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バイト先で


「どうでしょうか、似合っておりますでしょうか?」


 学制服から喫茶店の接客用の真新しい制服に着替えた安藤さんが姿を見せた。


 突き上がった胸部を長めのエプロンが這い、縛られたエプロンの紐がよりくびれたウエストを強調させている。更に後ろを向くとツン上がったお尻のシルエットがロングスカートにうっすら浮かび上がり、細い足首がチラリと見える。


 露出はほとんどなく、カフェ定番の濃い茶色のシックな色合いの制服なのだが、着る人が着るとどんな服でも衣装になるのだと改めて思い知った。


 達也や安藤さんが言っていた二人暮らしによるお金の心配はしなくていい理由は、安藤さんも俺と同じバイト先で働くからであった。当然かのように俺と同じ日にしかシフトは入れていないらしい。


 店的には歓迎しがたいバイトだよな……。


「ああ、可愛いぃ、超可愛い!! 萌え! 天使、いや神ぃい!! 安藤さん、雇ってほんっとうに良かったよぉぉ!!」


 そんな可憐に制服を着こなす美少女の横で、白髪の少し頬のこけたベストが似合うナイスミドルのマスターがはっちゃけてた。どうやら大歓迎の模様……もはやシフトが被るとかもどうでもよさそうである。

 

 まるでアイドルが目の前に現れたかのように目を輝かせて喜んでいらっしゃる。まさに無邪気とは今のマスターの状態を指す言葉であろう。

 

 悲しいかな、安藤さんの登場により今までの俺のマスターのイメージが一瞬でぶっ壊れてしまいました……。それはもう粉々にね。何てことしてくれるんですか?


「お褒めに預かり恐縮です。ところで太陽先輩からのご感想がまだなのですが?」


「あ、え、うん、似合ってると思うよ? めっちゃ可愛いし」


「そ、そうですか……あ、ありがとうございます……」


 口を尖らせ頬を染めた。いや、そんな流し目を送ってこないで? 感想を求められたからお返ししただけでありまして……。


「ずるいなぁ~!! 和宮君ばかっりぃ!! 時給下げようかな……」


 これ以上、俺の中で作り上げたマスターのイメージをご自身で壊していくのは止めてくれませんか?

 それに何故に時給が下がるの? あまりに横暴が過ぎませんこと? 


「それは困ります。先輩と私は一つ屋根の下で暮らす、いわば運命共同体です。稼ぎが悪くなればそれだけ二人がひもじい思いをする事になります。そうなっては他のバイト先に移る事も検討しなくてはならなくなります」


「よ~し、じゃあむしろドカンと時給を上げちゃおう! 二人とも一時間1500円、これでどう?」


 上げ過ぎじゃねえですか? 重労働級の時給になってますけど? 俺が経営状態を心配してしまう程なんですけど?


「ありがとうございます、マスターさん。それでは頑張ってお仕事させていただきます。あら、早速お客様ですね。いらっしゃませ、何名様ですか?」


 ぺこりと頭を下げ、早速新規客さんの接客に入る安藤さん。何のマニュアルも指示も受けずに完璧にこなしていますね……。


 なんでもデキ子ちゃんなのですね。料理以外は。


「和宮君、今日からウェイターのお仕事は安藤さんと変わってもらって、キッチンに入ってくれるかな? ほら、ね?」


 何か濁してますけど。いや、言いたいことは分かりますよ? そりゃあ美少女が接客するのに越したことはありませんからね。特に引き継ぎもいらない様子だし。


 ……ぶっちゃけ俺、居ります? なんか一気に存在価値が薄れたような気がするんですけど?  


 尚、純喫茶に新しく入ったバイトの子が絶世の美少女であるとの噂が瞬く間に広がり、日に日に右肩上がりにお客さんの来店数が増え、喫茶の売り上げが跳ね上がったのはまた別の話である。


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