〈TURN-6〉ミアと愛海、人魚姫に出逢う。
――『ティーチの使者』の事件を終えて数時間後。
ティアーズアイランドに向けて遊覧船は、今尚電脳の海を航海していました。
命懸けの闘いを乗り越えたミアさんと愛海さんは、再び展望デッキでガールズトークをしながら、航海の時間を過ごしていきます。
「――ねぇ、ミア。もっと聞かせてよ、貴女が過ごしてたドイツの話!」
「何が聞きたいんですか? 愛海」
「えっとねー、ゲームの話! ドイツのゲームって結構独特なんでしょ?」
事件前とは違って、互いに呼び捨てで名前を呼び合ってます。“親友”として、信頼する仲となった二人にはオープンな会話が飛び交っていました。
「そうですね、確かに日本から見ると独特かも知れませんが、私がドイツに住んでた時はそれが普通でしたから。『アナログゲーム』って聞いたことありますか?」
「うん。ボードゲームカフェで扱ってるんだよね」
読者の皆さんの街にも、ボードゲームカフェがありますでしょうか? この近未来の時代では、現代の6割増しにそういった店が多く出回っているのです。
「そうです。それが、ドイツを中心としたヨーロッパ製のボードゲーム。つまり『アナログゲーム』と呼ばれてるものなんです」
日本ではTVゲーム大国と言われているのに対し、ドイツはアナログゲーム大国。休日ではテレビではなく、家族揃ってテーブルの上でゲームするのが日課と言っていい程、文化が栄えているのです。
「ドイツのゲームは意外とルールが簡単・明快ですから、子供達とも直ぐに遊べるし、大人と混ざっても十分に面白く遊べるんです」
「あたしみたいなお馬鹿さんでも?」
「勿論遊べます。って、愛海はお馬鹿じゃないですよ!」
「分かってるわよ、冗談冗談!」
なんて、冗談まで話しちゃうほど仲良くなってますね。
「私的に面白いなぁと思ったのは、日本でいう五目並べとかオセロのようなゲームって必勝法があるじゃないですか。でもドイツゲームは、その必勝法が無いんですよ」
「どういう事?」
「ドイツゲームは高い戦略性と、運の駆け引きが大きな特徴なんです。だからその分ゲーム性が深まりますし、マンネリ無く何度でも遊べるんです」
「へぇ〜、ドイツゲームって奥が深いのね。あたし今度やってみようかな!」
「是非! なんなら現実に帰還した時に、千葉の幕張に寄ってみて下さい! 私が経営してるボドゲカフェがありますから」
「……投資家やって、カフェ経営して忙しくない?」
「自分の欲に素直に従ってたら、こうなっちゃいました」
「なーるほどね……」
――そんな感じで、ミアさん達のトークで時が過ぎ、いつの間にかティアーズアイランド到着まであと数分といった所。
クリアブルーな海に囲まれ、緑豊かな離島たちが遊覧船の目の前に現れてきました。
一つの離島の浅瀬にて、こちらへ向かってくる遊覧船を岩の陰から覗いている深い青の長髪の女性。
スレンダーな肌身に貝殻の水着、そして下半身は魚の鱗が覆われています。
―――そうです。その女性こそ、この私。『ルカ』という人魚姫なのです!
「やっと見つけた……! ポセイドンとネプチューンの魂を持つ、海の戦士……!!」
私は意味深な言葉を残して、再び海の方へ潜っていくのでした。
⚀⚁⚂⚃⚄⚅
――ゲームワールドオンラインの南半球に位置し、数々の離島と、それらに囲まれながら一際大きな面積を持つ本島があります。
アクセスルートも限られ、船でしか進出を許されない。忌まわしき戦争の記憶を刻み、その涙を未来永劫伝える為に創られたエリア。
それが、涙の記憶を刻む島【ティアーズアイランド】。
遂にミアさんと愛海さんが、その島に辿り着きました……!!
