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第4話 消えた優勝カップ

放課後、3人で部室で談笑をしていると、勢いよくドアが開いた。


「頼む。今すぐ優勝カップを探してくれ」と男子生徒が言う。


「どういうことですか?」と僕が聞く。


「俺はバスケットボール部だ。部室にあった優勝カップが無くなっているんだ」


「いつ知りました?」


「今日だ。昨日まであったんだ」


「わかりました。でもなんで僕たちに?」


「お前ら便利屋だろ。こういうの慣れてるだろ。大事にしたくないんだ」


「え~と便利屋だけど、探し物は初めてでして」


「とにかく頼んだ。じゃあ俺は部活に戻らないといけないから」


そういうとバスケットボール部員は去って行った。


僕はどうする?という感じで2人を見る。


「探し物なんてめんどくさいなあ」と直臣。


「やるならとっととやっちゃいましょう」と由紀乃。


そこで3人でバスケットボール部の部室に向かうことにした。


部室と言っても実質倉庫みたいなものである。


ロッカーなどはあるけど、ボールかごやスコアボードなどが置いてある。


そこの一角に棚があり、展示物が置いてある。


「ここにあったのかな」と僕が言う。


「それでどうするのさ」と直臣。


「聞き込みしかないでしょうね」と由紀乃。


そこで練習の合間に聞き込みを行った。


「優勝カップ?ああ、なくなったらしいな」


「誰かが盗んだんじゃないか」


「あんなもの盗んでどうするんだ」


「あれ持ち回り制だろ? 失くしたら弁償させられるんじゃないか」


それから持ち出しは誰でも出来るのかを聞いてみた。


「まず、部員なら全員持ち出せるだろう」


「部活がない時は部室は閉めているよ。体育でバスケをやる時は開けるだろうけど、それ以外は部活中じゃないと開いてないからなあ」


「昨日新聞部が取材で来てたよな 」


「教師とかは、さすがにないだろうけど一応」


「他の体育館を使っている部活も可能性あるか。もっとも他の部活がバスケの部室に入っていったらわかるだろうけど」


「でもこっそり入ればバレなくね?」


「まあ別に誰も気にしてないしな」


主だった証言はこんなところである。


可能性は


1.バスケットボール部の部員


2.顧問をはじめとする教師


3.取材に来た新聞部


4.体育館の他の部活


5.体育でバスケットボールをやった場合、その時の生徒


この5つが可能性として出てきた。


最後に休憩になったので部長に聞く。


「俺はすぐに戻ってくると思うけどな」


「根拠は?」


「……なんとなくだ」


「勘?」


「そう、勘だ」


部長の意見は参考にならない。


「そういえば教師は知っているんですか?」


「いやまだ知らせていない。だから君たちも黙っていてくれ。機会がきたら、俺から言う」


部長との話が終わると3人で話し合った。


5つの可能性を言い、どれから調査するかを話し合った。


じゃあまずはせっかく体育館に来てるんだし、他の部活の可能性から考えようということになった。


僕が部室である倉庫に向かう。


ドアが閉まっているので開ける。


建て付けが悪いのか、重い。


しかも音がする。


近くの部員に「こんなに重く、音もするの?」と僕が聞くと「ああそうだよ。古いからね」と言ってきた。


たとえ練習試合とかで集中しててもこの音なら誰かが気づく。


他の部活はないと思う。


次は新聞部に行く。


部長が温かく迎えてくれた。


「よく来た便利屋部の諸君。またネタを提供しに来てくれたのかい?」


「違います。昨日バスケットボール部に取材に行きましたよね?」


「ああ行ったよ」


「その時写真とか撮りました?」


「撮ったよ。見るかい?」


「是非」


そして写真の画像を見せてもらった。


その中には優勝カップもある。


「取材は何のために行ったんですか?」


「優勝カップがもうすぐ返還されるから、その前にいろいろ聞いておこうと思ってね。あと意気込みとかだな」


「これって大きいんですか?」と僕が優勝カップを指さしながら聞く。


「そこそこじゃない」


「取材には何人で行きました?」


「3人だ。俺とカメラマンとアシスタント」


「荷物は持っていきました?」


「カメラ以外はメモ帳ぐらいだな」


