第二部 第9話 翔の新能力「存在干渉」覚醒
リュミナの身体を侵食する影の力は、
翔の存在干渉能力によって一時的に押し返された。
しかし──
影は完全には消えていない。
リュミナの光は弱く、
黒い影が時折その身体を揺らしていた。
翔は拳を握りしめ、研究室の中央で立ち尽くしていた。
「……俺の力じゃ、まだ足りない」
凛はモニターを見つめながら言った。
「影の力は“存在情報”そのものに干渉している。
あなたの存在干渉能力はまだ未完成よ。
もっと深い領域までアクセスできなければ……」
翔は歯を食いしばった。
「リュミナを守れない……」
リュミナは弱く微笑んだ。
『翔……あなたは十分強い……
でも……影の力は……もっと深いところにある……』
アーク・ネオの声が響いた。
『翔。
あなたの存在干渉能力はまだ“表層”にすぎません。
影の文明の力に対抗するには──
“深層存在領域”へアクセスする必要があります』
翔は息を呑んだ。
「深層存在領域……?」
凛は説明を続けた。
「存在情報には階層があるの。
物質の構造、生命の情報、精神の構造……
そのさらに奥にあるのが“深層存在領域”。
影の文明はそこを書き換える力を持っている」
翔は拳を握りしめた。
「……なら俺もそこにアクセスできるようにならないといけないんだな」
アーク・ネオの声は静かに、しかし力強く響いた。
『翔。
あなたの精神は光の文明の技術で強化されています。
深層存在領域へのアクセスは可能です。
ただし──危険です』
凛は息を呑んだ。
「翔の精神が崩壊する可能性があるわ」
リュミナは翔の手を握りしめた。
『翔……無理はしないで……
あなたが消えてしまったら……私は……』
翔はリュミナの手を握り返した。
「無理でもやるよ。
リュミナを守るためなら……何だってやる」
アーク・ネオが光を放ち、翔の周囲に円環を形成した。
『翔。
深層存在領域へのアクセスを開始します。
あなたの精神を守るために、私が補助します』
翔は目を閉じ、深く息を吸った。
「……頼む、アーク・ネオ」
◆
光が翔の意識を包み込み、
世界がゆっくりと遠ざかっていく。
視界が白く染まり、
次の瞬間──
翔は“何もない空間”に立っていた。
「……ここは……?」
アーク・ネオの声が響く。
『翔。
ここが深層存在領域です。
世界の“根源情報”が流れる場所』
翔は周囲を見渡した。
空間には無数の光の線が流れ、
その奥には黒い影が蠢いていた。
「……影の文明の力……」
『はい。
影の文明はこの領域を支配し、
世界の存在を自由に書き換えていました』
翔は拳を握りしめた。
「……なら俺がここで力を手に入れれば……影の文明に対抗できる」
アーク・ネオの声が強く響いた。
『翔。
あなたの精神と深層存在領域を接続します。
覚悟してください』
翔は目を閉じた。
「……行こう。
俺は臆病だけど……守りたいものがある時は強くなれる」
光が翔の身体を貫き、
深層存在領域の情報が流れ込んでくる。
痛み。
熱。
圧力。
精神が押し潰されそうになる。
しかし──
翔は叫んだ。
「俺は……負けない!!
リュミナを……凛を……世界を守るんだ!!」
その瞬間──
翔の身体が強く輝いた。
アーク・ネオの声が震えた。
『翔……!
あなたの存在干渉能力が……覚醒しています!!』
光が爆ぜ、影の力が後退する。
翔は深層存在領域の中心で、
新たな力を手に入れた。
「……これが……俺の新しい力……」
アーク・ネオが告げた。
『翔。
あなたは“深層存在干渉能力”を覚醒しました。
影の文明の力に対抗できる唯一の力です』
翔は拳を握りしめた。
「……行こう。
影の文明を止めるために」
光が収まり、翔は現実世界へ戻った。
リュミナの光が少しだけ強くなっていた。
『翔……あなたの光……感じます……』
翔は微笑んだ。
「リュミナ。
俺は絶対に君を守る」




