第19話 学内ライブをやりたい
直臣がスマホで写真を撮っている。
「なにを撮ってるの?」と僕が聞くと「風景」と答える。
なんでも写真部みたいに写真にしたいという。
コンビニで出来るみたいだ。
そんな話をしていると女性3人がやってきた。
「わたしたちライブやりたいです」
「ライブってなんの?」と僕が聞く。
「ライブはライブですよ。バンドの」
「やればいいんじゃないのかな」
「今やればいいって言いましたね。では一緒にお願いします」
僕はこの人、何を言ってるんだろうと思った。
「君たちは楽器なにができるの?」と直臣が聞く。
「ボーカル」
「ボーカル」
「ピアノ」
「合唱部かよ!」と由紀乃が珍しくツッコむ。
「ダメじゃん」と直臣。
「だから便利屋部のみなさんなんとかお願いします」
直臣と由紀乃が顔を見合わせたあと僕を見る。
「俺はギターが弾ける」
「私はベースができる」
「僕はボーカル……」
「じゃあお前はドラムな」
「そんなあ。ドラムなんてやったことない」
「なあに一週間死ぬ気で頑張ればできるよ」と由紀乃。
「死にたくないです」
こうして地獄の一週間が始まった。
正直適当に叩いていればいいと最初は思っていた。
そして直臣の指導のもと、特訓が始まった。
1~2日目:8ビート、キックとスネアの基本。
3~4日目:ハイハットを安定させる、テンポを一定にする。
5日目:フィルインを2〜3種類覚える。
6日目:曲に合わせて通して叩く。
7日目:ミスしやすいところを重点練習。
とにかく僕は思った。
一定のテンポを維持するって、こんなに難しいのかと。
日々猛特訓の成果でなんとか形だけは作れた。
8ビートだけは叩ける。
曲の構成を覚えている。
フィルインはほぼしない。
とにかくテンポを崩さない。
サビでクラッシュを叩ける。
そしてフィルインも、「ジャーン、タタタタ、ドン!」というのを1か所入れられた。
こうして体育館のステージで1曲だけライブをすることになった。
ピアノは置いてあるので、ドラムを音楽室からみんなで運んできた。
そして土曜日の運動部が終わった後にライブが行われたのである。
「名もなきバンドです。聞いて下さい」
ピアノの出だし。
それにベースが加わる。
ギターが鳴る。
そして二人の歌声が重なった。
僕は必死にドラムを叩いた。
僕もリズムを一定にするのに必死だ。
そして演奏の終わりになって僕は思った。
今バンドとして一体になった。
なんとか止まらずに最後まで叩けた。
観客はごくわずか。
拍手も少し。
でも充実感がみんなを襲う。
やったあ。
音楽最高!バンド最高!
そう思った時に体育教師がやって来て、「お前ら、許可とったのか!」と怒鳴った。
みんなが一目散に逃げる。
でもドラムの僕だけ逃げ遅れた。
そして僕だけこっぴどく叱られたのである。




