せつなさん、太陽家に着弾
安藤さんと共にせつなの我儘気ままショッピングに付き合い、最後はバッティングセンターで滝汗を流して俺の家に戻って来た。
久しぶりに本気で疲れた。そして安藤さんの疲労も心配だ。あの野生児と一日付き合うのは、相当な基礎体力がないと不可能だ。
しかしそこは流石は達也の従妹と言うべきか。確かに疲労は相当溜まっているようだが、家に帰って来ても安藤さんはせつなへの威嚇をやめないところをみると、血筋って怖いなと思う。
尚、安藤さんの威嚇は当の本人には微塵も感じていないようだが。
「いやぁ~、しっかしすんごい球打つね、みゆちゃんは! 私よりも飛ばしてたじゃん! なんかスポーツとかしてんの?」
「馴れ馴れしく名前を呼ばないで下さい。それと先に言っておきますが、せつなさんの寝る場所はここにはありませんから。定員オーバーです」
「さあ~てと、明日は午前中は余裕があるからどこ行こっかなぁ~。あ、先にシャワー借りるね~」
「ちょっと、話聞いてますか!? あ、もう……勝手に人の家を!」
俺は今晩の晩御飯に得意のオムライスを作っているのだが、先程から二人の会話が成立していない。自由奔放に行動するせつなと完全に自分の家と化してしまっている安藤さん。もうどっちも間違ってる。
胃が痛くなってきた……。どうして俺はこんな不幸を背負わなければならないのだろうか。とりあえず胃薬を摂取しておこう……。
しかしこの状況よ……。一人暮らしの男の家に女の子が二人もいるのに、片や友人の従妹で手を出せない美人のグラマラスな後輩。もう一方も美人で見た目は可愛い幼馴染だが、一切俺を男として見ていないときている。
俺には女難の相でも出ているのだろうか? もしくは何かに憑り付かれているとか? 厄除けにイワシの頭でも玄関に飾っておこうかな。
「太陽先輩っ! あの人、全く話を聞いてくれません! どうなっているんですか!」
「うん。そういう子なの。俺もほとほと困ってるの」
遂にクレームがこちらに回ってきてしまった。言っておくが天上天下唯我独尊を貫くせつなにはどんなクレームも無駄です。
「あ、そうだ~! ほらほら、折角だしあとで恋バナとか聞かせてよ? なんだかんだ言って付き合ってるみたいなものなんでしょ? お風呂も一緒に入ってるって言ってたしぃ」
浴室からでかい声で叫んできた。余計な事言ってないでとっとシャワーを浴びやがれ。
しかしこいつはやる事なす事、無茶苦茶なのに意外に計算高さもあるんだよな。俺と安藤さんが一緒に風呂に入った事をきっちりあのドタバタの中でも覚えてやがったか。
「……付き合ってはいません。同居人です」
「太陽ってさ、ありえないぐらい唐変木でしょ? みゆちゃんの想いとか全然伝わってないんじゃない?」
おい、姿を消してまで矛先変えてディスり続けるんじゃねえよ。せつなのオムライスだけケチャップ無しライスにするぞ? もしくは鬼のようにグリンピースを混ぜ込んで、グリーンピースライスにするのもやぶさかではないぞ?
「そうですね。その意見には同意せざるを得ません」
おっと風向きが……あれ? おかしいな。安藤さん? なぜその波に乗ったの?
「どうせ太陽の事だから、みゆちゃんからの熱いアプローチも総スルーしてるんでしょ?」
「はい。そちらも間違いありません」
ちょい。アプローチって何? 早く一人暮らし出来る物件探せってこと? じゃあちょっと敷居下げてもれませんかね?
「そうなの、ほんとそういうとこなの、太陽って。優良物件なんだけど、事故物件なのよ」
「まさしく」
なんか先程まで散々言い争っていたのに急に仲良くなってますね。まあ、一方的ですが。とりあえずもう放っておこうと思う。てか早くシャワー浴びろよ……。見えねえけど、いつまですっぽんぽんで喋ってるんだよ……。




