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実家に行こう!


 月日が流れるのは早いものであり、アッという間に期末テストも終わって冬休みへと突入した。街には目の前に迫ったクリスマスの曲が流れているのだが、クリスマス商品の脇には早くも次の季節商品である、正月用品が並び出しているのが見える。


 他国と自国の祝い事を一緒くたに楽しむ日本ならではの光景だと思う。


 そんな世の中がジングルベルモードに入っている中だが、我が家ではクリスマス感は一切なく、至って通常営業。今は実家に戻る為に荷造りを勤しんでいるところである。尚、彼女となったみゆちゃんの住居は未だに見つかっておらず、変わらず同居生活中となっている。


 今年のクリスマスと正月は田舎で迎えるのでこちらでは特に準備はしていない。もともとクリスマスグッズを持ってもいないが。

 そもそも一人暮らしの高校生の家でツリーや飾りつけをしてボッチを楽しんでいたら結構痛いと思う。


「太陽先輩のご実家……き、緊張します……。ま、前髪、変ではないでしょうか!?」


 先ほどから鏡で何度も前髪を整えているみゆちゃんなのだが、実家までの道のりは長いのでまだそこまで気にしなくていのではないかと思う。


 そもそも前髪自体をそんなに気にしなくてもいい説あるよね。女の子は物凄く気にするようだけども、セット前とセット後の差が俺にちょっと分からない。


 ちなみにすでにみゆちゃんの荷造りは終えており、先日時間指定で我が実家に郵送済みである。便利ですね、宅配便って。


 というよりも俺は実家に残した服があるからそれほど大荷物にもならないが、みゆちゃんは別だ。女の子って色々荷物が増える傾向にある……とは聞いていたが、かつてこの家に来た時に使用されたクソデカスーツケースを二個を持っていくと見せられた時はどうしようかと思った。


 少々の荷物なら問題ないが、新幹線で移動するのに邪魔でしかない為、先発で送ってもらった。


 ちなみに俺の実家はみゆちゃんの家みたいに八時間半はかからないが、それでも片道四時間はかかる。ガチの雪国です。


「それじゃそろそろ時間なので行きますか。達也も駅のホームで待っていると思いますし」


「はい、ああ……緊張して来ましたぁ……。て、手を、手を繋いで下さい!」


 まだ出発すらしていないのに緊張されても困るのですが。まだ家の中だし手を握るぐらいならまあ、なんとか……。


 そっと手を伸ばそうとした時であった。スマホが震えたのを感じた。


「ん? 電話か。もしかして達也かな?」


 ポケットから取り出し液晶画面を見ると『楠田くすだ つばき』と表示されていた。



「あ~……いったいどした? 何があったんだ?」


 駅前で待ち合わせていた達也が俺の顔を見るなり心配そうな声を上げた。そりゃそうだ。俺の頬には特大の手形がついているのだから。

 頬がベリーホットであり、カイロ要らずである。


 家から出発する直前、かかってきた電話。それは地元に居るもう一人の幼馴染、つばきからだった。


 俺としたことが完全に気が抜けていた。隣にみゆちゃんが居るにも関わらず、いつものノリで電話対応してしまったのだ。


「太陽先輩ってなんだかんだ言いながら随分な女たらしですね!?」


 この寒い中、蒸気を上げて感情を露わにしているのは激おこみゆちゃんである。誠心誠意の謝罪兼事情は説明させてもらったのだが、未だに信じてくれていない。


「へぇ、あのみゆが感情剥き出しで怒ってるじゃないか……。これまた珍しい事だな。流石は太陽。愛されてるねぇ~」


「達兄ぃ!!」


「ひえっ、怖い怖い♪」


 なにやら従妹同士でじゃれ合っているのだが、こっちはまるで笑えない。しかしまさかあのタイミングでつばきから電話がかかってくるとは……。


「太陽先輩っ!」


 とても厳しい目線を向けられた。しかしかつて味わった事のあるような冷たさはなく、むしろ熱くたぎるような目線である。


 どっちも怖いんだけどね?


「言っておきますが、私は現地で確認が取れるまで信用しませんからね!? そもそも何ですか! 向こうさんからの『また、私と一緒に……どうかな?』って!! 地元ではそういう人だったんですか!? 見境無しですか!?」


 盗み聞きされた箇所の誤解が酷い……。大変鼻息も荒いし、美人が台無しである。それでも美人だけど。標準のパラメータが高過ぎるからマイナス効果が仕事してないんだよなぁ。


 みゆちゃんが先ほど発した言葉は事実であり、つばきが俺に対して発した言葉では間違いない。ただ、つばきにはあの野生児せつなをも大きく凌ぐ、大きな特徴がある。その旨をお話したいのだけども、聞く耳持たずの状態となっている。


 とりあえず今は落ち着いてもらうしかない。誠心誠意、真心を持って対応して怒りを鎮めねば。


「みゆちゃん信じて、ね? この目、この目を見て下さい。これが嘘を付くような——」


「見えますっ!! 女垂らしの浮気者の目に見えます!」


 そう見えちゃったかぁ……。俺の目って胡散臭い目なのかな? アイプチしたらマシになる?


「とりあえず落ち着けって、みゆ。どうせあれだろ? 他の女が太陽と仲良くしているのが気に食わないだけなんだろ?」


「だけとはなんですか! だけとは! とても重要なファクターです!!」


 あ、そうなんだ。嫉妬、ジェラシーってやつか。うん、可愛らしいなぁ。しかし随分と気分が高揚していらっしゃる。このままでは美女が野獣になってしまう。


 とりあえず今は沈静化に惜しみない努力を注ぐとしよう……。


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