第二部 第3話 リュミナの涙(再会)
翔が凛と再会した翌日。
松阪市の空は、夏の名残を残しながらも、どこか優しい光を帯びていた。
翔は新しい肉体にまだ慣れないまま、研究室の屋上に立っていた。
風が肌を撫でる感覚が、以前よりも鮮明に感じられる。
「……戻ってきたんだな、俺」
胸の奥がじんわりと熱くなる。
世界の匂い、風の音、街のざわめき──
すべてが懐かしく、愛おしい。
そのとき──
淡い光が翔の周囲に集まり始めた。
「……え?」
光は揺れ、形を成し、
やがて一人の少女の姿へと変わった。
金色の髪。
透き通るような肌。
優しい瞳。
翔が世界を救った時、最後まで寄り添ってくれた精霊──
リュミナ。
『……翔……?』
震える声。
信じられないというように、リュミナは翔を見つめた。
翔は微笑んだ。
「……リュミナ。
ただいま」
その瞬間──
リュミナの瞳から涙が溢れた。
『……翔……翔……!
あなた……消えたはずなのに……!』
リュミナは翔へ駆け寄り、
小さな身体で翔に抱きついた。
翔は驚きながらも、そっと彼女を受け止めた。
「……ごめん。
心配かけた」
『心配どころじゃありません……!
あなたが消えた瞬間……私……私……!』
言葉にならない嗚咽が、リュミナの喉から漏れる。
翔は彼女の背中を優しく撫でた。
「……俺は死んだよ。
でもアークが……俺を守ってくれた。
古代文明の技術で、俺は……戻ってきたんだ」
リュミナは涙を拭いながら翔を見上げた。
『……本当に……翔なんですね?
心も……優しさも……全部……』
翔は頷いた。
「うん。
俺は俺のままだよ。
臆病で、怖がりで……でも守りたいって思ってる俺だ」
リュミナはまた涙を流しながら微笑んだ。
『……よかった……本当に……よかった……
あなたがいない世界なんて……私……耐えられませんでした』
翔は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
「……ありがとう。
リュミナがいてくれたから、俺は最後まで戦えたんだ」
リュミナは翔の手を握りしめた。
『翔。
あなたが戻ってきたなら……私はもう迷いません。
あなたと一緒に……どんな未来でも戦います』
翔は静かに頷いた。
「……俺もだよ。
リュミナと、凛と……アークと一緒に進む」
その瞬間──
アークの声が翔の心に響いた。
『翔、リュミナ。
新世界のエネルギー反応が増大しています。
“新たな脅威”が本格的に動き始めました』
リュミナは涙を拭い、表情を引き締めた。
『……翔。
あなたが戻ってきたなら、私はもう怖くありません』
翔は拳を握りしめた。
「行こう、リュミナ。
俺たちの戦いは……まだ続く」
リュミナは強く頷いた。
『ええ。
あなたとなら……どこまでも行けます』
翔は新しい肉体で、
新しい仲間との絆を胸に──
新世界の脅威へ向けて歩き出した。




