〈TURN-11〉ミアと愛海、人魚姫の涙を優しく包む。
――TIPS――
【ミリオンダイス・チュートリアル②】
対戦するCPUロボには、最先端AIを搭載されているが、ある“戦略タイプ”のデータが組み込まれている。
その戦略タイプの個性、一長一短を見極める事が勝利の鍵を握る。
――私、ルカが下半身人魚の鱗やヒレから、人間のお御足になったのには理由がありました。
ゲームワールドに住んでる人魚は、普段水中では魚のヒレが付いてるごく普通のマーメイド。しかし一旦陸に上がると、鱗が乾燥して下半身が突然変異を起こし、人間の足に変化するようになっていたんです。
こうなると最早、人魚というよりも魚人って言わざるを得ないのですが、私はそれでも構わずミアさんと愛海さんのいる鎮魂の祠へ上陸し、彼女達の元へ駆け付けました。
もう、独りぼっちは嫌……と。そんな必死の想いでミアさん達と再会したのですが……
「……驚きました。足生やしてまで私達と一緒にいたかったとは」
「言い方に少し語弊があるけどね。あとタイミングめっちゃ悪いし」
確かにタイミングが悪かった。何しろ今はミリオンダイス参加資格を賭けた試練のゲーム中。
しかも丁度相手側が基本役のボーナスを達成し、37点も差を付けられていた所だった。
(やはりCPUの戦略として、基本役ボーナスを得る事が最大の目的でしたね。
確かに6の目を五つ揃えてヨットにするより、『シックス』の役で30点とボーナス35点を加算すれば、ヨットの50点よりも点が取れる。AIらしい考え方です)
ミアさんは冷や汗を額に垂らすも、冷静に分析していきます。
とはいえ、ゲームも残り5ターン。スコアボードに残された五つの役で如何に得点を稼いでいくか。
ミアさん達の残った役は、基本役で2の目を合わせる『ツー』、5の目の『ファイブ』。同じ目を3つと2つに合わせる『フルハウス』。四つ同じ目を出す『フォー・オブ・ア・カインド』。
そして最大の役、五つ同じ目を揃える『ヨット』。
対するCPUは、基本役『ワン〜シックス』を全て埋めて、残りは『フルハウス』『フォー・オブ・ア・カインド』『Sストレート』『Bストレート』『ヨット』と、特殊役のみ残されています。
どの役でどんな点数が出ても、逆転の可能性が出てくる後半戦。9ターン目はミアさん達の番から。サイコロを振る前に愛海さんが彼女に耳打ちします。
「ねぇ、ミア。あたし達もボーナスポイント取れないかしら? 『ツー』と『ファイブ』も残ってるし……」
「……難しいですね。合計点がまだ41点で、あと22点取らなきゃいけません。最低でも『ファイブ』で5の目を四つ取らないと……」
望み薄の展開、これには愛海さんも苦い顔。今はただサイコロを振って先に進むしかありません。私も不安な様相で二人を見守ります。
「ダイス・ロール!!」
振られるサイコロ、落ちた目は――5・1・3・5・2!
「5の目来たよ!」
「あと二つ以上……!」
真剣な眼で2度目のサイコロを振るミアさん。
5の目を二つ残して、出た目は――5・5・6・3・1! 5の目が増えない!
「もう一度!!」
最後の振り、5の目はそのまま。出た目は……
――5・5・1・3・1!!
5の目は二つ、『ファイブ』で記録すれば得点は【10】点。しかしボーナスポイントは……
「合計点が51点。残りの『ツー』で2の目を五つ揃えても、63点には届きません。ボーナスポイントのチャンスは、ほぼ無くなりました……ッ!」
「そんなぁ〜〜ッッ!!」
ミアさんは悔しさで苦虫を噛み潰し、愛海さんは頭を抱えて叫ぶ。
そんな二人を見て、私の眼がまた潤み始めました。
しかし、CPUは待ってはくれません。
相手側の8ターン目、3回サイコロを振って出た目は――5・4・5・4・4!
4の目が三つで、5の目が二つ。
『フルハウス』達成で、固定の25点が追加。合計得点は【178点】。更に点差を広げていきます。
「ちょっとちょっと! いくら何でも強すぎるでしょ、そっち!! 少しは手加減しなさいよ!!」
等と劣勢になるにつれて、言い訳がましくなってきた愛海さん。当然Mr.Mにそんな情けは通じる訳もなく、
「愚問にも程がありますよ、貴女。ゲームは常に真剣勝負。そしてお金が懸かってくるのなら尚の事。挑戦者にいい加減なプレイをさせたとあっては、私とて己の矜持が赦しません。
――私からの試練に恐れる者に、ミリオンダイスの参加資格は無いものと知りなさい……!!」
「うっ……!」
これに愛海さんはぐうの音も出ませんでした。
「Mさんの言う通りです。覚悟を決めた矢先に泣き言なんて、私は聞きたくありません。どんな結果であれ、全力を尽くさなければ……!」
「ミア……。あーーーもーーー! 分かったわよ!!」
愛海さんに出来ることは、ただサイコロに委ねる事のみ。半ばやけっぱちになった彼女はサイコロをカップに入れて、その中身を上へ勢い良く放り投げた。すると……!
―――6・6・6・6・4!!
四つ同じ目の役『フォー・オブ・ア・カインド』を、最大の目で一発確定させた!!
「……やれば出来るじゃありませんか」
敵ながらやりおると、Mr.Mは愛海さんのファインプレーに拍手を送る。
「……あらぁ〜、しゅごい……」
対して投げた愛海さんが唖然となって、滑舌も幼くなってます。
「凄いじゃないですか、愛海! 後2回で6出せば、ヨット行けますよ!!」
「あっ、そうか! 挽回しなきゃ!!」
ミアさんに諭され、再び戦意に火を灯す愛海さん。
しかし、3回振っても五つ目の6は出ず。
『フォー・オブ・ア・カインド』で、6の目が四つと3の目を足して【27点】。
ミアさん達の合計得点は【153点】で、点差は25点に。
⚀⚁⚂⚃⚄⚅
―――残り2ターン。
ミアさん達の総合得点は【157点】。残りの役は『フルハウス』と『ヨット』。
CPUは総合得点【193点】。残り役は『Bストレート』と『ヨット』。その点差は、36点!
しかし、最終ターン前の番で両者共に役に達成出来ず、【0点】がスコアボードに刻まれる。
最後に残した役は、ミアさん達が『ヨット』。CPUは『Bストレート』。
いよいよ最終ターンへ、突入します……!!
「……ねぇ、愛海さん。もしもですよ、もし私達が負けちゃったら、どうなっちゃうんですか?」
私は途中から来た為、敗北のペナルティを知らず、愛海さんに説明を求めました。
「うん……賞金になる筈の一億円以上のお金を、あたし達が支払う事になっちゃうの。そしたらもう、ミリオンダイスに参加するどころじゃなくなっちゃう」
「そんな……!」
これには私も相当なショックを受けました。私もミアさん達と一緒に旅して、ミリオンダイスも参加したいと思っていたから。
でも泣き虫で思い込みも激しい私は、私のせいで旅に出れなくなってしまうと思い、急に不安が襲いかかってきた。
「い、いや……! そんなの嫌です!! ミアさん負けちゃったら……私は……!!」
不安の極地に達し、ボロボロと大粒の涙を流す私。最終局面で、彼女達に迷惑を掛けたくないと思えば思うほどその涙は止まらなくなる。
すると、ミアさんが私の元に駆け寄り、泣いている私の頭を撫で始める。
「……? ふぁっ……!」
私は涙で潤んだ眼で顔を上げると、ミアさんは優しい笑顔で私を抱きしめ、泣いて崩れた顔は彼女の胸元に包まれた。
「……ルカ、大丈夫。ずっと前から、私達を待っててくれたんでしょう? だったら私達は……ルカを泣かせるような真似はしたくありませんね」
―――温かい。ミアさんの胸の奥、その魂にはポセイドンの能力がある筈の心が、こんなにも温かい。
そして後ろから、私の背中を覆うように愛海さんも抱いていく。
「そうそう、涙より笑顔! ルカが笑ってくれれば、あたし達も元気になれるよ! だから、笑ってよ……!」
――愛海さんの魂は、ネプチューンの能力。しかしその奥底に眠るのは、太陽のように輝き、私の涙をも乾かす情熱の灯火。
優しさと、情熱が合わさった二人の愛情。その愛は人魚姫の涙も希望に変える。
ミアさんのTシャツをぐじょぐじょにする程に泣いた私。眼は少し赤くなりながらも泣き止みましたが、まだ不安は残ってました。
ヨットの決着、これが決まらない事には気持ちは収まらない。そこでミアさんが提案した。
「そうですね……最後のサイコロは、ルカに振るってのはどうでしょうか?」
「え、ふぇええ!?」
私は涙引っ込むどころか、目が飛び出るほど驚きました。私のせいで負けるんじゃないかって、怯えてたばかりだったのに。急なことで慌てふためく。
「え、でも、それで……それで負けちゃったら、私のせいに……」
「何を言ってるんです? ルカは、勝利の女神になるんです!」
「いーじゃん! あたしとミアを助けると思えば! そうすればルカは、勝利を呼ぶマーメイドになる訳だ!」
ミアさんも愛海さんも同じ意見。私は断ろうとしましたが、私の両手には二人の手がギュッと握り締めていた。不思議と不安が無くなるような安心感に、勇気も湧いてきた。
「…………私が、貴女達の運命を委ねる。それで良いんですか?」
「「―――勿論!!」」
試練のゲーム・クライマックス、ラストターンは私、ルカが運命を決めます……!!
⚀⚁⚂Go to the next turn!⚃⚄⚅
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次回も『ミリオンダイス』でお会いしましょう!byルカ




