第12話 極
長くなったよん
「…支援魔法の掛けすぎは危険だと…知ってますよね。だからこその無茶、なんですよね」
「ああ。ステータスを手っ取り早く上げるには、これしかない」
支援魔法を使える者は、冒険者にとって喉から手が出る程に手に入れたい逸材である。それだけ支援魔法は強力なのだ。
しかし、そんな支援魔法にもデメリットはある。
支援魔法を掛けられた者が十分な実力を有していれば、疲れにくくなったりとプラスに働くのだが、未熟であればマイナスに働くこともある。その負荷はその魔法のレベル、初、中、上、特、極、そして掛けられた数に依存する。その負荷はレベルが上がるに連れて軽減されていくが、ジェストはLv10である為、一番低い初レベルの魔法三つ掛けられただけで目眩、吐き気等の症状が出てくる。
「幸の回復魔法を併用すれば、何とかなるだろう」
「確かにそうかもしれませんが、痛みは尋常じゃないと思います。最悪後遺症が残る可能性が…でも、ジェストさんはもう決めたんですね。それに横槍入れるのは少し気が引けますし…わかりました、ホントにいいんですね?」
「ああ」
幸は若干反対気味だったが、ジェストの覚悟を決めた顔を見て、幸の方が折れた。ここで死ぬ可能性が幸の口から出なかったことは、ジェストを少し安心させた。しかし、魔物の足音や呻くような、声が何重にも重なっているような叫び声がジェスト達を一気に現実に引き戻した。
「済まない。早速頼む」
「はい、わかりました…無事を祈ります。《自動回復魔法・極》《身体強化・極》《脚力強化・極》《腕力強化・極》《状態異常耐性付与・極》《状態異常耐性強化・極》《視力強化・極》《武具強化・極》《防具強化・極》《所持品性能強化・極》」
その瞬間、ジェストの体がこれでもかと言う程に光りだした。それと同時にジェストは血管が千切れる音がし、全身から血を垂れ流した。ぼきぼきと鈍く嫌な音もする。流石にこの凄惨な光景を目の当たりにして黙っていられる幸では無かった。
「だ、大丈夫ですか!?!?《回復魔法・極》!」
「うっげふっ…ぐが…はぁ、はぁ、はぁ、なん、とか、いけ、る」
ジェストは幸の《回復魔法・極》と《自動回復魔法・極》の併用によって何とか立つことができていた。幸は何時息継ぎをしているのだろうか、と思われる程、回復魔法を連呼する。
(痛みに、慣れてきた)
ジェストは一応、自身のステータスを確認した。
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ジェスト Lv10/Lv10
HP 50/50
ATK 65(+300000)
INT 60
VIT 42(+200000)
MND 38
DEX 35(+100000)
AGI 70(+300000)
スキル
《状態異常耐性・極》(付与)
称号
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「…本当に幸は化け物だな」
どうやら《身体強化・極》などはステータス+100000の固定型のバフらしい。元々のステータスが低い俺にはピッタリな代物だ。
ジェストは軽く息を整えて――
「行くぞ」
そう言って、その場にめくれた地面と衝撃波だけを残し消えてしまった。否、消えたのでは無い。あまりの速さに幸が見失っただけであった。幸が魔物の方を見ると、そこには一心不乱に剣撃を繰り出すジェストがいた。いや、朧気に残像が見えているだけだった。
「極の魔法は使ったことが無かったけど、まさかここまでなんて…」
幸は自身が回復魔法を掛けなければいけないことを忘れていることに気が付き、急いで掛け始めた。
「これだけの剣撃を浴びせてもまだ足りないかっ!」
「ギイィアアアイギアアアア」
ジェストは己の体が悲鳴をあげていることなど構わずに、一撃一撃を繰り出す。その速度は常人では考えられない程に異常であった。
(やはり、まだ体がステータスに慣れていない…)
