カップルのお見送り
「う~ん! いっぱい美味しい物も食べれたし、お土産も大量に買ったし、不甲斐ない唐変木の幼馴染にも彼女が出来たし。うん、はるばる田舎から出てきた甲斐があったよ♪」
俺へのディスをばっちり含んだ言葉を放ちながら駅前で背伸びをするせつな。
結局、前日は強引に俺の家に泊まり一晩を過ごした。みゆちゃんも付き合う事になった立役者であるせつなを追い出す訳にもいかず、渋々ではあったものの、お泊りを許可した。
おかげで俺は玄関前の僅かなスペースで丸くなって雑魚寝する事になった。宿主の扱いが虫けら以下の件ね。
せつなには問答無用で俺のベッドは強奪されたからね。本当夏で良かった……。冬だと確実に風邪を引いていると思う。
ちなみにそんな俺を哀れに思ってか、何度もみゆちゃんが布団に誘ってきてくれたのだが、いくらお付き合いする関係になったとはいえ、それは流石に一線を越え過ぎだと辞退させてもらった。なによりせつなに見られている訳だし。
そして翌日、昨日の成功報酬との事で散々たかられ、これまた散財する羽目になった。まあ、バイト代の実入りがいいので多少なら問題は無いのだが、普通一人暮らしの高校生におごらすか?
思わず、せつなの両親であるおじさんとおばさんにチクってやろうかとも思ったが、その仕返しがホワイトデーの三倍返しを越えそうなのでぐっと胸に秘めておいた。
せつなを敵に回してはいけない。冗談抜きでマジで身を亡ぼすことになる。
「昨日はまんまと一杯食わされましたが……。お礼は述べさせてもらいます。どうもありがとうございます。おかげで念願が叶うことが出来ました」
せつなを見送る俺とみゆちゃんなのだが、せつなとの話の傍ら、なんと俺達は手を繋いじゃっている。しかも恋人繋ぎ。小っちゃくて柔らかいの……。
正真正銘、何処から見てもカップルの所作である。でも夏休みが終わったらどうなるんだろう。確実に学校のやつらにもバレてしまうだろう……。
刺されないよね? 痛いのはマジで嫌だからね?
「いいの、いいの。今度は二人で遊びに来てね? 太陽もおじさんとおばさんに報告しなくちゃいけないもんね? こんな美人の彼女さんをゲットしたんだから? まあ私が先に報告しておくけど♪」
「冷やかすのは止めろって……。まあ、その感謝はしている。今度の長期休みには実家にも顔は出すようにするよ」
もともと冬休みには帰ろうと思っていたところだ。正月ぐらいは実家で過ごすのも悪くない。
「にしし、楽しみにしてるよ。それじゃあ私はそろそろ帰るね。……それではお二人さん、末永くお幸せに」
「あ、はい……」
俺達二人に別れの挨拶をするその姿は、いつもの高飛車な態度ではなく、姿勢を正して穏やかな笑顔と素振りを見せた。そのあと、振り返ることなく駅の改札をくぐり抜けて行った。
「……ほんと何者なのですか、あの人。去り際、やけに神々しかったのですが」
「うん? ああ、せつなの実家は神社だからね。現役JKでバイトで巫女さんもしてますから」
まあ田舎の神社なので大した規模ではないですがね。
「……そういえば先日、部屋のお掃除をしていた時ですが、本棚に辞書のカバーでカモフラージュしていたえっちい本見つけました。その表紙、巫女さんの格好をしていたのですが? そういうことですか?」
ああ……死にたい。いや、その望みは願わなくても叶うかな? 目の前に執行人が居る訳だし。
「ち、違いますよ!? 別にせつなをダブらせていた訳ではなくてですね!? てか良く見つけれましたね、あの隠し場所を……」
あれ? 繋がれた手に結構な痛みが……随分と握力ありますね? ミシッてますよ? 普通に叫びたいぐらい痛いのですが。完全に怒ってますね。
「これからは私が居ます。自重下さい。尚、既に廃棄済みです」
「はい、申し訳ございません……。以後このような事は……」
夏の終わりにエロ本がまたバレて、冷たい目を投げかけらた。でも『私が居ます』って物凄いパワーワードですね……。本人、理解してるのかな……。




