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アークブレス  作者: 灰皿
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第二部 第8話 リュミナの異変

影の使者との遭遇から数日。

松阪市は表面上は平穏を保っていたが、

世界の“空気”はどこか重く、冷たくなっていた。


研究室では、凛が影の力の解析を続けている。

翔はアーク・ネオと共に訓練を重ね、

“存在干渉能力”の制御を学んでいた。


しかし──

その日、異変は突然訪れた。



「……翔……」


弱々しい声が研究室に響いた。


翔は振り返り、息を呑んだ。


「リュミナ……?」


リュミナは壁にもたれかかり、

光が不安定に揺れていた。


いつもは柔らかく輝く金色の光が、

今は黒い影を混じらせている。


『……身体が……重い……』


翔は駆け寄り、リュミナの肩を支えた。


「どうしたんだ!?

 影の力の影響か?」


リュミナは苦しそうに胸を押さえた。


『……影の力が……世界に満ち始めています……

 精霊の身体は“光の情報”でできているから……

 影の力が強くなると……存在が……薄れていく……』


翔は息を呑んだ。


「存在が……薄れる……?」


凛が駆け寄り、リュミナの身体をスキャンした。


「……まずいわ。

 影の力がリュミナの存在情報に干渉してる。

 このままじゃ……消える」


翔は拳を握りしめた。


「そんなの……絶対にさせない!」


リュミナは弱く微笑んだ。


『翔……あなたが戻ってきてくれたから……

 私はそれだけで……十分……』


翔は首を振った。


「十分なんかじゃない!

 リュミナは……俺の仲間だ。

 消えていいわけないだろ!」


リュミナの光がさらに弱まり、

黒い影が身体を侵食するように広がっていく。


『……翔……怖い……

 消えるの……怖い……』


翔はリュミナの手を強く握った。


「大丈夫だ。

 絶対に消させない。

 俺が守る!」


アーク・ネオの声が響いた。


『翔。

 リュミナの存在情報を守るには、

 あなたの“存在干渉能力”を使う必要があります』


翔は息を呑んだ。


「俺の力で……リュミナを守れるのか?」


『可能です。

 ただし──影の力は強大です。

 あなたの精神に負荷がかかります』


凛が翔の肩に手を置いた。


「翔……無理はしないで。

 影の力は危険よ」


翔は首を振った。


「無理でもやる。

 リュミナが消えるなんて……絶対に嫌だ」


リュミナは震える声で言った。


『翔……ありがとう……

 でも……影の力は……私の存在を……』


翔はリュミナの手を握りしめ、強く言った。


「リュミナ。

 俺は臆病で、弱くて……

 でも守りたいものがある時は、絶対に逃げない」


リュミナの瞳が揺れた。


『……翔……』


翔はアーク・ネオへ意識を集中させた。


「アーク・ネオ。

 リュミナの存在情報を守る方法を教えてくれ」


アーク・ネオの声は静かに、しかし力強く響いた。


『翔。

 リュミナの存在情報を“固定”します。

 影の力による書き換えを阻止するために──

 あなたの存在干渉能力を最大出力で使います』


凛は息を呑んだ。


「最大出力……!

 翔の精神が耐えられない可能性があるわ!」


翔は迷わず言った。


「耐えるよ。

 リュミナを守れるなら……何だってやる」


リュミナは涙を浮かべながら翔を見つめた。


『翔……あなたは……本当に……』


翔は微笑んだ。


「臆病だけど……守りたいものがある時は強くなれるんだよ」


アーク・ネオが光を放ち、

翔とリュミナを包み込む。


『存在干渉能力──起動します』


翔はリュミナの手を握りしめ、

強い光の中へ意識を集中させた。


リュミナの身体を侵食していた影が、

少しずつ後退していく。


しかし──

影は完全には消えなかった。


アーク・ネオの声が重く響いた。


『翔……影の力は強すぎます。

 リュミナの存在情報は守れましたが……

 影の侵食は完全には止められません』


翔は息を呑んだ。


「……そんな……」


リュミナは弱く微笑んだ。


『翔……ありがとう……

 あなたがいてくれるだけで……私は……』


翔は拳を握りしめた。


「影の文明……絶対に許さない。

 リュミナを苦しめるなら……俺が止める!」


アーク・ネオの声が静かに響いた。


『翔。

 影の王が動き始めています。

 リュミナの異変は、その前兆です』


翔は強く頷いた。


「……行こう。

 影の文明の力を止めるために」


リュミナは翔の手を握り返した。


『翔……あなたとなら……私は消えません』


翔はリュミナを抱きしめ、

影の文明との戦いへ向けて歩き出した。


第二部は、ここからさらに深い闇へ踏み込んでいく。

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