第28話 直臣の朗読
朗読会はまずまずの客入りだった。
文芸部の3人が読み終わると、直臣が立ち上がった。
直臣がタイトルを読み上げる。
「新しい自分」
私は性別を間違えて生まれたのだろうか。
日に日に女性への憧れが募る。
おしゃれな服に身を包み、カフェで甘いものを食べてみたい。
街でイケメンとすれ違った時に、チラ見されてみたい。
ならいっそなってしまおうか。
かっこだけでも変えてみよう。
そう思うと楽しくなる。
かわいい服選びと、ウィッグ選び。
そしてメイク道具も買ってみよう。
メイクの仕方は動画サイトでこれでもかというほど見て研究した。
そして服とウィッグが届いた。
私はその服を見てあまりのかわいさに喜んだ。
しかし1分後には絶望へと変わる。
服が着れない。
女性とは、肩幅が違いすぎるのだ。
私はトップスは諦めた。
今着ているもので我慢しよう。
その代わりにスカートはかわいいのを履きたい。
ただし、買うのはロング。
フレアでもいいけど、ミニはダメ。
毛の処理などがあるからだ。
ロングならその辺りを隠せる。
そしてトップスは白のシャツに。
ボトムはロングのガーリーなものにした。
部屋で着てみて鏡を見るとテンションが上がる。
ウィッグを被ると遠目にはそれらしく見える。
ちなみにウィッグはボブを買った。
ロングだと手入れが大変らしくて断念した。
ウィッグは前髪をセルフカットで整える。
次はメイクだ。
メイクは濃いめにしては絶対にいけない。
それだと若さが失われる。
なのでナチュラルメイクに。
これが難しい。
いくら動画をたくさん見ても、こればっかりはトライアンドエラーだ。
初めてのメイク道具に悪戦苦闘。
でも絶対にかわいくなってやるという意思で何度も試す。
困ったのは眉毛だ。
薄く剃るか。
でもそれだと普段の生活に支障が出る。
再びメイク動画を見て、なんとか誤魔化す。
さて、思い切って外に出てみようかと思ったら靴がないのに気が付いた。
通販で見るがサイズがない。
仕方がないのでスニーカーで。
正直服装については残念で仕方がなかった。
憧れのかわいい服で外を歩くというのはできなかった。
ただしスカートは履いている。
女性に見えるウィッグとメイクはした。
初めての女装。
とりあえずこれで満足しなければ。
次こそはおしゃれな服と靴を買ってみせる。
玄関のドアノブに手をかけた。
心臓の鼓動が高鳴る。
人に見られる。
怖い。
でも自分で選んだ道。
ドアを開けて勇気を出して一歩踏み出す。
そして近くを歩いてみた。
歩き方や所作は研究した。
女装だとバレないように、背筋には気をつけた。
人がやって来た。
男の人だ。
すれ違う。
どう思われただろう。
振り返るとスマホをいじりながら歩いている。
私のことは見ていないようだ。
若い女性が来る。
同性だと思ってくれるか。
それとも簡単にバレてしまうのか。
女性が通り過ぎる。
何も反応がない。
反応がないのが逆に不安だ。
どっちなんだろう。
すると若いイケメンが歩いてきた。
チラ見をしてくれるか。
通り過ぎた時に見られたかどうかはわからない。
なぜなら、目を瞑ってしまったからだ。
初めての女装、初めての外歩き。
成功だか失敗だか分からなかった。
1つだけ言えるのは、恥ずかしかったけど楽しかった。
次はもっと人の多いところへ。
家に戻ると座り込んだ。
緊張の糸が切れたのだ。
でも心地よい満足感が襲ってくる。
メイクを落とし、服を脱ぐ。
新しい自分になれたのかな?
直臣は読み上げると周りを見る。
遅れて拍手が起こる。
「これはフィクションだからな」
そう言った直臣の耳は赤かった。




