表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アークブレス  作者: 灰皿
PR
5/26

第5話 精霊召喚

白峰凛と別れたあと、翔は自宅のアパートに戻った。

部屋の鍵を閉めると、ようやく緊張の糸が切れたようにベッドへ倒れ込む。


「……世界を滅ぼす力って……なんなんだよ」


腕輪――アークブレスは静かに光を灯している。

その光は、まるで翔の不安を和らげるように柔らかかった。


『翔。あなたの精神状態は不安定です。

少し休息を取ることを推奨します』


「休息してる場合じゃないだろ……」


『休息は戦いの一部です』


アークの声はいつも通り淡々としているが、どこか優しさがあった。

翔は深く息を吐き、天井を見つめる。


「……俺は臆病だよ。

 でも……逃げ続けるのは、もう嫌だ」


腕輪が淡く光る。


『翔。あなたが覚悟を持ったことで、

 アークブレスの“次段階”が解放できます』


「次段階……?」


『精霊召喚モード。

 アークブレスに宿る古代精霊を呼び出す能力です』


翔は思わず起き上がった。


「精霊って……そんなファンタジーみたいな……」


『古代文明は高度な技術と精神エネルギーを融合させていました。

 精霊はその産物です』


「……呼び出したらどうなるんだ?」


『あなたの戦闘能力が飛躍的に向上します。

 ただし――精神負荷が大きい』


「精神負荷……また命が削られるのか?」


『時間操作ほどではありません。

 ただし、あなたの精神が弱っている状態では危険です』


翔は腕輪を見つめた。

淡い光が、まるで「大丈夫だ」と言っているように揺れている。


「……やってみるよ。

 俺は強くなりたい。逃げないために」


腕輪が強く光った。


『精霊召喚モード、起動します』


部屋の空気が震えた。

翔の視界が白く染まり、耳鳴りが響く。


「うっ……!」


光の中心から、柔らかな声が聞こえた。


『……あなたが、私を呼んだのですね』


翔は目を見開いた。


光の中から現れたのは――

淡い金色の髪を持つ少女の姿だった。

透き通るような肌、優しい瞳。

人間のようでありながら、どこか現実離れした存在感を放っている。


「だ、誰……?」


少女は微笑んだ。


『私はリュミナ。

 アークブレスに宿る“光の精霊”です』


翔は言葉を失った。

目の前にいるのは、確かに人ではない。

空気が彼女の周囲だけ違うように感じられる。


「精霊って……本当にいたんだ……」


リュミナは翔に近づき、そっと手を伸ばした。

その手は温かく、優しい光を帯びている。


『あなたは臆病ですが……心はとても強い。

 だから私は応えました』


「俺が……強い?」


『恐怖を知る者ほど、勇気を持てるのです』


翔は胸が熱くなるのを感じた。

誰かにそんなふうに言われたのは初めてだった。


そのとき――


部屋の窓ガラスが突然震えた。


「な、なんだ!?」


黒い霧が窓の外を覆い、ゆっくりと侵入してくる。

あの男が使っていた“レムナント粒子”だ。


『翔、戦闘準備を!』


アークの声が響く。

リュミナは翔の前に立ち、光を纏った。


『大丈夫。私が守ります』


黒い霧が部屋に侵入し、形を変えて獣のような影となる。

影は咆哮し、翔へ飛びかかった。


「うわっ……!」


リュミナが手をかざすと、光の壁が展開される。

影は壁にぶつかり、弾かれた。


『翔。あなたの力を貸してください』


「俺の……力?」


『あなたが望めば、私はもっと強くなれます』


翔は腕輪を握りしめた。


「……生きたい。

 そして……守りたい!」


腕輪が強く光り、リュミナの身体が輝きを増す。


『ありがとう。翔――いきます!』


リュミナが光の刃を放ち、影を一瞬で切り裂いた。

黒い霧は悲鳴のような音を立てて消滅する。


翔は息を呑んだ。


「……すごい……」


リュミナは微笑んだ。


『あなたの意思が、私を強くしました』


翔は腕輪を見つめた。

そこには、確かに新しい力が宿っていた。


臆病でもいい。

怖くてもいい。


――でも、もう逃げない。


翔は静かに拳を握った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