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アークブレス  作者: 灰皿
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第3話 敵組織の影

男の黒い刃が、夏の陽光を受けて鈍く光った。

翔は腕輪の力で強化された反射神経に導かれ、紙一重でその斬撃を避ける。


「くっ……!」


『翔、右へ回避』


アークの声が脳内に響く。

翔は言われるままに身体を動かすと、男の刃が空を切った。


「……やはり適合者か。面倒だな」


男は淡々と呟き、刃を構え直す。

その姿勢には一切の無駄がなく、まるで訓練された兵士のようだった。


「適合者って……なんなんだよ!」


翔の叫びに、男は冷たい視線を向ける。


「お前が知る必要はない。アークブレスを渡せば済む話だ」


「渡したら……どうなるんだ?」


「死ぬだけだ」


その言葉に、翔の背筋が凍りつく。

腕輪を奪われれば死ぬ。

抵抗すれば殺される。


どちらにしても、逃げ道はない。


『翔、戦闘補助を最大出力にします』


「最大って……勝手にやるなよ!」


だが腕輪は光を強め、翔の身体能力をさらに引き上げる。

視界が鮮明になり、男の動きがスローモーションのように見える。


「……来るぞ」


男が地面を蹴った瞬間、翔は反射的に腕を上げた。

腕輪が光り、透明な盾のような空間が展開される。


空間生成。


刃がその空間に弾かれ、火花のような光が散った。


「ほう……空間生成まで使えるか」


男は初めて興味を示したように目を細める。


翔は震えながらも、腕輪を見つめた。


「……俺は、戦いたくない。でも……死にたくもない」


『翔。あなたは臆病でいい。

だが、生きるための勇気は必要です』


男が再び踏み込む。

翔は腕輪の導きに従い、拳を突き出した。


拳が男の腹に命中し、男は数歩後退する。


「……やるじゃないか。だが――」


男はコートの内側から黒い球体を取り出した。

それは不気味な光を放ち、空気が震える。


「ここで終わりだ」


球体が割れ、中から黒い霧が溢れ出す。

霧は生き物のように翔へ向かって伸びてくる。


「うわっ……!」


『翔、後退! あれは“レムナント粒子”。触れれば精神を侵食されます!』


「精神を……侵食!?」


翔は必死に後退するが、霧は追いかけてくる。

男は無表情のまま、霧を操るように手を動かした。


「アークブレスを渡せ。抵抗するほど苦しむぞ」


翔は腕輪を握りしめた。


「……嫌だ。俺は……生きたい!」


腕輪が強く光り、翔の周囲に空間の壁が展開される。

霧が壁に触れた瞬間、弾かれて消えた。


男は舌打ちする。


「厄介な能力だ……撤退する」


男は霧を引き戻し、影のようにその場から消えた。


翔はその場に崩れ落ち、荒い呼吸を繰り返す。


「はぁ……はぁ……なんなんだよ……あいつ……!」


『翔。あれは“オルド・レムナント”。

アークブレスを狙う敵組織です』


「敵組織……?」


『あなたはもう、巻き込まれたのです。

逃げるだけでは生き残れません』


翔は震える手で腕輪を押さえた。


「……俺は臆病だよ。戦うなんて向いてない」


『臆病だからこそ、生き残れる。

あなたはまだ強くなれる』


翔は空を見上げた。

夏の青空は、何事もなかったかのように広がっている。


だが、翔の世界はもう元には戻らない。


腕輪を拾った瞬間から――

彼の人生は、戦いの渦へと巻き込まれていた。

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