元々ステータスの低かったジェストに、いきなり勇者レベルのステータスを付与したため、ジェストはそのステータスの力をまだ完全に引き出せないでいた。
化け物は全身を己の血に濡らしながらも、攻撃の速度は未だ衰えさせない。ジェストは化け物が繰り出す拳を、体にぶち当たる寸前の所で回避していた。
「チッ、面倒臭いな」
この化け物、ジェストが相当数の傷を入れている筈なのにぴんぴんしている理由が、その異常な回復力にある。傷を入れても瞬く間に修復してしまうのだ。
「ギイィイイアアアアイイイイアイ」
「っ!?カハッ!」
そして、攻撃力もやはりそこらの魔物とは比較にならない、雲泥の差があった。今もこうして、慣れていないとはいえ、とんでもない速度で動くジェストに追いつき、腕を横に振ってジェストを森の中へと軽く吹き飛ばした。森の木々は凪倒れ、風景はまるで小さな隕石でも落ちたんじゃないかと勘違いする程に様変わりしていた。
「げふっ!はあ、はあ、まだまだぁ!!」
(懐かしいな、このスリル、ギリギリの戦いが)
ジェストは昔の戦いを思い出した。一匹の魔物に苦戦し、ボロボロにされた。それでも諦めず勝利を勝ち取ったあの日を。
ジェストは体制を建て直し、すぐさま反撃を移る。ジェスト自身痛みこそ感じているが、激痛と表現するのも生温い痛みにそろそろ脳が麻痺してきて感覚があやふやになってきていた。
「よしっ」
「ギイィイイ!?!?」
ジェストの剣撃が先程よりも速く、鋭くなっていた。それは足の速さも同様に、以前より速くなっていた。化け物が慌てた様子で拳を突き出してくるも、ジェストは難なく避けた。
(そろそろ、慣れてきたな)
体がステータスに順応したのだ。普通ならありえない話だが、ジェストの類稀なる才能が、ここで生かされたのだ。当の本人は気付いてはいないらしいが。
すると、徐々に化け物の傷が多くなってきた。どうやら再生が追いついていないらしい。化け物の動きも鈍くなってきたのがわかる。これは好機だと感じたジェストは、先程よりも一層速く攻撃を繰り出した。
「ぁぁぁあああああああっ!!!!!!!」
「ギイィアア、ギイイアギイ!?!?」
その瞬間、ジェストの剣撃は音を置き去りにした。遂に音速を超えたのだ。
(周りが遅く見える…これが付与の力か)
ジェストは化け物が突き出してくる拳をいとも容易く避け、それだけでは終わらずその拳を見るも無惨に切り刻んだ。
「ギギギギアアアアアアアア!!」
「まだだっ!はああああっっ!!」
ジェストの猛進撃は止まらない。拳が終われば腕、腕が終われば肩と、次々に切れ込みを入れていく。流石の化け物もこれには堪らなかった様子で、その動きは見る見る鈍くなっていった。
そして、遂にその時が来た。
「――終わりだ」
「ギ――」
ジェストは目にも止まらぬ速さで化け物の後方に周り、剣筋を化け物の首元に立てる。
ジェストが地面に着地し剣を鞘に収めた瞬間、化け物の首がずれ、ごしゃ、という嫌な音を立てて地面に転がった。体も操り人形の糸が切れたみたいに崩れ落ちる。
「終わった、のか?」
『レベルが上がりました』
「ふぁ!?」
ジェストは突然の謎の声に驚き、素っ頓狂な声を上げた。しかし、これはジェストにとって初めての声ではなかった。
(…レベルアップ時の声…だと?)
ジェストはまさか、と思い急いでステータスを確認する。すると――
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ジェスト Lv269/Lv10
HP 269050/50
ATK 2397065
INT 25960
VIT 259042
MND 259035
DEX 259035
AGI 79900070
スキル
《権限》
称号
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「…は?」
見違えたステータスが、そこにはあった。
圧倒的テンプレェェット!




