第33話 ガッツ
「便利屋部のみなさん試合がしたいです」
部室に入って来た3人の生徒が言う。
「すればいいじゃん」と直臣。
「人数が足りないんです。あと2人必要なんです」
「それでなんの試合?」と由紀乃。
「ガッツです」
「「「ガッツ?」」」
「やっぱり知らないか。ガッツというのは攻撃側がフリスビーを投げて、ディフェンス側が取るスポーツです。もう少し言うと、攻攻撃側が14メートル離れたところから投げて、守備側の5人が片手でキャッチするスポーツです」
「なんかのんびりしてそうだね」と僕が言う。
「とんでもない。投げる方は全力でフリスビーを投げてきますよ」
「片手?両手じゃダメなの?」と直臣。
「片手じゃないと反則です」
「それで攻撃側が投げて相手が取れなかったら得点かな。取った場合は?」と僕が聞く。
「そうだね。投げて守備側が取れなければ攻撃側にポイント。守備側が取った場合はポイントではなく、攻守交替になる。ただし、相手のスコアリングゾーンの外に投げたり、守備側の誰の手にも届かない位置に投げたりした場合はバッドスローになって、守備側にポイントが入る」
「へえ~」と直臣。
「21点を先に取った方が勝ち。他に、11点取ったところでチェンジコート。21点の3セットマッチで2セット取った方が勝ち」
「だいたいわかった」と僕が言う。
「後はキャッチにもいくつかあって、1人が直接キャッチする。1人が弾いて別の選手が取る(フォローキャッチ)。体の一点であれば、何度でもディスクに触れることができる(ボブリング)」
「ふむふむ」
「ゴールエリアは守備側の各選手が横に並び、両手を伸ばした範囲がゴールエリアになる。高さは、手を上に伸ばしたところまでになる。そうだ、投げるときにラインを踏むか、超えるとファールになる。ディスクが90度以上裏返ったら、アングルといわれるバッドスローで相手の得点になる。以上だ」
「面白そうじゃない」と由紀乃。
「こんな競技があったとは」と直臣。
「それで僕らは選手なんだよね? 審判ってわけじゃないよね?」と僕が聞く。
「この競技に審判はいない。セルフジャッジなんだよ」
審判がいないってどうなんだと思ったが、選手としてなら楽しみだ。
僕と直臣が参加することになり、由紀乃が得点係りをやることに。
さっそく校庭の一角で練習とルールの復習。
フリスビーは最高速度130km/hぐらい出るから、大迫力だ。
そして試合当日を迎えた。
聞くと、こちらも相手校も初試合とのこと。
緊張の中、試合が開始した。
試合は一進一退である。
フリスビーを全力で投げると、思ったところにいかないのが面白くもあり、難しい。
相手の視線から飛んでくる方向を判断してみても、全く違うところにフリスビーが来たりするので駆け引きもある。
試合は3セット目までもつれ込んだ。
20対18で、相手側の攻撃だった。
相手の投げたフリスビーは僕めがけて飛んできた。
「来た!」
反射的に右手を出す。
取れる。
そう思った。
次の瞬間。
「ゴッ!」
視界が真っ白になった。
「うぎゃ!」
何が起きたのか理解するより先に、僕は地面に倒れていた。
そして保健室に担ぎ込まれたのである。
「ごめん、試合途中で終わらせちゃって」と僕が両校の選手に言う。
「いや相手が投げたのは90度以上裏返ったアングルだから俺たちの勝ちだ」とこちらの選手が言う。
「いやアングルじゃないだろ」
「アングルだろ」
「アングルよ」と由紀乃が言う。
何故か僕が顔面にフリスビーが当たった瞬間を動画で撮っていた。
動画を確認すると、確かにディスクは地面に対して90度以上傾いていた。
こうして僕らの勝利となった。
「でも、なんでこんな決定的な動画を撮れたんだい?」と僕が聞く。
「たまたま。正一郎がやらかしそうだったから、動画で映していただけ」
とにかく無事に決着がついてよかった。
ところでフリスビーが当たって僕が白目向いてるところをホーム画面にしないでくれませんかね。




