第4話 影宮 幸
ちょっと長めかな?
僕、影宮 幸(16歳)の生活は酷いの一言に尽きる。学校でのイジメ、働かない親、そして虐待。何故まだ生きているのか自分でも分からない。そんな男子高校生である。
しかし、そんな生活は突如終わりを告げる。
「うっ…なにこれ!?」
ある日、学校でホームルームをしていると、地面がいきなり光出した。周りのクラスメイトもパニックに陥っている。何かの演出だろうと、冷静に分析するものまで現れた。
だが、光がいっそう明るくなり僕たちを隠す。辺りが白に包まれ、何も見えなくなる。
やがて光が収まり、目を開けると
「…なん、だ。これは」
幸の周りにはクラスメイトがいて、見事にパニクっている。だか、それはさほど問題じゃない。いや問題なのだが、あまりの事態に霞んでしまったのだ。
まず、ここは学校ではなかった。白い壁に囲まれ、所々お高そうな装飾が見て取れる。上を見上げると、天井がとても高かった。再び視線を戻した。すると、真っ直ぐ続くレッドカーペットの脇に沢山の人が並び、その奥にはいかにも我が王様だと言わんばかりの男が、玉座に座っていた。
クラスのヲタク共がありえないものを見るような、そして、歓喜に溢れたような目をしている。
「勇者様、よくぞ起こしになられました」
ヲタク共は何故か飛び上がっていたが、僕は混乱するだけだった。
あれから1ヶ月近くが経過した。この1ヶ月で分かったことは、召喚されたこの世界について、ダンジョンやレベル、ステータスについて、魔物についてなどなど…沢山あった。
まず、この世界はスターティアと言うらしい。そして、この王国をアルマ王国と言い、アルマ王国のあるこの大陸をアルマ大陸と呼ぶ。このスターティアには人族、魔族、獣人族など…多種多様な種族が繁栄しているらしい。割とグローバルに活動している種族もいるらしいが、中には会うことすら困難な種族もいるという。
こうしてこの世界の情報を集める中1番驚いたのが、魔法の存在である。この世界には、漫画やアニメでお馴染みの魔法が存在しているらしい。因みに僕は支援魔法、特に回復系統の魔法に特化している。
そして今、僕達四人は実践訓練としてダンジョンに潜入したのだが
「やっぱお前いらないわ」
「へ?」
いきなりこれである。
「渡部…くん?なんで…」
「ああ、気づいたんだ…ヒーラーは要らないってね」
渡部くんと如月くん、それに川野くんが笑い出す。
…要らない?ヒーラーが?
僕はヒーラーがどれだけ重要なのか理解している。仲間を癒すことも出来るし、支援魔法を掛けることだってできる。
「だって、お前このダンジョンに来てから一度だって役に立ったか?」
「支援魔法はかけてるよ?」
確かにこのダンジョンに来てからは回復こそしてないが、支援魔法はパーティ全員に掛けている。
「はっ、あって無いようなもんだろ。あとなぁ…お前みたいな愚図な奴は要らないんだよ」
「…は?」
ああ、理解した。僕はこれまで重要なことを忘れていた。何故忘れていたのか、きっと浮かれていたのだろう。異世界転移という名の現実からの脱出に。
僕は、イジメられていたんだ。
すると、渡部達は踵を返して歩いていく。僕は慌てて近寄ろうとするが。
「あ、もし付いてきてみろ。お前の顔面に魔法ぶっぱなしてやる」
僕は体を硬直させた。そうすることしか出来なかった。いくら支援魔法で防御力が上がっているからって、勇者の魔法を諸に喰らえば一溜りもないだろう。回復魔法でどうにか出来るかもしれないが、リスクが大きすぎる。
そうしている間に、渡部達は遠くに行ってしまった。残ったのは僕と錫杖一本。不味い、僕には攻撃手段がない。今魔物が来てしまったら、僕は抵抗することも出来ないだろう。
「ガルルルルルゥ」「グアァア」「ガウァウウ」
すると、茂みの奥から灰狼が3匹飛び出してきた。同時に支援魔法の効果も切れた。
「あ」
そして、灰狼達は僕に飛びかかる。僕の至る所を噛み、裂き、喰らう。
「ガウガウアア!!!」「ガググカガ!!!」「ガウッ!!」
「ウアアアアアァァウアアア!?!?!?いだい!いだい!」
あまりの痛さに喉を枯らさんばかりの悲鳴をあげた。回復魔法なんて、とても唱えられなかった。
このまま僕は死ぬのだろうか。
ここで僕は、今までの出来事が走馬灯のように、頭に流れた。殴られ蹴られ、嘲笑われ、蔑まれ、そんな記憶しか無かった。
「せめ、て…しにかたぐら…い、えらびたか――」
何もかも諦めて、意識を手放す瞬間、前方にとある人影を発見した。どうやらこちらに向かってくるようだ。
ここで、僕の意識は途絶えた。
影宮くんを救いたい。




