第9話 敵組織の目的
研究室の空気は、アークの言葉を境に一変していた。
凛はモニターの前で固まり、リュミナは翔の隣で静かに光を揺らしている。
翔は腕輪を見つめたまま、ゆっくりと息を吐いた。
「……封印を守るために、俺は選ばれた。
でも……敵は何をしようとしてるんだ?」
凛は深刻な表情でモニターを操作し、古代文明の記録を映し出した。
「オルド・レムナントは──
古代文明が封じた“世界再構築エネルギー”を解放しようとしています」
翔は眉をひそめた。
「再構築……?
世界を作り直すってこと?」
「ええ。
古代文明は一度、世界を“作り替えよう”として失敗しました。
その結果、文明は崩壊し……封印が施されたんです」
リュミナが静かに言葉を継ぐ。
『封印された力は、世界そのものを上書きするほど強大です。
使い方を誤れば、今の世界は消滅します』
翔は息を呑んだ。
「そんな力を……あいつらは解放しようとしてるのか」
凛は頷く。
「オルド・レムナントは“世界を正しい姿に戻す”と主張しています。
彼らにとって今の世界は“歪んだ失敗作”なんです」
翔は拳を握りしめた。
「……勝手なこと言いやがって。
俺たちの世界を壊すなんて……絶対に許せない」
アークの声が静かに響く。
『翔。あなたの怒りは正しい。
しかし、敵はあなた以上にアークブレスを理解しています』
「どういうことだ?」
凛は画面を切り替え、敵組織の内部資料を映し出した。
「オルド・レムナントは、古代文明の研究を何十年も続けています。
アークブレスの構造も、封印の仕組みも……
あなたより深く理解している」
翔は腕輪を見つめた。
「……じゃあ俺は、敵より弱いってことか」
リュミナが首を振る。
『いいえ。翔には“意思”があります。
それは力を扱ううえで最も重要な要素です』
凛も続ける。
「敵は力を“道具”として扱います。
でもあなたは違う。
あなたは力を恐れ、慎重に向き合える。
だからこそ──アークはあなたを選んだんです」
翔は胸の奥が熱くなるのを感じた。
臆病だからこそ選ばれた。
恐怖を知るからこそ、力を暴走させない。
「……俺は、逃げないよ。
世界を壊させるわけにはいかない」
アークの声が強く響く。
『翔。あなたの覚悟を確認しました。
次段階──“完全同期”の準備を進めます』
凛は驚きの声を上げた。
「完全同期は、アークブレスの全機能を解放する危険な状態です!
翔の精神負荷が……」
『翔なら耐えられます。
彼の意思は、私が想定した以上に強い』
翔は腕輪を握りしめた。
「……アーク。
俺はやるよ。
世界を守るためなら、どんな力でも使う」
リュミナが翔の肩に手を置く。
『翔。あなたはもう臆病なだけの人ではありません。
あなたは“守る者”です』
その瞬間──
研究室の警報が鳴り響いた。
「な、何だ!?」
凛がモニターを確認し、顔を青ざめさせる。
「オルド・レムナントの反応……!
この研究室に向かってる!」
翔は息を呑んだ。
「ここに……来るのか!」
アークの声が鋭く響く。
『翔、戦闘準備を。
敵はあなたを奪いに来ます』
翔は拳を握りしめた。
臆病でもいい。
怖くてもいい。
でも──
逃げない。
「……来るなら来い。
俺はもう、守るって決めたんだ!」
アークブレスが強く光り、翔の身体を包む。
世界を壊そうとする敵が迫る中──
翔は初めて、自分の意思で戦いに向かっていった。




