第5話 華の世界
放課後3人で部室に集まり、バスケ部の優勝カップの話をしていた。
そこへドアをノックして、1人の女子生徒が入ってきた。
「便利屋部に依頼をしたいのですが」
僕は先を促した。
「私は華道部の部長をやっています。今度他校と試合をすることになったのですが、うちの部は4人だけなので、人数が足りません。試合に参加してもらいたいのです」
「華道?」
僕は、直臣と由紀乃を見る。
2人とも首を振る。
「僕ら誰もやったことないので」
「そこをなんとか。相手は6人。2人1組なので3組です。うちは4人しかいないので2組しか作れません。そこで、お2人に加わってもらえれば3組になります」
「そもそも華道って試合あるんだ」と直臣。
「ありますよ。全国大会もあります」
「じゃあ、直臣と由紀乃よろしく」と僕が言う。
「あいたたた。私、この前手を怪我してさ。だから2人でお願い。男2人コンビでいいじゃない」と由紀乃。
3人でなすり合いが始まった。
そして結局、僕と直臣が出ることになった。
しかし華道なんて全く知らない。
そこで華道部に行き、習うことに。
「そうですね。では、10対7対5かな」
「なんです? その比率は」
「まずはこの、ニューサイランという長い葉っぱを使います。花器に剣山を乗せ、そこにニューサイランを1本真っすぐに挿します。これを10とします。1本目を10とすると、2本目は7、3本目は5の長さに切って挿します」
「ふむふむ」
「挿し方は最初の10の前に7と5を挿します。前でなく横に挿していくと、前から見る分にはバランスがいいけど、横から見るとバランスが悪いんです。あとは、3本の間に花を挿していくといった感じです」
僕と直臣はガーベラやリンドウを挿していく。
「試合ではたくさんの花を使います。教室にある花材は好きに使っていいですよ。あと花には水が必要ですからね。花が水を吸えない状態で無理に挿したりすると、減点になります」
説明を聞きながら花を挿していると、なんだか楽しい。
「2人とも筋がいいですね。では、こんな感じで試合に臨んでください」
「それで試合はいつなんですか?」
「明日です」
「「えー」」
翌日、試合が行われた。
ルールはシンプルだった。
2人1組で、まず一人が5分間花を生ける。
5分経ったところで交代し、もう一人がさらに5分間仕上げる。
つまり、2人で1つの作品を完成させるのだ。
ちなみに5分を過ぎて作業すると失格。
教室にある、花や枝なども全て好きに使って良い。
2人がイメージを共有するのがポイントである。
こうして試合が始まった。
最初は部長たちが勝利したが、2試合目は相手校が勝った。
つまり勝敗は僕と直臣チームにかかっているのである。
試合開始。
先鋒の直臣が、どこからか壺を持って来てそこにじゃんじゃん入れていく。
更に竹を使いそれっぽい雰囲気に。
ここで僕と交代した。
「色がいいな。白・黄色・ピンクと流れるようだ」相手校の生徒が、僕らの作品を見て驚いている。
「あの男子生徒、右の空間にパンパスを置いたぞ。やるな」別の生徒も言う。
僕はこれらの言葉が耳に入り「いける」と思った。
僕はスターチスを手にした。
これを挿せば完成だ。
どこに挿すか。
右か。
いや、中央か。
「10秒前……9……8……」
「ここだ!」
試合は終わった。
両校とも僕らの作品の大胆さと全体の流れの良さに驚いている。
僕と直臣ががっちり握手。
しかし試合は相手校が勝った。
「どうして?」と僕が聞く。
「だって5秒オーバーしたから失格です」
僕は何も言えなかった。




