第二部 第4話 新世界の脅威の正体
翔が復活し、凛とリュミナと再会した翌日。
研究室には新たな緊張が漂っていた。
凛はモニターの前で眉をひそめ、
アークの解析結果を何度も確認していた。
「……この反応、やっぱり異常だわ」
翔は凛の隣に立ち、画面を覗き込む。
「昨日から言ってた“新世界の脅威”ってやつか?」
凛は頷いた。
「ええ。オルド・レムナントの残党とは明らかに違う。
もっと……根本的に異質なエネルギー反応よ」
リュミナが光を揺らしながら言った。
『この反応……どこか懐かしい気配があります』
翔は驚いてリュミナを見る。
「懐かしいって……どういうこと?」
リュミナは静かに目を閉じた。
『古代文明の……“光”ではありません。
もっと深い……もっと古い……
文明が生まれる前の“原初の力”です』
凛は息を呑んだ。
「原初の力……?
そんなもの、記録に残っていないわ」
アークの声が翔の心に響く。
『凛。
古代文明は“光の文明”と呼ばれていますが、
その前にもう一つ文明が存在していました』
翔は目を見開いた。
「もう一つ……?」
『古代文明が恐れ、封印し、記録すら残さなかった文明──
“影の文明”です』
凛は震える声で言った。
「影の文明……そんなもの、学術記録には一切……」
『残されていません。
古代文明が意図的に消しました。
“影”の技術は危険すぎたのです』
翔は拳を握りしめた。
「……その“影の文明”が、今動き始めてるってことか?」
アークの声は重く、緊張を帯びていた。
『翔。
あなたが世界再構築エネルギーの暴走を止めたことで、
世界の均衡が一時的に崩れました』
「均衡……?」
『光の文明が封じていた“影の力”が、
世界の隙間から漏れ始めたのです』
凛はモニターを操作しながら言った。
「この反応……確かに光とは違う。
負のエネルギーでもない。
もっと……原始的で、混沌としている」
リュミナは翔の隣に立ち、静かに告げた。
『翔。
影の文明は、光の文明よりも強大でした。
精神エネルギーではなく、
“存在そのもの”を操る力を持っていました』
翔は息を呑んだ。
「存在そのもの……?」
『生命、物質、空間……
あらゆる“在り方”を変える力です』
凛は震える声で言った。
「そんな力が……世界に漏れ出しているの?」
アークの声が鋭く響く。
『翔。
影の文明の力は、世界をゆっくりと侵食しています。
このままでは、光の文明が守った世界は崩壊します』
翔は拳を握りしめた。
「……じゃあ俺たちが止めるしかないんだな」
リュミナは強く頷いた。
『ええ。
あなたが戻ってきたのは……このためです』
凛は翔の肩に手を置いた。
「翔。
あなたの新しい肉体は、光の文明の技術で作られている。
影の力に対抗できるのは……あなたしかいない」
翔は深く息を吸い、ゆっくりと吐き出した。
「……わかった。
影の文明がどんな力を持ってても……
俺は守るよ。
この世界を」
アークの声が力強く響く。
『翔。
影の文明の力を追跡するために、
“新たなアークシステム”を構築します』
凛は驚いた。
「新しいアーク……?」
『アークブレスは消滅しました。
しかし、翔の精神と完全同期した私の“残響”は残っています。
それを基に、新しい守護装置を作ります』
翔は息を呑んだ。
「……アークが……戻ってくるのか?」
『はい。
あなたと共に戦うために』
リュミナは微笑んだ。
『翔。
あなたはもう一人ではありません。
私たちがいます』
翔は拳を握りしめた。
「……行こう。
影の文明がどんな力を持ってても……
俺たちで止める」
アークの声が静かに、しかし確信を持って響いた。
翔は新しい肉体で、
新しい脅威へ向けて歩き出した。
影の文明──
光の文明が恐れた“原初の力”が、
今、世界を侵食し始めている。