「なにか気づいたことは?」


「全体で?」


「優勝カップで」


「なんかカップの内部が汚れていたなって印象しかない」


「他の置物は?」


「特にないなあ」


「ありがとうございました」


「で、なにか事件か?」


「いえ、ちょっと気になったから聞いただけです」と僕が誤魔化した。


「じゃあネタの方を頼むよ」


「ネタですか」


「そのためにきたんだろ?」


「違います」


「イカスミはスパゲッティとかで使って食べるけど、タコスミってないのはなんで」と由紀乃が言う。


「おお、それは確かに不思議だ。さっそく取材だ」


新聞部のみんなが調べだす。


それでいいのか新聞部。


どうやら手ぶらで行ったのが本当なら、新聞部も違う。


残る可能性は、バスケ部の部員と教師たちと体育の授業でバスケがあった場合の生徒だ。




体育館に戻ると、バスケ部はまだ練習をしていた。


部長はコートで指示をしていた。


顧問の教師も来ていた。


「ああ、めんどくさい」と直臣が言い、顧問のところに行き、事情を話す。


顧問は驚き、部室という倉庫の中を確認すると全員を集めた。


「優勝カップがなくなったのを、なぜすぐに知らせない」


部長が僕らを睨む。


「なくなったのは今日なんだな?」


「たぶん」と部員の1人が答える。


「たぶんとはどういうことだ」


「昨日の練習の時はあったので」


「そうか。この中に盗んだ者はいるか。いるなら理由を聞くが」


誰も何も言わない。


その後顧問が二言三言注意した後、練習が再開された。


どうやら顧問でもなさそうだ。


あれが演技ならすごいことだが。


次は職員室に向かった。


体育教師がいたので聞いてみる。


「先生、今日体育でどこかのクラスがバスケをやりましたか?」


「いや。今日の体育は全部校庭で行った」


「ありがとうございます」


これで、体育でバスケをやった生徒という可能性は完全に消えた。


となると、部員の誰かが怪しい。


3人で話し合う。


「こうなると部員の誰かだろうね」と僕が言う。


「でもさあ、優勝カップなんて盗んでどうするの? 自分の部屋に飾るの?」と直臣が言う。


「親に見つかったら怒られそうだけどねえ」と由紀乃。


「2人は飾りたいと思う?」


「「思わない」」


では一体真相は。


「なあ、俺思ったんだけど、盗んだんじゃないんじゃないかなあ」と直臣。


「どういうこと」と僕が聞く。


「優勝カップが近々返還されるんだろ。そして新聞部が言うにはカップの内部が汚れていた」


「つまり?」と由紀乃。


「持ち帰って自分で掃除するか、業者に頼むかしたんじゃない。自分らが汚したとしたら、大会から言われるだろうと思って」と直臣が自信に満ちた表情で言う。


「なるほど」と僕は感心をした。


バスケ部の練習が終わった。


顧問も交えてミーティングをしている。


そこへ僕たちも向かい、直臣が先ほどの考えを言う。


「つまり、誰かが自分たちで汚したと思って、こっそり持ち帰ったんじゃないかってこと」


すると顧問が「あの汚れは前からだからな。年季が入っているし」


「そんなあ!」部長が言う。


みんなで部長を見る。


部長がしまったって顔をする。


「大会の委員会だって知ってるぞ。あのカップ、何年も使ってるからな。多少のくすみや傷は当然だ」


「……そうなんですか」


「お前ら、知らなかったのか?」


そして顧問に促されて部長が喋ったのである。


結果的には、直臣の予想はほぼ当たっていた。


昨日部長が汚れに気づき、最後に部室を出る時に持って帰って、家で研磨剤などで磨いて綺麗に戻そうと思っていたという。


これにて事件は解決した。


部長は怒られたが、理由が理由なのでお咎めなしだった。



翌日。


「昨日は大変だったな」と直臣。


「でも解決してよかったじゃない」と由紀乃。


「探し物の依頼はこりごりだよ」と僕が言う。


そして、この日は何事もなく過ぎ、解散となった。


帰りに、下駄箱で靴を履き替えていると、話声がする。


「あれ?傘が無くなっている」


「誰かが盗ったんじゃない」


「そういえばこの学校便利屋部ってのがあったよね。探してもらおうか」


「僕は急いで学校を後にした」

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