第2話 1日
ジェストはダンジョンを後にし、冒険者ギルドへ向かっていた。あれから更に五体の灰狼を倒し、今から雑嚢に入った灰狼の素材を換金しに行くのである。因みに、灰狼から剥ぎ取った肉は埋めて捨てた。魔物の肉は硬いわ荷物は嵩張るわ不味いわと、何もいいことがないのである。
ジェストが眩しげに空を見上げると、太陽は丁度真上を通っている。どうやら正午らしい。
(何か食うか)
冒険者ギルドというのは、冒険者を束ねている国営の機関である。冒険者という職業は力がものをいう時が多い。その為、血気盛んな荒くれ者が騒動を起こすことがある。それを止めるために国は冒険者ギルドを創設した。また、ダンジョン内で得た物資を換金する場所が必要だろうと、国で意見が上がったのも一つの要因である。ご最もな意見である。
そんなこんなでジェストは、ギルドに到着した。ギルドにジェストが入ると、中は昼飯を食べている冒険者でいっぱいだった。ここで昼食を済ますのは少し骨が折れそうだ、とジェストは諦めた。騒音、喧騒、とにかく騒がしい。これが毎日繰り返されるのだから、ギルド職員は大変である。
ジェストはそんな冒険者の喧騒なんて一切無視し、ずかずかと受付まで歩く。すると、受付嬢がこちらに気づいたようだ。
「あ!ジェストさん!」
ジェストはその呼び掛けに答えるように軽く会釈をする。ジェストを見るなり名前を呼んだこの元気の良い女性は、名をアリアと言う。歳は20代前半と言ったところか。詳しくは知らない。ジェストは魔物の素材を換金するとき、何故か大体アリアが担当することが多い。
「今日はなんの御用でしょうか…その雑嚢を見る限り、換金ですかね?」
「…ああ」
「では、こちらへどうぞ!」
そう言われて案内されたのは、見慣れた素材換金所。名の通り、素材を換金する場である。
ジェストは雑嚢から灰狼の素材を取り出し、素材用の台に並べる。
「ええ、と。牙に爪に骨、あと毛皮が6枚…」
アリアは早速計算を始める。ジェストはただじっとアリアを待つ。ジェストは知っていた。普通なら10分ぐらいかかるものを、彼女なら数分で終わらせてしまうのだ。
すると、アリアがこちらを向いた。どうやら査定が終わったらしい。
「ジェストさん、終わりましたよ。合計で1000Gです!」
「…多くないか?」
そう、灰狼6体で1000Gは相場よりいくらか高い。別に貰える金額が増えることはいい事なのだが、やはり何か引っかかる。
「ふっふっふ…いつも利用してくれているので、色を付けておきました!」
アリアが近づいてきて、そう耳元で囁く。
(いいのかそんなことして…)
「あと、とても良い状態の素材をいつも持ってきてくれるので、助かってるんですよ」
「…そうか」
ジェストは冒険者として強くは無いものの、倒した魔物の数は多く、その度に解体をしていた。それが原因で上達したのだろう。ジェスト自身も気づいてなかった隠れた才能である。
「また来る」
「はい!お待ちしております!」
アリアはそう言い、ジェストを見送った。ジェストが扉を開け、ギルドから出ていくのを確認すると。
「また来る、ですか。ふふ、嬉しいですね」
そう、頬を染めて独りごちた。
ジェストはギルドから出て、昼食を何処で済ませようかと悩んでいた。
(ギルドは混んでいたな…)
ジェストは少し歩き、広場のベンチに座った。すると、ジェストは懐から何やら袋に包まれた四角いを取り出した。
(携帯食糧でいいか…)
そして、お世辞にも味がいいとは言えない携帯食糧をばりぼりと噛み砕き、飲み込んだ。口の中の水分が全て持っていかれたような、そんな渇きがジェストを襲う。ジェストはすかさず腰に吊るしている水筒の中の水で、喉を潤す。
「…はぁ」
(腹は膨れないが、栄養は入っている。何も問題は無いだろう。)
食事(?)を済ませたジェストは、自分の泊まっている宿へ帰るのだった。




