第11話 もっと聞いて欲しい
直臣と由紀乃が演劇論をしている。
2人とも演技に持論を持っているようだ。
でも、もう演技はしないと思うんだけど……
水を差すのもあれなんで、2人が話しているのを黙って聞いていた。
そこへ男女の生徒がやってきた。
「あの、便利屋部にお願いがあるのですが」
「なんでしょうか」
「私たち放送部なんですが、お昼の放送とかって聞いてくれています?」
「なんか音楽流してるよね」と直臣。
「あと、なんかたまに喋っている」と由紀乃。
「そうですか……もっと私たちのことを知って欲しいんです。そこでお昼に放送する案を考えて下さい」
「今は何やってるの?」と僕が聞く。
「音楽流して、たまに学校行事を喋ったり」
「ちなみに時間とかあるの?」と直臣が聞く。
「15分以内です」
「部活紹介とかは。部長呼んでインタビュー。うちの学校変な部活も多いし」と直臣。
「インタビューってなんかいいですね」
僕もそれはいい案だと思った。
そして変な部活の筆頭が便利屋部だろうとも思った。
「蘊蓄とかはどう。みんな結構食いつくと思うよ。例えば鉛筆のHBの意味とかホッチキスの正式名称とか知らないでしょ?」と由紀乃。
「それもいいですね。私気になりますもの」
「学食の会社が変わったじゃない。それに定期的に出すものも変わるって話だから学食紹介。食レポだね」と僕が言う。
「それもいいですが食レポをうまく言えるかな」
「月曜は学食、火曜は部活紹介、水曜は蘊蓄、木曜はお便りコーナーかな。金曜はどうしよう」と由紀乃。
「金曜は放送部がフリートークでいいんじゃない。一週間の感想とか、来週の予定とか」と直臣。
「フリートークなんて私たちには無理です」
「別に堅苦しく考えることはないよ。購買のパン美味しかったねとか授業で思ったこととか、受験頑張れとか、先生にインタビューとか」と直臣。
「つまりなんでもありってことですか。でもこれだとラジオみたいですね」
「そうだね。ラジオっぽくてもいいんじゃないかな。あとは時間が余ったら学校行事について話したり、曲を流したりすればいいんだし」と僕が言う。
「みなさんありがとうございます。なんか楽しい気持ちになりました。もっと私たちの声を聞いて欲しかったので」
放送部が帰って行った。
翌週から学校の昼休みに変化があった。
昼食中、放送に耳を傾ける人が多くなった。
そして放送後にはその内容について意見をしあったりする者も。
そして金曜日のフリートークの日がやってきた。
「今回私たちは昼休みの放送を変えるために便利屋部に依頼をしました。みなさん色々意見を出して私たちに協力してくれました。便利屋部は素晴らしい部活です。みなさんもなにか困ったことがあれば便利屋部に頼ってはどうでしょうか」
僕はなんてとんでもないことを言っているんだと思った。
僕は立ち上がった。
「みなさんも、なにか困ったことがあれば便利屋部に頼ってみてはいかがでしょうか」
「やめろ!」
僕は教室を飛び出した。
放送室に向かって走る。
便利屋部の宣伝だけは止めてくれ。
僕は、依頼者が列をなしている光景を想像した。
嫌だ。
絶対に嫌だ。
便利屋部が有名になるなんて。
僕は放送室の扉を勢いよく開けた。
「ちょっと待って!」
放送部の2人が驚いてこちらを見る。
「便利屋部の宣伝はしなくていいから!」
「え?」
2人はきょとんとしている。
「でも、便利屋部のおかげでこんなに楽しい放送ができるようになったので……」
「感謝はいい! 宣伝はいらない!」
その瞬間、放送室の外から声がした。
「便利屋部って、どこにあるの?」
「さあ?」
「なんか困ったことあったら頼めるらしいよ」
僕は頭を抱えた。
もう遅かった。