「…………着きましたね」
「うん。とても綺麗な島。だけど……厳かな気持ちになっちゃう。ヘラヘラと笑い浮かれて入るような島じゃない気がするの」
陽気な愛海さんでさえもシリアスになってしまう程、空気が引き締まり、戒めの歴史を誰もが真摯に受け止めていく神聖な島。
「ねぇ、ちょっと寄り道してかない? 何か気持ちがザワザワするとゆーか……」
「奇遇ですね。私も同じ事考えてましたよ、愛海」
二人は遊覧船から下船し、水陸両用車『WADATUMI』を引き降ろしてから先ずは島の浜辺を散歩する事に。
二人の本来の目的は、島に囲まれた森林を抜けた中央地帯に戦争の記憶が保存された慰霊碑や遺跡があり、そこを探索する事なんですが……修羅場を超えて心身疲れていた二人の心の準備は出来ていなかった。
島の外側は、足元を優しく包まれるほどに砂質が細やかな砂浜と、クリアブルーな電脳海だけ。
愛海さんは砂浜に落ちてた貝殻を拾い集め、ミアさんは無心で砂浜に体育座りで座りながら、海を眺めて黄昏れる。
数時間前まで、命懸けの闘いを繰り広げた二人の女子が、生き永らえた命に抱き、謳歌する……。
そして黄昏れるミアさんのデニムジャケットから取り出した色とりどりの五つのサイコロ。
これを握り締めて、彼女の真意を吐露する。
「―――こんなに平和な島、私も作っていきたいなぁ……!」
「…………?」
ミアの心、愛海知らず。彼女が想い抱く夢に親友も付いていくのか否かは、まだ先のお話です。と、そこへ……!
すい〜〜〜〜〜っ
藍色の長髪靡かせて、浅瀬に音も無く泳いでミアさんと愛海さんに近付くマーメイド。
そう、それは私、ルカです。海から遊覧船の二人を見つけて、上陸した時に近付いて挨拶しようと思い近付きました。
……まぁ、近づくまでは良かったんですが……。
(どうしよう……ここからどうやって挨拶すれば良いの〜?)
私、重度のコミュ障だったんです。彼女達に近付けば近付くほど、海中に紛れて涙目になっていきます。
だってそうでしょう? 会って早々に『人魚でーす☆』なんて空気読めない出逢いなんて、童話でも無いですもの!
ミアさんから話しかければ良いの? 愛海さんに握手してむぎゅ~からが良いの? 百合の間に他の女が絡み合ったら犯罪になっちゃうの?? ねぇ読者の皆様教えて助けてヘルプミー!! なんて脳内談話して間に、
「貴女、さっき何をやってるんですか?」
「ずーっと海の中で落語みたいな動きしてたよ?」
どういう状況ですか、それ。自分で言うのもなんですが。というかミアさん、愛海さん……
二人して私の上半身を海から引き上げちゃってますよ! あと数メートル浜に引き上げたら見えちゃう!! 魚の鱗が!!!
「え、や、あの、その、えと、はわわわ……!」
忽ち顔も赤くなり、テンパリ上昇で声にもならない囁き声で焦る私。
「とにかく、海の中で危ない遊びは止めてください! ここはライフセーバーも居ないんだから!」
「あ、元海上自衛官は居るけどね。海から上がりましょ!」
「◇☆▽◇〜!!◇○◁▽☆〜〜!!!」
通訳すると、『ダメー!! 鱗見えちゃうから引き上げないで〜〜!!!』、です。でもコミュ障が災いして二人に伝われなかった私。
浜辺に引き上げられた私の下半身が彼女等に見えた瞬間、明らかに動きが停止したのが分かった。
「…………嘘ん」
「多分、ミアと思った事と同じだから一緒に叫ぼっか。はい、せーのっ……」
「「人魚でゃーーーーーーーーッッ!!!!!!」」
……こんな、ロマンスもマロングラッセも無い出逢いがあったでしょうか。
しかし、この出逢いこそが新たな絆の始まり。
そしてミアさん達と一緒に、究極のボードゲーム『ミリオンダイス』に挑む事になるのです……!
――本日のターンは、これで終了!!
⚀⚁⚂Go to the next turn!⚃⚄⚅
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