第32話 お弁当が食べたい
部室に行くときに、漫才部の人とすれ違った。
「いつぞやはどうも」と言ってきたので、こちらこそと返す。
そして恐ろしいことに、また機会があったら漫才ライブに出てほしいと言う。
ただし、お題は事前に知らせてくれと言われた。
その時はお題が被ってしまったからね。
部室に着いてしばらくすると、ドアが開いた。
「便利屋部に依頼したいのだが」と男子生徒が言う。
「どのような依頼で」と僕が聞く。
「うちの親が朝がすごく弱くて、お弁当を作ってくれたことがないんだ。だからお弁当を食べたい」
「なるほど」
「便利屋部って3人いるんだろ?なら、3日分お願いしたい。1人500円渡すので、それで作ってくれないか?」
僕は直臣と由紀乃を見た。
2人とも頷いている。
「わかりました。明日からでいいかな?」
「ああ。頼むよ」
「ちなみに要望とか、好き嫌いは?」
「そういうのはない。なんでも食べれる」
男子生徒は僕らに弁当箱と500円ずつ渡して帰って行った。
「順番だけどどうする?」と僕が聞く。
「正一郎、俺、由紀乃でいいんじゃないか」と直臣。
「それで問題ないわ」と由紀乃。
僕は帰りにスーパーへ寄った。
メインはトンカツかからあげか。
スーパーでは鶏のもも肉が安かったので、からあげにすることにした。
夜から肉を漬け込んでおく。
朝は少し早く起きて、ご飯を炊いて、おかずの準備。
鶏のからあげに、卵焼き。
ソーセージにプチトマトとレタスも添える。
それらを弁当箱に入れて完成。
お昼にその男子生徒に渡した。
「おお!すげえ。これぞお弁当といった感じじゃないか」
男子生徒は喜んで食べている。
なんだか僕も嬉しくなった。
翌日は直臣の番だ。
僕は直臣について行き、直臣が男子生徒に弁当箱を渡した。
弁当箱を開けると、チャーハンだけだった。
それでもチャーハン弁当もいいじゃんといいガツガツと食べる。
最後は由紀乃だ。
翌日、由紀乃に付き添い、男子生徒の元に行く。
由紀乃が弁当箱を渡す。
なんかカラカラと音がする。
僕は嫌な予感がした。
男子生徒が弁当箱を開けると、白米と缶詰が2つ入っていた。
さすがに男子生徒も言葉を失った。
「ちょっとひどすぎないか、由紀乃」と僕が言う。
「だって朝早く起きるの大変なんだもん。でも缶詰は私のおすすめよ」
これはお弁当と呼べるのだろうか。
男子生徒がかわいそうになった。




