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人間的天使と人間的悪魔

名前を消されてから一週間。仕事は思いのほか単調で、味気のないものだった。

夜、エヌとリリがベットに忍び込んでくること以外は...


「あのさ、俺だって男なんだよ」

「だから?」

リリが俺の体の上で体にしがみつきながら言った。


「あれー♡もしかしてお兄さん、こんな体系の少女に欲情しちゃった?こわーい♡」

リリがより力を入れて体を抱きしめてくる。明らかに言行が一致していない。思わず口から声が漏れる。

「なんで悪魔がこんなにかわいいんだ...」


「悪魔はその人が望む姿で現れる。」

エヌが淡々とした口調で指摘する。

「え?」

「そうだよ♡お兄さんが私みたいな小さな女の子を望んでるからこんな姿になっちゃってるんだよね♡しかも、お兄さんは小さな女の子に支配されたいんだよね♡」

「それはない」

俺が即座に否定すると、リリがエヌに向かって意地悪そうに言う。

「そうかな?どうなんだろうね♡」


エヌは申し訳なさそうに答える。

「通常、悪魔が人間の住処に立ち入ることはできない。でもリリはお兄さんの部屋に簡単に入ることができた。だから...」

「お兄さんが入れてくれたんだよ♡お兄さんは寝込みを襲われるのが好きなんだよね♡」


「違う..いや、違う...」


「違くないよね♡お兄さんの心は正直だよ♡何の抵抗もなしに簡単にベットまで入り込めてるんだから♡」

「でも、心の中にまでは入りこめてない。お兄さんは自暴自棄になってるところがある。小さな女の子に支配されて、人生滅茶苦茶にしたいって欲望があるだけ。そこを悪魔に付け込まれている。でも、同時に小さな女の子に甘えたいって欲望もある。そこからでも、信心があれば正しい道にも進むことができる。」

エヌが俺の顔を至近距離でのぞき込む。


「はぁ...」

悪魔が敵だからと言って、天使が味方とは限らないらしい...


「そんなことよりも、今日は新しいランクの仕事だよ♡」

「ランク?」

「そう♡今まではランクのない雑用だったけど、ついにお兄さんの努力が報われ、ランク付きの仕事を任されたんだよ♡最低ランクだけど♡早く行こう♡今日の現場は移動パイプがないくらい田舎なんだから♡ぐずぐずお兄さん♡」


薄暗い地下道。車を運転していると後部座席で二人が何かをひそひそ話している。

この組織に入って悪魔と天使のイメージは大きく変わった。実際、悪魔というのは怠惰なものだと考えていたが、リリは思いのほか仕事熱心だった。いや、そもそも悪魔や天使はなぜ組織で働いているのか?


「リリとエヌってなんでこの組織で働いてるの?」


「最終戦争に備えるため♡」

「最終戦争に備えるため。」

二人がステレオで答える。


「最終戦争までに現世で人間を悪に導くことが、リリの役割だからね♡」

「エヌもそうなの?」

「私は善に導くため。でもそれだけじゃない。」


「人間を導くだけなら組織で働く意味はない。確かに組織で働けば、妖怪を介して人間に影響を与えることができる。でも、それ以上に組織で働いている天使や悪魔はみんな現世での生活を望んでいる。」

「どういうこと?」

「人間が大好きで、人間の生活に憧れてるんだよ♡組織にいれば人間と直接かかわることができるからね♡」


「意外だな。天使や悪魔は上位存在で、人間を見下してるんじゃないのか?」

「そういうのもいる。でも、私は迷えるものほど近くで導く必要があると考えてる。」

「まぁ♡私は愚かな人間を直接イジメたいだけだけどね♡」

「それは嘘。リリは人間のこと大好き。長く人間とかかわって、趣味もほとんど人間のそれになっている。人間に恋してるといっても過言でないレベル。」


「そうなの?」

リリの方を横目で見ると、一瞬目が合ったかと思うと、すぐに目をそらされてしまった。


「私たちは本来、肉体を持たない存在♡今、肉体を持ててるのは組織に必要とされているから♡天使と悪魔の力を使う主人がいなければ、三日でこの肉体は消されるんだよね♡お兄さんが組織に入らなければ消されてたかもね♡でも、お兄さんが組織に入って一番喜んでたのはエヌだよ...私も嬉しくはなかったけど...」


徐々に声が小さくなるリリをエヌが小突いていた。それは普通の子供が戯れているようにも見えた。

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