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第25話 剣の世界

先週、1度も依頼が来なかった。


僕はとても嬉しかった。


放課後、部室に集まっては3人で喋って、本を借りたり、だらだらしたりするだけ。


平和最高!


しかし、それが嵐の前の静けさだったとは、このときの僕は思ってもいなかった。


「便利屋部に依頼をしたいんだけど」と男子生徒が言う。


なんか久々に聞いた気がする。


「来週試合があるんだけど、人数が足りないので出てほしい」


きた。


お決まりのフレーズ。


うちの学校は部活が多すぎて、どこの部活も人数不足なんじゃないかと思う。


「あのう。それであなたは何部なんですか?」と僕が聞く。


「フェンシング部だ」


「忙しいのでお断りします。お帰りください」と直臣が言う。


「どう見ても暇そうだが」


「これは調査してるんです。お帰りください」と再び直臣。


「そこをなんとか頼む」


「来週試合って無理でしょ。一週間じゃ、ルールを覚えて終わりでしょ」と僕が言う。


「フェンシングは高校になってから始める人も多いんだぜ。だから大丈夫」


「でも一週間で試合する人はいないでしょ」


「頼む。君たち3人は理想的なんだ。男子2人がエペとサーブルで、女子の君がフルーレで。これだと対戦相手と同性になるんだ」


「エペ? サーブル? フレール?」


「フルーレな。ではよろしく頼む。いつでも練習に来てくれ」


そういうと男子生徒は去って行ってしまった。


「どうする?」と直臣。


「やるしかないんじゃ」と僕が言う。


「私もやんなきゃいけないの?」と由紀乃。


とりあえずルールを調べていった。


「なになに、フェンシングには3種目があると。エペ・サーブル・フルーレ。エペは頭からつま先まで全身すべてが有効で、サーブルは腰より上の全身(頭・両腕を含む)が有効。フルーレは頭部と両腕を除く胴体部分が有効」


「つまりエペが全身、サーブルが上半身、フルーレが胴体のみか」と直臣。


「え~と、さらに、サーブルとフルーレには攻撃権が与えられ?」


「攻撃権ってなんだ?」と直臣。


「攻撃権は「相手より先に攻撃をする」と手に入れられる。「何をもって攻撃になるのか」というと、片方が前に出て、もう片方はそのままその場に止まっていて、そして両者同時に突いて両方色ランプがついたする。この場合、前に出たほうが攻撃権を持っているので得点になる。止まっていて、相手が来たから剣を出しただけの側は得点にならない。」


「う~ん? わかったような、わからないような」と直臣。


「両者が同時に前に出たとする。右の選手が少し早く突き出し、左の選手が遅れて突き出したとする。この場合も、前に出るまでは両者同時だったのですが、剣を先に突き出した右の選手が、その瞬間から攻撃権を得る」


「つまり、先に攻撃を始めたほうが攻撃権を持つってことか?」


「まあ……簡単に言えばそうみたい」


「簡単に言えてないだろ」


「攻撃権は相手から奪い取ることができる。最も基本の形が、相手の剣を叩くこと。相手の剣を自分の剣で叩いてから攻撃すれば、叩いた側が攻撃権を持つ」


「あ~めんどくさい。じゃあ俺は攻撃権が関係ない、判定が全身のエペで、正一郎はサーブル、由紀乃はフルーレな」


「後は挨拶とかかな。アン・ガルドが「構え」、アレが「始め!」、アルトが「止まれ!」、サリューが「礼」。最低この4つは覚えろだって」


「これ何語?」


「フランス語だね」と由紀乃。


「あとは、5点先取。3分間で決着がつかなければ得点の多いほうが勝ち」


「あ~もういい。とっとと練習しようぜ」


こうして服を実際に着て、練習をすることに。


僕と直臣で対戦する。


とりあえずわかりやすいので、エペでということに。


直臣が突進してきた。


結構怖い。


僕は後ずさりをする。


直臣の攻撃。


僕はカウンターを狙う。


結局、直臣の勝ち。


防具で痛くないと思っていたが、首や骨の部分を突かれると痛かった。



練習試合当日になった。


一週間。


正確には5日だけだが練習をしたので、僕らは結構できるんじゃないかと思った。


しかし、練習試合が始まると、エペの直臣は速攻で負け、僕もサーブルで相手に手も足も出なかった。


最後は由紀乃のフルーレでの試合だけ。


「アレ!」の声とともに試合が始まる。


相手が先に動き、相手に攻撃権が。


しかし由紀乃は相手の突きを剣で防ぎ、逆に相手の胴に突きをしてポイントを取った。


「おおー!」と会場が盛り上がる。


結局、相手が勝利したが、由紀乃は最後まで善戦をした。


「あ~悔しい」と由紀乃。


こうして1週間におけるフェンシングの依頼は終わった。


着替えて帰ろうとした時、由紀乃の服にシールのようなものが付いていたので、僕が取ろうとすると、由紀乃は手で僕の手を払い、逆に僕の胸を突いた。


「なんでよ」


「だって攻撃しようとしてたじゃん」


どうやら、フェンシングに一番ハマっていたのは由紀乃のようであった。

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