第9話 ライゼルさん
訂正報告、過去に出てきたステータス表記に、最大レベルを書き足しました。
ジェスト達がダンジョンを出て空を見上げると、丁度正午を過ぎていた。ジェスト達はダンジョンを後にし、素材の換金の為にギルドに向かっていた。
「…そういえば、いつの間に冒険者登録したんだ?」
「僕が体の傷を治して、病院を出て直ぐですね。何故か大量の視線を感じたんですが…一体なんだったんでしょう」
「…そうか」
どうやら幸の鈍感は継続中らしい。ジェストは少し顔を顰めた。確かに幸の魔法によって身体は完全回復していると思うが、だとしても安静にしていなくて大丈夫なのか?という疑問がジェストの頭をぐるぐる回る。この心配性はジェストの性格上仕様がないのだが、つい昨日まで怪我人だったにも関わらず随分と活発な幸を見ると、大半の人はジェストと同じく悩まされるであろう。
(もう少し待てばよかっただろうか…)
ジェストは幸を早期にダンジョンに連れてきた自分を恨んだ。そんなジェストを見て幸は不思議そうに首を傾げる。
「どうしたんですか?ジェストさん」
「ああ、何でもない」
どうやらジェストはいつの間にか立ち止まっていたらしい。それを認識にしたジェストは終わった事だと割り切って、歩みを進めるのだった。
それから数分後、ジェスト達は冒険者ギルドに到着した。中に入ると、冒険者達の喧騒やら食器類のかちゃかちゃという接触音等、とにかく騒がしい。しかし、一人二人とジェストの隣にいる幸に気付くと、その騒がしさは一層増した。
「あれ!あの子じゃないか!?」「本当だ!」「天使が帰ってきたぞぉ!!」
幸は顔を引き攣らせ、ジェストは呆然としている。ジェストもまさかここまで人気だとは思っていなかったのだ。冒険者達は幸の影響で、何故か隣にいるジェストの事なんて目に映ってすらいないようだ。
「…ははは、誰のことでしょうね?」
幸は後ろを振り返るも、そこには扉が立っているだけで、誰もいなかった。幸が左右に動いてみると、冒険者達の視線もそれに吸い付けられるように追っていった。
「…認めろ、幸」
「ひう」
幸は自分の容姿がどれだけ優れているのかやっと認識したようだ。
「どうもお嬢さん、僕はライゼルと言います。早速で悪いのですが、どうかパーティに参加しては貰えないでしょうか?」
そんな中、一人の男が幸の前でそんなことを言った。その男は煌びやかな装飾の付いた白一色の鎧を纏い、サラサラとした切り揃えられた金髪は、清潔感を漂わせている。そして、整った顔立ち。名をライゼルと言う。
冒険者にはランクと言うものが存在する。E D C B A S と、Sに近づくにつれて冒険者としての格が上がるというものである。ランクが上がるにつれて、そのランク帯の冒険者は少なくなっていく。Sランクは世界でも指で数える程しかいない。そんな中ライゼルはBランクの冒険者だった。
「ねえ、ジェストさん。なんか急に自己紹介されて勧誘されたんですが、これってナンパってやつですよね?」
「…少なくとも、お前の能力目当てでは無いだろう。ダンジョン内部での戦闘も、病院での出来事も漏れてはいない筈だ」
ジェストと幸はお互い目の前にいるライゼルに聞こえないぐらいの声で話す。それを見たライゼルは、やっとジェストの存在に気付いたようだ。
「…何故ここにいる?ジェスト」
ライゼルは幸と話している時とは一変し、随分とドスの効いた声でジェストに問いただした。
「…幸とパーティを組んでいるからな」
その一言で、ギルド内にいる冒険者全員が固まった。一瞬時でも止まったのかと、ジェストが錯覚する程だった。
「…は?お前が?このお嬢さんと?パーティ?…ふはははは!!!ジェスト!お前のジョークにしちゃ面白いじゃないか!」
「いえ、しっかり組んでますよ?」
幸の一言で、またもや世界が止まった。硬直時間は先程より少しばかり長かった。そんな中、ライゼルは震えながら幸に話しかける。
「幸さんと、言ったね?何故、こんな現実を見れない愚図野郎とパーティを組んだんですか?まさか、脅されていたり――」
「いえ自分から誘いましたし、そもそもジェストさんを悪く言うクソ野郎とはパーティなんて死んでもゴメンです」
「グフゥ」
ライゼルは幸の食い気味な返答に、奇声と共に血反吐を吐いた。
「あと、僕は男です」
「」
ライゼルは綺麗に後方に倒れた。
ライゼルさあああああん!




