第6話 仲間との絆
黒い霧を撃退したあと、翔はしばらくその場に立ち尽くしていた。
リュミナは光を収め、静かに翔の隣へ寄り添う。
『大丈夫ですか、翔』
「……なんとか。ありがとう、リュミナ」
リュミナは柔らかく微笑む。
その笑顔は、恐怖で張り詰めた翔の心を少しだけ軽くした。
しかし――
安心する暇はなかった。
玄関のドアが勢いよく開き、白峰凛が飛び込んできた。
「矢本さん! 今の光は……精霊召喚ですか!?」
翔は驚いて振り返る。
「し、白峰さん!? なんでここに……」
「あなたの家の周囲にレムナント粒子の反応が出ていたので……急いで来ました」
凛は息を整えながら、部屋の中を見渡す。
そしてリュミナを見つけると、目を大きく見開いた。
「……本当に召喚したんですね。
アークブレスの精霊、“リュミナ”」
リュミナは軽く会釈した。
『初めまして、白峰凛。
あなたのことは翔から聞いています』
「えっ、俺そんなに話してないけど……」
凛は微笑む。
「精霊は契約者の記憶をある程度読み取れるんです。
あなたが信頼している人は、リュミナにも伝わるんですよ」
翔は少し照れながら視線を逸らした。
「……信頼してるっていうか、頼りにしてるだけで」
「それで十分です。
あなたは一人では戦えませんから」
凛は真剣な表情で翔の前に座る。
「矢本さん。
あなたはもう“アークブレスの適合者”として、敵組織に狙われています。
このままでは命がいくつあっても足りません」
翔は腕輪を見つめた。
「……わかってます。
でも俺は、逃げたくない。
リュミナを呼べたのも……その気持ちがあったからだと思う」
リュミナは静かに頷く。
『翔の意思が、私を呼びました。
あなたは臆病ですが……心は強い』
凛はその言葉に少し驚いたように目を細めた。
「……精霊にそう言われる人は、そう多くありません。
あなたは本当に“選ばれた”んですね」
翔は苦笑した。
「選ばれたって言われても……実感ないですよ。
ただ怖いだけで」
「怖いのは当然です。
でも――あなたには私がいます」
凛はまっすぐ翔を見つめた。
「アークブレスの研究者として、あなたを支えます。
敵組織の情報も、アークブレスの構造も、全部私が調べます」
翔は息を呑んだ。
「……俺を、助けてくれるんですか」
「もちろんです。
あなた一人に背負わせるには、あまりにも重すぎる力ですから」
リュミナも翔の隣で光を揺らす。
『翔。あなたはもう一人ではありません。
私と凛がいます』
翔は胸の奥が熱くなるのを感じた。
臆病な自分が、誰かに支えられている。
誰かが自分を必要としてくれている。
「……ありがとう。
俺、頑張ります。
逃げないで……ちゃんと向き合う」
凛は微笑んだ。
「その言葉が聞けてよかった。
ではまず――アークブレスの“本当の目的”から話しましょう」
翔は息を呑む。
リュミナは静かに目を閉じ、光を揺らした。
『翔。あなたが知るべき真実は、まだ始まりにすぎません』
翔は拳を握りしめた。
臆病でもいい。
怖くてもいい。
――でも、もう一人じゃない。




