第15話 聖地巡礼
部室に行くまでいつもと違う行き方をした。
茶道部の前を通ると、お茶菓子の話で盛り上がっていた。
そして部室の外にはチャノキが植えられていた。
みんなごめんね。
お茶を摘めるようになるまでそんなにかかるとは知らなかったんだよ。
そして部室に入ると、知らない生徒がいた。
直臣と由紀乃がやっと来たという。
この知らない生徒は漫才部の人で、今度漫才ライブをやりたいという。
しかし部員が4人だけなので2組しかライブが出来ない。
そこで僕たちに参加して欲しいということだった。
「いや、素人に漫才なんて無理でしょ」と僕が言う。
「そこは頼むよ。便利屋部だろ」
「脚本を用意してくれるの?」と直臣が聞く。
「そこも自分たちで考えてくれ」
「そんな無茶な」と僕が言う。
「そこをなんとか頼む」
「それでいつなの?」と直臣。
「3日後」
「無茶過ぎる」
「だからお願いしにきた。便利屋部ならなんとかしてくれるって聞いたから」
誰だそんな嘘情報を流しているのは。
「いいじゃんやってあげたら。正一郎と直臣で正直コンビでいいじゃん」と由紀乃。
「嫌なコンビ名だな」と直臣。
「じゃあ当日は15時30分までに来てくれ。頼んだぞ」と言って漫才部の人がダッシュで部室を出ていった。
僕と直臣は仕方なくネタを考え始めた。
その後は通し稽古もやり3日後を迎えた。
「では漫才部のライブを始めます。トップバッターは聖太徳子で飛鳥時代です」
1組目が終わり、まずまずのもりあがりといった感じだった。
そして僕らの番が来た。
「次は正直コンビです」
「「どうも正直コンビです。お題は聖地巡礼です」」
直「わたし、この前初めてアニメの聖地巡礼をしてきました」
正「いいねえ。どんな感じだった?」
直「もう1か所1か所が感動だったよ」
正「僕も行ってみたいねえ」
直「着いて、ここで主人公が立ち止まった場所を発見した時は、写真撮りまくったね」
正「簡単に主人公がどこで立ち止まってたか分かるの?」
直「それが写真を撮ろうとして見比べるんだけど、微妙に角度が違う。角度が合ったと思ったら距離が違う。距離も合わせたと思ったら高さが違う」
正「めちゃくちゃ細かいな!」
直「20分ぐらいかけて、ようやく『ここだ!』と思ったら、最初の場所だった」
正「20分何してたんだよ!」
直「次は主人公が働いてるお店を撮ろうとしたんだけど、一般の方々が通ってるのでなかなか写真が撮れない」
正「それは仕方がないね」
直「しかもカメラ構えて待ってると、通りすがりの人に見られて、誤魔化したりね」
正「何を誤魔化してんだよ!堂々と撮れよ!」
直「いや、なんか引け目があるんだよ」
正「自分でも分かってんじゃねえか」
直「それでようやく人がいなくなったので写真撮ったら、角度が違っててやり直し」
正「今まで何待ってたんだよ!」
直「次はその日のメインの場所に向かったんだよ」
正「いよいよだね」
直「その場所に着くと、脳内でオープニングやBGMが流れ出す」
正「それはありそうだね」
直「そしたら自分の他にもカメラ構えている人がいてね」
正「さすが人気スポット」
直「手で『お先にどうぞ』とか、謎の譲り合いが始まる」
正「何だその平和な戦い!」
直「撮り終わったら会釈して去るんだけど、見直したらなんか納得できない構図で、また戻る」
正「一回帰れよ!」
直「そしたら『ここで撮るといいですよ』なんて言ってくれたりするんですよね」
正「なるほど、そこは巡礼者同士の仲間意識があるんだ」
直「その場所で撮ったら、もうぴったりなんだよ。教えてくれた人に尊敬の眼差しを向けて、『ありがとうございます』って言っちゃったね」
正「そんなに?」
直「そんなに」
正「じゃあ、その写真見せてよ」
直「ほい。これだよ」
正「……なんか暗くない?」
直「天候ばかりはどうしようもないからね」
お客からやや受けの拍手が。
でもやりきったぞ。
すると僕らに依頼してきた人が驚きと焦りの表情を見せる。
まさかド素人が3日でここまでの完成度にびっくりしたのだろうと思った。
そして依頼してきた人は汗をかきながら壇上に向かう。
「あ・あのどざえもんです。お題は聖地巡礼……」
お題被りであった。




