嫌よ嫌よも好きのうち
秘密基地の中はストーブが焚かれてはいるものの、プレハブ構造なので外の冷気は完全には防げず少しばかり寒い。
とはいえ、外とは雲泥の差があるけどね。しかし子供の時は特に気にならなかった寒さだが、高校生になった今は少しばかり骨身に染みる。
若いやつだって寒いもんは寒いって事だ。子供は風の子でない。人の子である。
「ったく、この唐変木は……一体いくつなんだ? この頭には何が詰まってるんだ?」
あぐらをかいて隣に座るせつなに罵声を浴びせられながら、丸めた新聞紙で頭をパスパス叩かれている。尚、それほど痛くはないのだが、妙に精神に来る攻撃でメンタルはもう既にバッキバキである。
俺、十七歳だけど泣きそう……。
だがこの状況をいつまでも甘んじて受けるつもりもない! 俺だっていつまでも子供じゃないんだ!
「だぁぁっ! やめろ、せつな! 大体お前達こそこんな場所で何してんだ!? あれか!? 恋の告白でもしようとしてたのか!?」
「ああ、そうだが? 悪いか? もうしたわ。どっかの誰かさんと違ってな」
「あっさり認めたぁぁ!? そしてなんかディスられたぁぁあ!!」
さっきから一人で道化師になっているのだが、隣に居るみゆちゃんも驚きを隠せないでいる様子だ。
「あ、え? 達兄ぃとせつなさんが? あんなに仲悪かったのに?」
ごもっとも。雪合戦した時なんか『ぶっ●す』なんて卑猥な言葉飛び交ってたもんな。
「俺も驚いたよ。タイマンでも張るのかと思ったらいきなりだったからな。まあ俺も二つ返事でOKしてやったんだがな」
「ちょ!? 確かにこっちから告白はしたんだけども、そんなに上から——」
いつものようにまた大騒ぎになる。と思ったのだが、そうはならなかった。丸めた新聞紙を振り上げるせつなの腕を達也は掴み、ぶちゅっと唇を合わせやがったんだもん。
「達兄ぃ……? えっ? えっ?」
いかん、箱入り娘のみゆちゃんには生々し過ぎる現場である。完全に顔真っ赤ガクプル状態になってる。ちなみに俺もこの衝撃的映像に膝にはきてる。
「んっ!! んんっ……。ん……」
最初こそもがいて抵抗の意を示していたが、それも徐々に無くなり、最後にはだらりと力なく手を伸ばす始末。
おい、静かになって蕩けた顔になるな。何満喫してやがるんだ。そんなのせつなのキャラじゃねえだろうが。もちろん絶対に口には出さないが。
「ま、こいつと俺とはこんな感じになったってこと。それにヤンチャな素振りは表だけで実はこれが意外と——」
「だっしゃあああ!! はい、ストップ! もうストップ! 言うな!? それ以上言ったらそれ以上言ったらぁぁ!!」
我を取り戻したのか、顔面を真っ赤にして達也にくってかかるせつなに対し、鬼の首採ったりのしたり顔の達也。
まさかあのせつなに女の部分があったとは……。
しかしもみくちゃにされている達也の顔も満更ではない。あの女性に興味の無かった達也が本気で好きになったようだ。
「はぁはぁ……こっちの事は置いといてだ! そこのロクにキスも出来ない残念なカップル! あんたらもこの際だ! 今こでブチューとやっちゃい——ふぎゅ!?」
「いいんだよ、こいつらにはこいつらのペースがあるのさ。俺達がとやかく言う必要はない」
達也がせつなの頭を押さえて割って入ってきた。
そうだよな……。俺達には俺達のペースがある。流石は達也、良く分かってくれて——
「んんんっ!! んんっ!」
生暖かい感情に身を任せていると、突如、頬を染めて真っ赤になりながらみゆちゃんが迫って来た。尚、タコさんのお口で。素振りは可愛いけどちょっと目が本気で怖いです。
どうやら目の前の別カップルさんの一連イチャラブに当てられたのか、もしくは相当羨ましかったのか、完全に我を忘れて見境がなくなってしまってるようだ。
とりあえずお兄様のお話、聞こえてました? 俺達のペースでいきません?
「ちょっ!? みゆちゃん!? 落ち着いてぇ!?」
気が付けば俺の腕を掴み、尚も口を尖らせるみゆちゃん。完全にその表情からは我を忘れているようだ。目が完全にイッてらっしゃる。
そのまま強引にブッチュ~とされるかと思った時だった。冷たい風が秘密基地内に舞い込んだ。その発生源に全員が目を向けた。
「あ~……ごめん、もしかしてお邪魔……した?」
両手一杯に荷物を持ったつばきが現れた。
「今日はクリスマスだし、この秘密基地でみんな集まってパーティする予定にしてたから一杯食べ物持ってきたんだけど……」
その後、冷気に当てられて我を取り戻したみゆちゃんは絶句してうずくまっていた。




