新しい仲間たち①
「そこちゃんと拭けてないじゃない、ほらここにもシミがあるわよ」
「ここには埃があるわ。あなた本当に隅々まで掃除しているのかしら?みすぼらしい格好ではしたないわね」
そのいじらしい高い声はフツフツと心の奥底に湧き上がる怒りの種をわたしのなかに生み出す。
視線の上には冷たく、まるで自分が観客にでもなったような目で嘲笑う2人の少女がいた。
シミを指差した手を、扇子に持ち替え口元を覆う彼女は縦にカールした茶色の髪を揺らした。
薄茶色と淡い黄色の普段着のドレスはそれこそシミひとつない。
隣で彼女に耳打ちしている少女は同じ茶色の瞳に、昔の映画のアリエルのような髪の色。さらさら流れる髪はドレスの薄いピンクにかかり色合いがきれい。
2人は、私の姉。
みんな知ってると思うけどエラの義理の姉のドリシアとアナスタシア。
生まれ変わったと知って、はや半年くらい私は姉たちにいじられ、いびられる生活を送っている。
「来週の今頃には私たち晴れて社交界デビューするのよ〜〜まああんたはその舞踏会に出られませんけどねー」
「そうよ、素敵な殿方に出会える最高の機会なのよ」うっとりと目を輝かせるアナスタシアはわたしの濡れた糸がほろほろになっている雑巾には目もくれない。
そうか、私はその舞踏会には行けないのよね。
はあ、運命の王子様に自分で見つけ出すと張り切ったくせに、現実の壁は高い。目の前にいる2人が私の行手を阻む壁みたい。
ぬれた雑巾は3、4往復すると水分を失い床を満遍なく濡れない。ガサガサだ。
「そうね、私も楽しみよ。2人の晴れ舞台が」
突然、背後から低い、けれども上品な大人の女性の声が聞こえた。
「まあ、お母様、そう言っていただけて嬉しいわ」
「私もとてもうれしいわ」
2人はその声一直線に向かい、私をチラリとも見もしない。
「お義母様…」
そう、彼女が私のお義母さんであり、継母。
ドリシアとアナスタシアのお母さん。
まるで前世の婚活パーティーの時のようにまわりの会話は聞こえるのにちっとも耳に残らない。
自分だけが異物として扱われるなんとも言えない痛い虚無感。
「エラ」
急に、名前を呼ばれた。
反射的に身体がビクッと反応する。
「もう部屋に戻っていいわ」
満足そうに一言だけ言うと、3人はこの部屋から出て行った。きっとなにかいいことがあったに違いない。
いつもより汚れが少ない雑巾を持って自分の部屋へ戻った。




