って治療するしかない」

兵士は腰から短刀を一本抜いた。

「お役人さん、何するんです?」

「何って、お前に刀を貸してやるんだ。ちんこの毛を切るんだろ?」

兵士は柄のほうを王継先へ向けた。

「まさか俺のを切ろうってんじゃないだろうな?」

王継先は短刀を受け取ると、ズボンを脱いだ。

「二十本で十分ですよ」

韋小宝が義父に念を押した。

王継先は、切り取ったばかりの黒い毛を口へ放り込んだ。

頬がぷくりと膨らんだり、へこんだりしている。

「どれくらい含んでおけばいい?」

「医書には書いてありません。でも、常識から考えれば、長く含んでいるほど効果が高いはずです」

韋小宝は、足を引きずる王継先を支えながら、家まで送り届けた。

そして口の中の陰毛を吐き出すよう言ったが、王継先は拒んだ。

一晩中含んでおくのだと言い張った。

翌朝。

かかとの傷は腫れてもいなければ、痛みもなかった。

王継先は言った。

「お前の妙薬、こりゃ本当に効くじゃないか。絶対に書き留めておかなきゃな。なんて貴重な医学知識だ! 小宝、何年も外を旅しているうちに、本当に成長したな!」

「旅の途中で、お前が童貫の顔には髭があると言ったときは信じられなかったが、今は信じるぞ――人間、本当に外へ出て旅をして、見聞を広める必要があるんだな」

翌々日、韋小宝は義父の家を出て、御街前の「小南門」へ向かった。

そこで皇宮の門衛に、自分が受験生に付き添う家族であることを告げると、一人の若い宦官が先導し、彼を皇宮前の広場に仮設された木造の平屋へ案内した。

韋小宝が数えてみると、そこには受験生の家族が全部で三十四人いた。

閣試を受ける受験生は、一人につき付き添いの家族を一人まで連れてくることができる。

つまり、丸一か月にも及ぶ制科試験の最終段階で、韋小宝の養父・秦桧は、少なくとも三十三人の相手と競うことになる。

閣試では、受験生が引き当てる問題はそれぞれ異なる。

問題は受験する科目に関係するものが多く、経験豊かな専門家や官僚が出題する。

皇帝が問題を読み上げ、試験官は屏風の後ろに隠れて受験生の回答を聞き、その優劣を判定する。

韋小宝は、秦桧が問題にどう答えるかについては心配していなかった。

もし今の自分の境遇が、すでに筋書きの決まった芝居なのだとしたら、心配したところで何になる?

それならいっそ、安心して運命の神に操られる糸繰り人形になっていればいい。

運命を恨み、それに抗おうとする者たちに比べれば、少なくとも自分は彼らより楽しく生きている。

韋小宝は、秦桧に落第してほしいと思っていた。

だが、秦桧の運命が自分の望みどおりにならないことも、分かっていた。

「皇子たちは、何をしに行くんだ?」

受験生の家族の一人、三十歳を少し過ぎた男が、遠くを指さした。

そこでは、薄い紅色の長袍をまとった一群の人々が、足早に崇政殿へ向かっている。

この男は口が達者で、ずっとしゃべり続けていた。

韋小宝は彼の隣に立ち、他の者との雑談をこっそり聞いているうちに、この男が自分を郭京と名乗り、登州の丘処機道長の弟子入りをした最後の弟子だと称していることを知った。

「どうして皇子だと分かるんだ?」

誰かが郭京に疑問を呈した。

「皇子ですよ――あなた、その手を早く下ろしてください。失礼ですよ」

秩序を維持していた若い宦官が言った。

「もうすぐ榜が出ます。二十八人の皇子が、合格した受験生を祝いに急いでいるんです」

郭京は遠くを見つめ、雛が餌をついばむように何度もうなずいた。

「あれは兗王・趙楷……粛王・趙枢……済王・趙栩……康王・趙構。あそこ――信王・趙榛。それから、あの背の高い奴、見えるか?――定王・趙桓だ。趙桓は皇太子。天下は遅かれ早かれ、あの趙桓のものになる」

「そんな遠くから、誰が誰だか分かるのか?」

韋小宝が言った。

「お前、『修仙』ってものを知らないのか?」

郭京の口元には、露骨な軽蔑と侮蔑が浮かんでいた。

「修仙を極めれば、最後には千里眼や順風耳を身につけられるんだ。分かったか?」

「さっき康王って奴がいると言ったな。どれが康王なのか指差してくれ」

韋小宝が尋ねた。

「康王・趙構? お前、あいつに取り入ろうってのか? 相手を間違えてるぞ!」

郭京は言った。

「康王は庶出だ。皇位を継ぐ望みなんかない。趙桓のほうなら――分かるだろ? 龍椅に座るのは、どうせ趙桓だ。康王に回ってくるわけがない」

「それに、俺の仕入れた極秘情報によれば、康王は皇子たちの中でいちばんいじめられている」

崇政殿から、一人の紅袍の官僚が出てきた。

歩く姿はよろよろとしており、年は六、七十歳ほどに見える。

その男は広場に立っていた紫袍の官僚のところまで歩いていくと、一枚の紅榜を手渡した。

紫袍の官僚は背筋を伸ばし、両手で紅榜の左右をつまんだ。

「今回の制科試験、第一名――該当者なし」

「第二名――該当者なし。第三名――該当者なし」

官僚は、しばらく言葉を止めた。

空気が凍りついたかのようだった。

「第四名、秦桧」

「第五名……」

官僚は焦らすこともなく、榜に記された名前を淡々と読み上げていった。

その先は、韋小宝の耳には一字も入ってこなかった。

官僚が崇政殿の石段の脇へ戻ると、刀を帯びた五人の衛士が歩み寄ってきた。

そして、受験生の家族全員に皇宮から出るよう命じた。

「試験は終了しました。皇上が受験生たちと話をされます。しばらく出てこられませんので、皆さん、宮外でお待ちください」

衛士たちは受験生の家族を皇宮の門へ向かわせた。

皆、何度も振り返って皇宮を見ていた。

「見ろ、皇上だ!」

誰かが叫んだ。

全員が一斉に足を止めた。

崇政殿の軒下では、皇子たちが列を作って殿内へ入っていく。

紅袍をまとい、翼のような冠をかぶった皇上は、自分の前を通り過ぎる皇子一人ひとりの肩を手で叩き、ときには何人かの皇子の冠を手ずから直してやっていた。

衛士たちは、立ち止まらず先へ進むよう人々を促した。

その日の丑の刻。

秦桧が韋小宝の借りている旅館へ戻ってきた。

韋小宝は尋ねた。

「秦先生、俺は毎日、夜も明けないうちから起きて勉強して、夜中まで字を書いているのを見てきました。今度、制科に合格したのは確かに喜ばしいことです。でも、それだけの努力に見合う価値があったと思いますか?」

「あなたは、いったい何のために、そこまで苦学して出世しようとしているんです?」

秦桧は答えた。

「国家に尽くすためです。朝廷に報いるためです」

秦桧よ、秦桧。

よくもまあ、そんなに口が回るものだ。

そんなことを言って、恥ずかしくないのか?

韋小宝は秦桧をじっと見つめた。

疲れ切ったその表情の中から、本心と口にしている言葉が食い違っていることを証明する、ほんのわずかな痕跡を探そうとした。

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