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みゆの思い出話 其の四


 みゆの思い出話 其の四


 今日は清水の舞台から飛び降りる覚悟を持って太陽先輩が居るお風呂場に突撃したのですが、またもや功を成し得ませんでした。信じられない結果です。

 

 しかし今回は私も相当恥ずかしかったです。正直心臓が張り裂けそうでした。あと、昨年買った水着が想像以上に小さくなっていた事に驚きました。辛うじて着る事はできましたが、ぱっつぱつで非常に苦しかったです。


 やはり今年も水着は新調しないといけないようです。毎年の事ではありますが、いい加減に胸の成長は止まって欲しいです。私の切なる願いです。それにしてもどこまで大きくなり続けるのでしょうか……先行きが不安です。


 そういえばこの水着にも思い出がありましたね。そう、あれは暑い夏の日でしたね……。



≪≪≪≪≪



 重なる蝉の鳴き声が、まるでオーケストラの合唱かのように聞こえてくる夏真っ盛り。


 学校は夏休みに入っており、早々に宿題も終わらせてしまった私は、特に親しい友人も居ないので夏休み中はほとんど達兄ぃの家に遊びに来ていました。本日も例に漏れずお邪魔しています。


 とはいっても、達兄ぃも毎日私に構ってくれる訳ではありませんので、今日のように一人の時も多々あります。


 でもそれはそれでいいのです。一人は慣れてます。しかし今日も一段と暑いです。こんな日は屋内のプライベートプールで涼を取るに限ります。


 部屋を借りて全身に丁寧に日焼け止めクリームを塗った後、持参した学校で着用している水着に着替え、プールサイドに作られたタープの張られた休憩所に腰を下ろしました。


 わざわざ学校用のスクール水着を選んだ理由は、純粋にプライベート用の水着が洗濯中だからです。どうせ毎年サイズアウトして買い替える羽目になるので、多くの水着は持つことはしません。


 そしてわざわざ外の混み合ったプールにも行きたくありませんし。


 誰も居ない故、学校指定のスクール水着でも問題はありません。まあ、一応執事さんは安全の為に定期的に見に回ってくれてますが。彼は特別枠です。


 早速ひと泳ぎして火照った体を冷やし、タープの日陰に入ってビーチベッドに寝転がって読書をする。最高の夏休みの過ごし方です。


 飲み物を一飲みし、心地の良い風が吹いてきて少し眠気が襲ってきた時でした。


「達也の家ってプールまであんのかよ……」


「ああ、流石にそんなにデカくはないけどな」


 遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきました。どうやらこちらに近づいて来ていますね。どんどん声が大きくなってきます。

 話の内容からもこのプールに来ることは間違いないようです。


 にしてもまた一緒に居たのですね……。あの人はどれだけ達兄ぃと仲が良いのでしょうか。ほぼ毎日遊んでいるのではないでしょうか?


 しかし相変わらず賑やかな人です。忖度無しに言えばやかましい人です。折角の夏の癒しのひと時が台無しです。


 それと達兄ぃは問題ありませんが、他の人にあまり水着姿は見せたくありません。どうせ嫌らしい眼で見られるだけですから。


「うん、誰か居る……なんだ、みゆか。お前、昨日も来てたじゃねえか。人の家でくつろぎ過ぎだろ?」


「従妹なので問題は無い筈です」


「おおっ……」


 むっ。やはり達兄ぃと仲が良くても所詮は男。私の水着姿を卑猥な目で——


「すんげえデケぇプールじゃねえか!! 軽く二十五メートルはあるんじゃん!! 何がそんなにデカくはないだよ! 十分デケぇじゃなねかよ!」


 ほう……そっちが第一印象なのですか? 水着の女性を目の前にしに反応しないなんてまるで子供ですね。  

 我ながら矛盾しているのは重々承知なのですが、そこまで堂々とスルーされるとそれはそれで少し来るものがありますね……。


「……って、あ、安藤さん居るんじゃんか! し、しかも、み、水着!? す、すみませんっ!!」


「水着を見て謝られても困ります。しかも学校指定のスクール水着ですから気にしないで下さい」


 なぜかつんけんしてしまいました。もともと水着を見られる事に嫌悪感を抱いていた癖に、あまりの和宮先輩の興味の薄さに少々イラっとしてしまいました。


 ……どうしてでしょうか。少し変な気分です。



≪≪≪≪≪



 今にして思えばあの時から唐変木の兆しはありましたね……。この水着も随分と小さくなってしまったので本来なら廃棄するところなんですが……。


 これはある意味記念品なのでとっておくことにしましょう。


「ちょ、ちょっと安藤さん!?」


「安藤?」


 呼び名が違った為、冷たい目で睨んでみました。太陽先輩は未だに家に居る時は三回に一回はうっかりして苗字呼びしてきます。尚、外での名前呼びはノーミス。


 ほんとどこまで唐変木なのでしょうか……。


「み、みゆちゃん! 二度とあんなことしちゃダメだからね!?」


 ここまでしても揺れない志はある意味賞賛に値します。私は正直、押し倒される気持ちで攻め込んだのですが……。


 このままでは非常に不味いです。久しぶりに会う幼馴染とやらに全てを持って行かれてしまう可能性があります。

  

 それだけはなんしても阻止しないといけません。しかし幼馴染ですか……とんだ伏兵がいたものです。


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