第7話 コンビ結成
ありがとね
ここはダーテダンジョン入口前。今は早朝だと言うのに、冒険者、商人などなど…沢山の人で賑わっている。いつも通りの風景。しかしそんな中、異彩を放つ二人組が現れた。
「あ、着きましたよジェストさん!」
一人は小さく、白いローブを着た快活そうな女の子…ではなく、男の子の幸である。その手には、いかにも上等そうな錫杖が握られている。
(((何あの女の子可愛い愛でたい)))
周りの人々は幸あまりの女の子っぽさに、その事実に気付けていないようである。そんな一瞬でハートを撃ち抜かれた人々は、隣に現れた一人の人物によって、一気に現実に戻されることになる。
「…ああ」
ボサボサの長い銀髪、深いクマ。そして汚れた軽装備。二人組のもう一方である、ジェストの存在だった。
人々はジェストに「なんでお前がそこにいるんだよ!?!?」という声が聞こえそうな、刺すような視線を送る。
(周りからの視線が痛いな…まあ覚悟はしてたが)
ジェストはその熱い()視線に、思わず溜息した。そんなジェストを見た幸は不思議そうに首を傾げる。
「…やっぱり、僕と組むのは嫌ですか?」
「…そんなことは無い。寧ろ感謝すらしている」
この言葉は、ジェストの紛れも無い本心である。先程の一件で、ジェストは確かに救われたのだ。
それを聞くと、幸はへにゃっと顔の筋肉を緩め、頬を少し染めた。真正面から礼を言われるのはさすがに堪えたらしい。そんな様子を、周りの人々は恨めしそうにじっと見つめている。ジェストは
「…怪我は大丈夫なのか?」
「はい!てかジェストさん目の前で見てたじゃないですか。僕が傷を治すところ」
「確かにそうだが…」
幸は昨日、ダンジョンでのパーティメンバーによる裏切り行為が原因で大怪我を負い、当分の間入院ということになったのだが、なんと回復魔法によって一瞬で治してしまったのだ。
「ほら!この通りピンピンしてますよ!」
幸は昨日まで抉れていた筈の腕を見せながら言った。見たところ特に不自然な所は無く、至って健康そうな白い肌をしていた。
「あ!ジェストさん!着きましたよ!」
「…ああ」
そんなやり取りをしているうちに、ジェスト達はいつの間にかダンジョン一回層に着いていたようだ。
「…そういえば、お前のステータスを確認していなかったな」
「あ、見たいですか?」
幸がステータスと唱えると、光る板が出現した。それをジェストは後ろから覗く。
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影宮 幸 Lv100
HP 5000/5000
ATK 45
INT 896000(+448000)
VIT 47
MND 735000(+367500)
DEX 625900(+312950)
AGI 68
スキル
全回復魔法 全支援魔法 完全言語理解
称号
癒しの勇者 人類の天使
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「…極端だな」
「そうなんですよねー。支援は完璧なのに、物理関係に関しては終わってますからね」
この馬鹿げたステータスは称号が作用しているらしく、どうやら癒しの勇者という称号の効果で、魔法に関するステータスがさらに上がっているらしい。また、人類の天使によって魔法の効果が強化されるようだ。
ジェストは何とも言えない感情に襲われた。自分が弱い事を誰よりも理解はしているが、それでも三十ぐらい歳が離れている子供にこうも軽々超えられるのは流石にくるものがある。
しかしこれは、同時にジェストにとって喜ばしいことでもあった。パーティに回復魔法を使える者がいるだけで、戦闘時の前衛の負担が大幅に減るのである。ジェストにとって一回層は庭のようなもので、滅多に怪我なんて負わないのだが、それでも不安要素が減るのは嬉しいことである。
ジェストはこれからのダンジョン探索に幸が加わる事を改めて実感した。
「…これからよろしく頼む」
「…!はい!よろしくお願いしますね!」
お互いパーティを組んでいるという事実を噛み締めながら、広い草原を歩き出した。
ジェスト達は、草原を歩いて約十五分の所にある毎度おなじみの森まで辿り着いた。
「…大丈夫か?」
「は、はい…!」
幸の錫杖を持つ手が小刻みに震えている。今から幸を殺しかけた灰狼を討伐しに行くのだ。無理もないだろう。
しかしそんな震える体とは対照的に、幸の眼はやる気に満ち溢れていた。真っ直ぐと、森の奥を見据えていた。ジェストはそれを見てホッと胸を撫で下ろす。
幸にとって灰狼はトラウマ同然。しかし、幸自身もそれを乗り越えないと冒険者として生きていけないことを分かっていた。ジェストは逃げ出すんじゃないかと心配していたのだが、どうやら杞憂だったらしい。
「ほんと、なんでお前は虐められていたんだか」
「僕にもよく分かんないんですよ…友達にもお前が可愛すぎるからいけないんだ!とか、俺より目立つな!とか…意味がわからないですよ。何より僕、男ですし…」
(成程嫉妬か)
ジェストは幸の話を聞いて以来、ずっとこの謎に悩まされてきたのだ。ジェストは若干心がスッキリした。
「…お前はもう少し、自分を客観視できるようになった方がいい」
「ゑ?」
ジェストがそう呟くと、幸は困り顔で首を傾げた。
幸くんは愛されキャラだった…?んなわきゃねぇ。
さあそろそろバトルが始まるかもしれないきっと多分もしかしたら。




