3-7 村の仲間たち
その後、六人はそれぞれのペアに分かれて周辺を一通り捜索し、浄化対象の不在を確認した。
確認を終えた後、少年たちは合流して元来た道を歩き、拠点の停車位置に戻った。
山坂夫妻は早馬たちの姿を見るや否や、高校生四人に駆け寄り、思いっきり抱き着いてきた。
「無事だぁ! 無事でよがっだぁ~!」
「もう! 心配で心配でたまらなかったのよぉ~!」
夫婦は顔をくしゃくしゃにして泣いた。
その熱烈な出迎えに、四人は感激を通り越して呆れてしまう。
「父さんも母さんも大袈裟だっつーの」
「おじさんもおばさんも痛いって……」
「こっちには総二郎さんも菫さんも居たのになぁ」
「むしろ、わたしたちのほうが二人を心配していたのよ」
四人は少し厳しめの口調で言った。
それでも、早馬の両親はお構いなしに喜び続けた。
そのなかで、部隊長の通喜山総二郎は少し申し訳なさそうに咳払いをした。その横で、副隊長の通喜山菫も夫と同じような顔をしながら二回手を叩いた。
その音で、山坂夫妻は魂が切り替わったかのように口を塞いで背筋を伸ばした。他の退魔師たちも、隊長二人に顔を向ける。
ただ、この場の空気は穏やかなままだった。
総二郎は改めて隊員たちを見渡し、口を開く。
「浄化任務、完了だ。宿で休んだ後、村に帰還しよう」
彼の言葉で、早馬たち四人の初めての遠征部隊任務は終わりを迎えたのだった。
任務の後、退魔師十四人は普段の服装に着替えてから車で市街地へ移動し、村が手配していたビジネスホテルに宿泊した。
全員個室だった。食事は各自で済ませることにした。高校生四人は近くのコンビニで弁当を買い、それぞれの部屋で食べてからすぐに眠りについた。
四人は皆、初めてのことばかりで非常に疲れてしまっていたようだ。
翌朝、回復した退魔師たちはホテルで食事をとった後、車で退魔村へ向かった。薫と桜子はホテルで遠征組と別れ、下宿先のアパートへと帰っていった。
帰る途中、サービスエリアに寄って昼食をとり、また村に向かう。村に着いた時には昼過ぎになっていた。
早馬たち四人はそのまま帰り支度をし、村入り口のバス停に行った。
出発時間を待つ間に、親八人に加えて、悪ガキの秀と紗夜、農作業着姿の総二郎と菫、そして退魔村頭領の荒月茜が見送りにやってきた。
高校生四人の前にバスが来て止まる。
その扉が開いた直後、山坂父が名残惜しそうに話しかけた。
「今日くらい家に泊っていけばいいのに」
「無理無理、明日から学校始まるんだぜ」
早馬は首を横に振りながら目元を緩め、車内に乗り込んだ。
次に、秀と紗夜が手を大きく振りながら声をかける。
「聖菜さん、また帰ってきてくださーい」
「また遊んで欲しいですわー!」
「いいよー。ってか、その話し方まだ続けてたんだ……」
聖菜は明るく苦笑しながら、バスの中へと上がった。
続けて、総二郎と菫が微笑みを向ける。
「圭市での任務、頑張ってこいよ」
「お勉強も忘れずにね」
「は、はい。しっかりやります」
良也は少し緊張したように一礼して、バスの中に足を踏み入れた。
最後に、荒月が一歩前に出る。
「もうすぐで満月の夜がやってくる。くれぐれも気をつけるんじゃぞ」
「わかりました。わたしたちに任せてください」
鈴は穏やかながらも自信に満ちた笑みを返し、バスに乗った。
そして、四人はバスの乗車口から顔を出し、村人に向けて手を振った。
「いってきまーす!」
「いってらっしゃい!」
見送りの退魔師たちも手を振り返す。
「ドア閉まります。ご注意ください」
運転手の平坦な声が聞こえた瞬間、早馬たち四人は顔を引っ込めて座席に着く。
エンジンの振動で車体が揺れ、バスが出発する。
親、自分たちに懐いている子ども、憧れの人、面倒見の良い頭領。そんな故郷の人たちに見送られながら、早馬、聖菜、良也、鈴の四人は圭市へと戻っていくのだった。
第3章はこれで完結です。




