第二部 第2話 凛との再会
光の記録領域から現実世界へ戻る扉をくぐった瞬間──
翔は眩しい光に目を細めた。
「……ここは……」
見覚えのある街並み。
松阪市の空は、あの日と同じ青さで広がっていた。
新しい肉体は軽く、しなやかで、
まるで世界と同調しているような感覚があった。
『翔。あなたの肉体は古代文明の技術で最適化されています。
以前よりも強く、耐久性も高い』
アークの声は、もう腕輪からではなく、
翔の心の奥から響いていた。
「……戻ってきたんだな、俺」
胸の奥が熱くなる。
守りたい世界へ、帰ってきた。
◆
翔は街を歩きながら、ある場所へ向かった。
白峰凛の研究室。
あの日──
翔が消えた場所。
研究室の扉は閉じられ、
中からは機械音だけが微かに聞こえていた。
翔は深呼吸し、扉をノックした。
「……凛。俺だよ」
静寂。
次の瞬間──
扉が勢いよく開いた。
「……え?」
白峰凛が立っていた。
目を見開き、息を呑み、
その場で固まっている。
「矢本……さん……?」
翔は微笑んだ。
「ただいま、凛」
凛の瞳が揺れた。
震え、涙が溢れ、
彼女は翔へ駆け寄った。
「……嘘……嘘でしょ……!
だって……あなたは……!」
翔はそっと凛の肩に手を置いた。
「死んだよ。
でもアークが……俺を守ってくれた。
古代文明の技術で、俺は……戻ってきた」
凛は涙を流しながら翔の胸に顔を埋めた。
「……よかった……本当に……よかった……!
あなたがいなくなってから……私……ずっと……!」
翔は優しく凛の背中を撫でた。
「心配かけてごめん。
でももう大丈夫。
俺は戻ってきた。
世界を守るために」
凛は顔を上げ、涙で濡れた瞳で翔を見つめた。
「……本当に……あなたなんですね」
「うん。
心はそのまま。
臆病で、怖がりで……でも守りたいって思ってる俺だよ」
凛は笑いながら泣いた。
「……臆病なんかじゃありません。
あなたは……世界を救った英雄です」
翔は照れくさそうに視線を逸らした。
「英雄なんて柄じゃないよ。
でも……守りたいものがあるから、戦うよ」
凛は翔の手を握りしめた。
「……また一緒に戦えるんですね」
「もちろん。
俺はもう逃げない。
凛と、リュミナと……アークと一緒に進む」
凛は静かに頷いた。
「……待っていました。
あなたが戻ってくるのを」
翔は深く息を吸い、研究室の中へ足を踏み入れた。
その瞬間──
アークの声が鋭く響く。
『翔、凛。
新たなエネルギー反応を検知しました。
オルド・レムナントとは異なる……未知の反応です』
凛は息を呑む。
「未知……?」
翔は拳を握りしめた。
「……第二部の敵ってことか」
アークの声は重く、緊張を帯びていた。
『翔。
あなたが戻ったことで、世界は新たな段階へ進みました。
“新世界の脅威”が動き始めています』
翔は凛の手を握り返した。
「……行こう、凛。
俺たちの戦いは、まだ終わってない」
凛は強く頷いた。
「ええ。
あなたとなら……どんな未来でも戦えます」
翔は新しい肉体で、
新しい世界へ向けて歩き出した。




