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みゆの思い出話 其の八


 みゆの思い出話 其の八


 気が付けば太陽先輩のご実家にお邪魔してクリスマスが過ぎ、除夜の鐘も聞き終わり、新年を迎えていました。


 このお休みの間、太陽先輩の幼馴染であるせつなさんや、つばきさんとは毎日ドタバタと過ごし、気が付けば数日が過ぎていました。


 時間が経つのはなんとまあ早いものなのでしょうか。楽しい時間なのは間違いないのですが、太陽先輩とはこれっぽっちもイチャラブ出来ていません。


 周りの方のキャラが濃い為、太陽先輩との時間が取れず、刻々と時間だけが過ぎて行きます。その原因のひとつとなっているのは達兄ぃです。しれっとせつなさんと付き合っていました。

 

 お似合いなのですが、達兄ぃが上手にせつなさんの手綱を引いている感じがあります。


 表面上は私達と騒がしく過ごしていますが、仲睦まじく、隠れてチュッチュしています。尚、達兄ぃ曰く『あれで意外と乙女』らしいです。


 それに比べて私達は全然進展がありません。あのクリスマスの日、私の中で何かのタガが外れ、恐れ多くも襲い掛かってしまったのですが、これも運命の神様に見放されているのか、つばきさんが狙ったようなタイミングで現れ、未遂に終わり、今を迎えています。


 ……これだけ望んでもキスのひとつも出来ないカップルっておかしくないでしょうか。ちょっと涙が出そうです……。


 太陽先輩の実家に滞在するのも残すところ今日を含め、あと三日です。本日も変わらずまたあの賑やかなメンバーと過ごすことでしょう。


 ただ一つ、この旅行で私自身、変わった事があります。太陽先輩とお付き合いを始めてからも私は実は騒がしいのは苦手のままでした。


 ですが、度を過ぎる程の賑やかさを誇るせつなさんの影響か、賑やかな場所が苦ではなくなってきました。むしろ、自然に笑う事も多くなりました。


 流石はかつて太陽先輩の性格を変えただけあります、もの凄い影響力です。


 そして美味しいご飯を食べ続けているせいか、最近ちょっと太ってしまったかもしれません。特に胸周りとお腹がヤバめです……。もうこれ以上成長しなくて結構です。


 と、常々思っていましたが、つばきさんのスタイルを見てますと胸の大きな女性も満更でもない気がしてきています。


 むしろ追いつきたいとさえ思っています。だって太陽先輩がチラチラと見る姿が目につきますので。


 どうやら太陽先輩は大きい人が好みのようですね。他所の女性にふしだらな視線を送る件については成敗対象で後程懲らしめる予定ですが、自分の体が少し好きになりました。


 本当に不思議な方達です。太陽先輩の周りの方は。


 さて、今日はこの後、初詣に行く予定となっています。太陽先輩も隣で準備中です。


 ……今日は思い出話が思いつかないですね。というよりも全て出し尽くしました。思い出は有限ですからね。掘り尽くすと無くなるのは自明の理です。


「よし。じゃあそろそろ初詣に行きましょうか」


 どうやら太陽先輩も準備が整ったようです。達兄ぃは既に出発済みです。彼女の巫女さんが居ますから。


「はい、今年もおみくじで【大吉】を引いて見せます」


「はは、みゆちゃんなら簡単に引けそうですね。俺はどうせまた【吉】辺りかなぁ……。俺の記憶の限りじゃ【吉】以上引いた覚えないですから」


 人生において一度も大吉を引いた事が無いのですか? なんと運の無い方なんでしょうか……。私は二回に一度は大吉を引けていますが……。

 


 神社の前に来ますと地元の方でしょうか。談笑されている方々が見えました。思っているよりは人が集まっていましたが、普段行っている神社と比べると失礼ながらシンプルに空いてますね。歩きやすくていいです。


「お? 太陽、みゆ。こっちこっち」


 達兄ぃが社務所近くで手を振っています。中には巫女さんの衣装を着たせつなさんがいます。神々しく、まるで別人のような清楚さがあります。


「さあ、太陽! 久々に地元のおみくじを引いていきな! ま、今年も【吉】だろうけどな!」


 はい……いつものせつなさんでした。お口を開かなければ完璧なのですが。そんな訳でせつなさんの勧めで参拝前におみくじを引く事になったのですが……。


「大……凶?」


 太陽先輩に続いて引いたおみくじ。その私の手の中で開かれたそれは、未だかつてない結果が記されていました。


 この大凶という結果、漫画などでよく聞く話なのですが、現実ではあまり出会う事はない結果でしょう。そもそも大凶自体を封入していない神社も多いそうなのですが、せつなさんのご実家の神社にはばっちり封入されていたようです。


 内容はなんかいろいろ頑張っていきましょうね? 的な事が書いており、それほど悲壮感を誘うような事は書いてはいませんでした。


 ただ、恋愛運だけはのっぴきなりませんでした。


『上手く事、運ばず』


 シンプルにそう書いてありました。泣きそうです。


 まさかの内容に、がっくりと肩を落としている私を太陽先輩は懸命に励ましてくれました。ちなみに太陽先輩は安定の吉らしいです。

 

 私は人生初の大凶を引いたので、この流れで太陽先輩は大吉でも引いたのかなぁ……とちょっと思ったのですが。ブレずに吉を引くあたりは流石と言えます。 


 沈む気持ちを必死に奮い立たせ、イチャついてる二人を捨て置いて境内に参拝に向かいました。お賽銭を投げ入れ、全身全霊を込めて神様にお願いしました。


 健康運、学業運、金運……全てをそっちのけて恋愛運の上昇を。かつてない程に念入りにお願いしました。もはや私には神頼みしか道は残されていません。


 年初からこれでは先が思いやられます……。ここまでくると、太陽先輩とは結ばれない運命にあるのかもと考えてしまいます……。


 そんな半ば諦めにも似た感情がこみ上げて来た時でした。俯いていたところ、肩を叩かれたので顔を上げたら暖かい感触が唇を覆ってきました。


 太陽先輩が……近い!? え? ふぁっ!? こ、これって……アレですよね!?


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