第10話 翔の覚悟
研究室の警報音が、耳をつんざくように鳴り響いていた。
赤い警告灯が点滅し、室内の空気が一気に張り詰める。
凛はモニターを操作しながら叫ぶ。
「オルド・レムナントの部隊が建物に侵入しました!
数は……三名以上! 全員武装しています!」
翔は拳を握りしめ、腕輪を見つめた。
「……来たんだな。
俺を奪いに」
アークの声が鋭く響く。
『翔。戦闘補助を最大出力にします。
あなたの身体能力を限界まで引き上げます』
「限界って……俺、耐えられるのか?」
『あなたなら耐えられます。
臆病でも、恐怖を知っていても──
あなたは“守る意思”を持っている』
リュミナが翔の隣に立ち、光を揺らす。
『翔。あなたは一人ではありません。
私がいます。凛もいます。
あなたはもう、逃げる必要はありません』
翔は深く息を吸い、ゆっくりと吐き出した。
臆病でもいい。
怖くてもいい。
でも──
守りたいものがある。
「……行くよ。
俺はもう逃げない。
ここで戦う」
アークブレスが強く光り、翔の身体を包む。
筋肉が熱を帯び、視界が鮮明になり、心臓の鼓動が力強く響く。
凛は翔を見つめ、震える声で言った。
「矢本さん……本当に行くんですね」
「行くよ。
俺は臆病だけど……
守りたいものがあるんだ」
凛は唇を噛み、そして静かに頷いた。
「……気をつけてください。
あなたは、この世界の“最後の砦”なんですから」
その言葉は、翔の胸に深く刺さった。
最後の砦──
自分がそんな存在になれるとは思っていなかった。
だが今は違う。
アークが選んだ理由を知り、
リュミナが支えてくれて、
凛が信じてくれている。
逃げる理由は、もうどこにもない。
研究室の扉が、外側から激しく叩かれた。
「翔、来ます!」
凛が叫ぶ。
アークの声が響く。
『翔、構えてください。
敵はあなたを“鍵”として奪いに来ます』
翔は腕輪を握りしめ、前へ一歩踏み出した。
「……来いよ。
俺はもう、守るって決めたんだ!」
扉が破壊され、黒いコートの男たちが雪崩れ込んでくる。
その中心には──
以前翔を襲った、あの無表情の男がいた。
「矢本翔。
アークブレスを渡してもらう」
翔は拳を握りしめ、男を睨みつけた。
「渡すわけないだろ。
俺は……俺の世界を守る!」
男は刃を構え、冷たい声で告げる。
「ならば──力づくで奪うだけだ」
翔は一歩前へ踏み出した。
臆病でもいい。
怖くてもいい。
でも──
守るためなら、戦える。
アークブレスが強く輝き、翔の身体能力が限界まで引き上げられる。
『翔。あなたはもう“臆病な青年”ではありません。
あなたは──守護者です』
翔は叫んだ。
「行くぞ……アーク!!」
研究室の空気が震え、光が爆ぜる。
翔は初めて、
自分の意思で戦いへ飛び込んだ。




