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第10話 映画に出よう

「映画に出て欲しい?」と僕が言う。


部室には映画部の面々が来ていた。


「君ら便利屋なんだろ? 役者として自主制作映画に出て欲しいんだ。見たところ3人は役柄のイメージにぴったりだ」と監督を務める人が言う。


「どんな映画なんですか?」


「タイトルは”女子高生探偵殺人事件に挑む”だ」


「僕たちの役柄は?」


「まず主役の女子高生、美明はうちの看板女優が務める。そして相方役の静羽を由紀乃にお願いしたい。犯人役の隼人は直臣。そして最後に、社長役を正一郎に頼みたい」


「わかりました。役をこなしてみます」と僕は直臣と由紀乃を見ながら言う。


「ありがとう。ではこれが台本だ」と3部の台本を渡された。


そして撮影日まで、3人は役作りに励んだのであった。



夜の教室で撮影が開始される。


学校には特別に許可をもらったそうだ。


時間は19時。


外はすっかり暗くなっている。


自主制作映画ということもあり、新聞部も取材に来ている。


監督や主役の人にインタビューをしている。


僕らを見つけると部長がやってきた。


「君らも出るのかい?」


「はい。今の僕たちは役者です。今役作りに入っているので」と僕が言う。


「それは悪かった。君らの演技にも注目してみるよ」


「ええ。任せて下さい。台本は3人とも読み込んでいますから」


「最後にこんな時に申し訳ないがネタを提供してくれないか?」


「ガムに賞味期限がないのはなんで?」と由紀乃が言う。


「それだ!」


新聞部がお礼を言って去って行った。


新聞部がいなくなると、3人とも準備に入る。


特に出番の多い主人公の相方の静羽役の由紀乃は少し緊張も見える。


犯人役の隼人の直臣は余裕が感じられる。


1番緊張しているのは社長役の僕かも知れない。


そして撮影が始まった。



激しい雨が、教室の窓を叩いていた。


午前0時。


大時計が12回鳴った直後、女子高生の美明と静羽は、廊下の奥から大きな物音を聞いた。


二人が教室に入ると、男性が床に倒れていた。


すでに息はない。


机の上には10時15分で止まった懐中時計。


窓とドアは内側から鍵がかかっていた。


「密室……」


美明が震える。


そのとき、黒いコートの男が現れた。


「そこから離れろ!」


さらに使用人も駆けつけた。


「私は見ました。この男が昨日、書斎に入っていくところを」


男は叫んだ。


「違う! 俺は昨夜ここには来ていない!」


美明は男を見つめた。


「今の言葉、おかしいわ」


「何が?」


静羽が尋ねる。


「私たちはまだ殺人が起きた時間を話していない。それなのに、この人は“昨夜”と言った。つまり、殺人が昨夜起きたことを最初から知っていた」


男の表情が変わった。


美明はさらに教室を調べた。


「そして、この時計も偽装ね。誰かがわざと10時15分で止めたんだわ」


「じゃあ、犯人は誰なの?」


静羽が聞く。


美明は答えず、床を指さした。


「この泥を見て」


男の靴底と同じ泥が、窓の近くに残っていた。


「犯人は雨が降ったあと、庭からこの教室に入った。


でも、密室に見せるため、窓を閉めて外から鍵をかけた」


美明は窓枠を調べた。


「細い糸を使ったのね。鍵に糸を結び、窓を閉めたあと外から糸を引く。そうすれば外からでも鍵をかけられる」


男が後ずさる。


「証拠はない!」


「あるわ」


美明は机の下から細い糸を取り出した。


「これよ。雨で濡れた糸が切れて、ここに落ちていた」


男は黙り込んだ。


しかし美明には、もう一つ気になることがあった。


死体の手に握られていた紙。


そこには「静」と一文字だけ書かれていた。


静羽は青ざめた。


「美明……違う。私じゃない」


「分かってる」


美明は静かに笑った。


「これは犯人が静羽を犯人に仕立てるために残したものよ」


男が突然走り出した。


だが、外ではすでに警察が到着していた。


男は取り押さえられた。


警察の取り調べで、男はすべてを認めた。


時計を10時15分で止め、窓に細い糸を使って密室を作った。


さらに、使用人に自分の姿を見せてアリバイを偽装し、静羽の父親にも恨みがあったことを知っていたため、「静」という紙を死体に握らせたのだった。


「なぜ私まで巻き込んだの?」


静羽が尋ねると、男は答えた。


「警察の目を君に向ければ、俺は逃げられると思った」


美明は首を横に振った。


「でも、あなたは一つだけ失敗した」


男が顔を上げる。


「何を?」


「あなたは完璧な密室を作ろうとした。でも、本当に完璧な密室なら、窓の外に泥があるはずがない。


雨の日に外から窓を閉めた証拠を、自分で残してしまったのよ」


男は何も言い返せなかった。


やがて犯人は連行されていった。


夜が明けるころ、雨も止んでいた。


静羽は美明に言った。


「怖かったけど、美明がいてくれてよかった」


美明は笑った。


「私たち、友達でしょ」


二人は朝日を浴びながら教室を出た。


殺人事件は、これですべて終わった。


犯人は逮捕され、殺人の真相も明らかになった。


そして美明は、二度と誰かが復讐のために人生を壊すことがないように、探偵として人の心と向き合っていこうと決めた。


――女子高生二人が挑んだ密室殺人事件。


その真相は、静かな朝とともに完全に幕を閉じた。



「オッケイイイイイイイイ」と監督の声が響く。


「これで撮影終了! みんな、お疲れ様!」


スタッフから拍手が起こる。


撮影は無事に終わった。


出番の多かった由紀乃と直臣は、無事に仕事を終えホッとしている。


しかし僕だけは不満であった。


社長は出ていたかって?


死体が社長だよ。

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